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【連載版】「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」  作者: あいあメル
第二部 ルシアン

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第29話 書類

 レイシア達が喫茶店の企画の話をした次の日。


 食堂の端っこ。温かい陽が当たる二人席。


 レイシアはクロエと一緒に昼食を食べに来ていた。


「レイシア様、これでどうでしょうか?」

「ありがとうね。放課後チェックして、そのまま出しに行くわ」

「承知しました。よろしくお願いします」


 レイシアは書類を受け取ると、クロエと笑い合いながら、食事を始めた。


「本当に楽しみね」

「ええ、本当に。レイシア様、どんな格好で給仕するとか決めました?」

「まだ決めていないけど、やっぱり格好いいのがいいわよね」


 ふと、レイシアは、アレンのことを思った。


(執事姿のアレン……絶対似合うわ)


 レイシアの脳裏には、執事姿で自分に紅茶を入れてくれ、にっこりと笑うアレンが浮かんでいた。


「……レイシア様? どうしたのですか?」

「ごめんなさい、何か話していた?」


 クロエに声をかけられて、慌てて現実に戻る。


「いえ、突然黙ってニヤニヤし始めたので、何を想像していたのかなと」


 クロエがニコニコしながら続ける。


「もしかして、アレン様のことを考えていたのですか?」

「な、な、なんでそう思ったの」


 思わずつっかえながら、レイシアは聞く。


「だってあんなに幸せそうな表情をしていたら、誰だってわかりますよ」


 クロエが苦笑する。


「……うう。そっかあ」


 自分でも赤面しているのが分かった。


(幸せな表情か……私はアレンとどうなりたいのかしら)


 レイシアは自分の感情がわからなかった。


 そんなレイシアを、クロエはニコニコと見つめていた。


 ♦︎


 放課後。


 レイシアは荷物をまとめ、申請書を出しに行こうとしていた。


「レイシア!」

「アレン! どうしたの?」


 そこには、アレンが立っていた。


「ううん、そろそろ提出かと思って! そのまま、企画について話せればいいなって思って」

「あら、ありがとう! じゃあ最後にチェックをして、書類を出しに行くわ」

「僕も手伝うよ!」

「ありがとう」


 書類を手分けしてそれぞれチェックした後、交換して二重にチェックする。

 書類に不備があると、差し戻しになるので、チェックは必須だった。


「……あーここミスがあるね」


 アレンが呟く。


「候補となる紅茶の種類なんだけど、マリー・ド・フレールが正式名称だね。今のままだとフーレルになっている」

「あら、本当ね。気が付かなかったわ」

「他は大丈夫そうだ。いくつかの書類にこのミスを書き入れちゃってるね。瑣末なミスだから不問とされる可能性が高いけど、直すかい?」


 レイシアは考え込んだ。


(万が一、後からミスを咎められたら、再申請が間に合わないかもしれない)


「全部書き直して、それから出しましょう」


 学院では、基本的に誤字の修正跡のある書類は認められない。

 貴族として家督を継いだ後や、王宮とのやり取りに、ミスのある書類は許されない。

 その時のための練習として、修正跡のある書類は認められていなかった。

 だから、簡単に修正というわけにいかなかった。


「じゃあ手分けしてやろうか」

「うん」


 書類を書き直していくアレン。

 書類を真剣に見つめる紫の瞳。

 細いけれど男性らしくゴツゴツした指に、血管の浮き出た手首。


(触ってみたい……)


「……どうしたの、手が止まっているけど。何か気になるところあった?」

「ご、ごめんなさい」


 慌ててレイシアは自分の書類を書き始めた。


 アレンはそれを不思議そうに見ていたが、すぐに自分の書類を書き始めた。


 二人が書類を書き終わったのは、数十分後のことだった。

 失敗が許されないので、二人とも細心の注意を払って丁寧に書いていた。


 二人で書類を交換しあって、再度チェックをする。


「もうこんな時間か……このままじゃ、今日は流石に間に合わなそうだね」

「ええ、そうね。残念だけど、明日提出しましょう」


 すでに夕陽が出ていた。


 二人は書類をまとめ、帰ることにした。


 ♦︎


 翌日。


「この書類は受け取ることができません」


 創立祭の委員が、レイシアに淡々と告げた。


 レイシアは心臓が握られたように感じた。

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