第31話 提出
三日後。
「これでお願いします」
レイシアは無事に創立祭の委員に申請書を提出していた。
「おいおい、そんな中身を練れていない申請書でいいのか?」
後ろを振り向くと、柱の影から再びルシアンが現れた。
いやらしい笑みを浮かべている。
レイシアはルシアンを無視して振り返り、そのまま立ち去ろうと歩き出す。
「おい、待てよ!」
ルシアンがレイシアの隣まで駆けてきて、横並びになって歩く。
「いいか、お前らはもうほとんどの茶葉のブランドを学院での提供用に契約することはできないぜ。マリー・ド・フレールも、レピシアも、ティー・オー・ジーも、ラレスナーもどれも無理だ」
無視してレイシアは歩いていく。
「菓子についても同様だ。何をするんだか知らないが、地味な企画で隅っこでやってるのがいい」
レイシアは止まらない。
「……おい、謝るなら今だぞ。今なら俺たちの企画に加えてやる。成功間違いなしだ。うまくいけば王族の目に留まるかもしれない」
レイシアはピタッと止まった。
「お、興味が出たか? 子爵家だもんな。王族の覚えは大事だぞ」
ルシアンが笑みを浮かべる。
(本当に不愉快ね。なんで私はこんな人が好きだったんだろう)
レイシアは鼻を鳴らした。
「私たちは紅茶を出すわ。それからお菓子も。あなたが何をしようと関係ない。真っ向から戦うわ」
「なっ!」
ルシアンが絶句する。
「う、嘘だ! まともな茶葉も菓子も契約できないはずだ。個人用のものを使うのか? それはルール違反だぞ」
創立祭で使う品物は、学院と契約している商会から、企画ごとに個別契約を結んで調達する決まりだった。
学院と未契約の商会でも、先に学院との契約を結べば利用できる。
学院の創立祭で使用された物品という宣伝を、商会がこっそりと行わないようにするためにこのようなルールが制定されていた。
「きちんとルールに則って運営するわ。ランベール侯爵令息様。いえ、ルシアン」
レイシアはルシアンのことをきっと睨みつける。
ルシアンが思わず一歩後ろに下がる。
「盗んだ企画で戦う恥知らずに、私たちは負けないわ」
そう言ってレイシアは前を向いて再び歩き出した。
「おい!! そこまで言うなら賭けようじゃないか」
「嫌です。勝手にやってください」
「逃げるのか?」
足を止め、ルシアンの方を見ると、ニヤニヤとしているのが見えた。
「……何を賭けるのですか?」
「謝罪しろ! 『不手際で騒ぎを大きくしてしまってすみません。謹慎や処分などは全て不当なものであり、賠償します』そう公的に宣言して履行しろ」
「私が勝った場合は?」
ルシアンの息が詰まったのがわかった。
レイシアはため息をつく。
「はあ。何も考えていないのですね。それでは賭けになりません」
そういうとレイシアはまた歩き出した。
「バカにしやがって!! 後悔するなよ!!」
ルシアンが叫んでいるのが聞こえた。
レイシアは無視して歩いていく。心は不思議と軽かった。
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そして創立祭の前日がやってきた。




