第32話 テオドール
創立祭の前日。
学院の二つ目の大教室の隣にある、少し小さめの教室にて。
机などが片付けられ、空になった教室で、レイシア達は出し物の準備をしていた。
「おう、終わったぞ!」
そこには、白金色の髪の毛に緑の瞳の男子生徒がいた。
「テオドール。本当に助けてくれて、ありがとうね」
「いやいや、俺は何もしていないよ。企画をどうやって通すのだとか、企画の上位に食い込むのかの戦略などは、俺が加わる前にすでに三人で考えていたじゃないか」
「そうだけど、細かい作業はテオドールがいないと進まなかったわ」
「そうか、じゃあ感謝だけは受け取っておこう!」
ガハハと豪快にテオドールが笑う。
彼の名はテオドール・アシュフォード。アシュフォード公爵家の次男である。
彼が加わり、四人でレイシアは創立祭の準備を進めていた。
「いよいよ、この時が来たね」
アレンが手を動かしながら、呟く。
レイシアはテーブルの上の食器を整える手を止め、アレンの方を見た。
「そうね。色々駆け回ったりしたけど、アレンの伝があって助かったわ」
「助けになったようで良かったよ」
アレンも家具を配置しようと持ち上げていた手を止めて、レイシアを見つめて、にっこりと笑った。
「はい、お二人とも仲が良いのはわかったので、イチャイチャしないでください」
その様子を見たクロエが淡々と指摘する。紅茶の茶葉の確認をする手は、動き続けている。
レイシアとアレンは声を揃えて言った。
「「イチャイチャしていない」」
クロエが呆れた顔をする。
「はいはい、そうですね」
クロエは、アレンともすっかり打ち解けていた。
「本当に仲が良いな! アレンもレイシア嬢も!」
「……テオドールも。あまりからかわないで」
レイシアは顔を赤くして、話を逸らそうとする。
「それにしても、アレンと公爵家の人間が友人なんてね」
「……学院は身分関係なく通えるからね」
「おう、そうだ! それにレイシア嬢と俺はすでに友達じゃないか!」
テオドールが元気よく言う。
「確かにそうね」
レイシアは、話が逸れたことに、にっこりと笑った。
「じゃあ、さっきの話をしようか!」
「テオドール!」
レイシアが軽い悲鳴混じりに言う。
笑い声が教室に満ちた。
いつの間にか準備は終わっていた。
みんなで、中央に集まる。
レイシアが話し始める。
「本当にみんなここまでありがとうね。ここまで来れたのは、みんなのおかげよ。最高の出し物にしましょう」
「おう、頑張ろうぜ!」
「頑張りましょう」
「うん、頑張ろう」
全員で円陣を組む。
準備は万端だった。
♦︎
その夜。
一人の人影が、二つ目の大教室の隣にある、少し小さめの教室に入った。
キョロキョロと辺りを見る。
誰もいないことを確認すると、その人影は机を倒し、食器を踏みつけ、紅茶の茶葉を床に撒き散らした。
そうして会場をめちゃくちゃにすると、その人物は満足そうに頷いて、教室から出ていった。
荒らされた教室だけが、月の光に照らされていた。
♦︎
教室が荒らされた後、しばらくして。
別の影が、教室の横にある準備室から出てきた。
「本当にきた……」
影が小さな声で呟く。
その影は教室が荒らされたのを確認すると、足早に廊下をかけていった。




