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【連載版】「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」  作者: あいあメル
第二部 ルシアン

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第30話 受理

「なぜですか?」


 レイシアは目の前で書類に目を落とす創立祭の委員の男性に詰め寄った。


「……あのですね」


 男性の視線が険しいものになる。


「この企画、本当に自分で考えたのでしょうか?」

「え? どういうことですか?」


 レイシアは思わず口を開く。


「昨日、あなたの企画と非常によく似た企画がちょうど提出され受理されたんですよ。喫茶店で紅茶とのペアリングの案です」


 レイシアは口を閉じた。


「さらに、紅茶の候補やお菓子の候補も似通っている。ほとんどが同じものでした。これはどういうことですか?」

「……わかりません」

「そうですか。何か事情があるのかと思ったのですが、そういうわけではないようですね。仮に事情があったとしても、規則に主目的や提供物・提供形態が似通っている案は受理できないとあります。そのため、大変申し訳ないのですが受理することはできません」


 男性は淡々といった。


 レイシアは思わず拳を握りしめた。


(たった一日の遅れでこんなことになるなんて……どうにかしないと……)


「あの!」

「なんですか?」

「その申請を出した方が誰なのか、教えていただけないでしょうか?」

「規則により、教えることはできません。トラブルになっても困るので」


(似た申請を出した人がどんな申請をしたのかもわからないし、その人に交渉もこれじゃできないわ)


 これ以上糸口が見つからない。

 思わず黙り込んだ、まさにその瞬間。


 少し離れた柱のそばに、ルシアンが立っていることにレイシアは気がついた。

 こちらを見ながらニヤニヤと笑っている。


「レイシア! どうした、困っているのかい?」


 ルシアンが笑ったまま近づいてくる。


「いやあ、偶然通りかかったら何か話しているみたいでね。思わず声をかけてしまったよ」

「ランベール侯爵令息様……あなたには関係ないことです」

「おやおや。喫茶店の申請が拒否されて落ち込んでいるのかと思ったけど、違ったかい?」


(喫茶店の申請……なぜ知っているの?)


 レイシアはハッとした。


「まさか……」

「なんのことだろうな?」


 ルシアンが醜悪な笑みを浮かべる。


「色々と話したいが俺は紅茶のペアリングを決めるので忙しくて、もう行かないといけないんだ。悪いけど、じゃあな」


 レイシアは、思わず唇を噛み締めた。


 ルシアンは振り返って立ち去ろうとする。

 しかしすぐに、ピタッと止まる。

 そしてレイシアの方に首だけ向けた。


「ああ、そうだ。俺にした仕打ちについて謝罪したくなったら、いつでも待ってるからな」


 そう言い残すと、元の方向を向き、ルシアンはその場から去っていった。


「じゃあ、そういうことなので。受け付けることはできません。お帰りいただけますか」


 受付の男性の声が響く。


 レイシアは怒りで目の前が真っ白になった気がした。


 ♦︎


「レイシア! 無事に提出できたかい?」


 レイシアが、以前喫茶店の計画を立てる相談で使った準備室に行くと、アレンとクロエがすでにいた。


「……レイシア?」

「レイシア様?」


 なんとか笑顔を作ろうとした。

 けど、無理だった。


「ごめんなさい……私が昨日提出できなかったせいで、今回の案は申請できなくなってしまったわ」

「ええっ」

「どういうことだい?」


 驚くアレンとクロエ。


「……どうやらルシアンが似たような案を昨日提出したらしいの。そのため受理できないって創立祭の委員に言われてしまったわ」

「そんな……」

「本当にごめんなさい」


 レイシアは頭を下げる。


「いや、レイシアのせいじゃないよ。レイシアは悪くない」

「そうですわ。レイシア様のせいではないです」


 二人から責められないのが、レイシアは辛かった。

 悔しくて、申し訳なくて、そしてルシアンへの怒りで、気がつくと手の甲に涙がこぼれ落ちていた。


 クロエとアレンは黙ってレイシアのことをしばらくそっと見守ってくれた。


 レイシアが落ち着いた頃。


「締め切りまであまり時間もないし、ここから新しい案を考えるのは厳しいかしら……」


 レイシアはつい、弱音を吐く。


「……確かにここから、もう一度案を最初から考えるのは難しいかもしれませんね」


 一瞬の間の後、クロエも暗い顔で同調する。


「……確かにこのままだと難しいね」


 アレンもレイシアを見て、悲しそうな顔をした。


 そんな二人を見たレイシア。


(ダメよ。弱音を吐いていては)


 首を振る。


「ごめんなさい。弱音を吐いてしまったけど、まだなんとかなるわ。締め切りまで三日ある。もう一度考えましょう」


 クロエとアレンが顔を見合わせた。


「よかった。レイシアがすごく落ち込んでいたから、やろうと言えなかったけど、元気が出たみたいで」

「ええ、本当に良かったです」


 レイシアは涙を拭って笑った。


「流石にまだ元気は出ていないわ。けど、このままやられっぱなしは癪じゃない。ここから巻き返しましょう!」


 準備室には夕日が差し込んでいた。

 まだ、日は落ちていなかった。

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