第28話 ゴミ箱
レイシアが創立祭の出し物にクロエを誘った翌日の放課後。
大教室の隣の準備室にて。
「こうやって話すのは初めてですね、クロエさん」
「そうですね。よろしくお願いいたします」
レイシアは、アレンとクロエが挨拶をしあうのをみていた。
準備室には、様々な備品が置かれている。
レイシアは中央の机の側にある椅子に座った。
「ここなら誰にも聞かれないと思ったの。ここに来る人は少ないし、先生くらいだからね」
「確かにそうだね」
アレンがニコニコしながら答える。
「じゃあ、話を始めましょうか。喫茶店をやるからには、もう一人メンバーがいて欲しいけど、申請期限もあることだし、一旦このメンバーである程度進めましょう」
「わかった」
「承知しました」
二人の返事を聞いてレイシアは続ける。
「みんな創立祭でどんな喫茶店をするか考えてきた?」
クロエとアレンが頷く。
「じゃあ、それぞれ案を共有していきましょうか。まずはアレンから聞かせてもらえる?」
「ああ。僕は紅茶の飲み比べがいいかなって思っている」
クロエが紙にメモをとる。
「色々な産地や等級の紅茶を飲み比べたり、もしくは複数のフレーバーを飲み比べるというのがいいかなって」
「なるほど。紅茶好きな方は沢山いらっしゃるから、需要がありそうね」
レイシアは考え込む。
「メリットはやはり、紅茶好きな方には刺さりやすいことよね。それから在庫はあまり嵩張らなさそう。デメリットは紅茶を飲むだけだと少しインパクトが弱いことと、紅茶に興味を持っていない方には刺さらないことね」
「じゃあ次はクロエに聞こうかしら。何を考えてきた?」
クロエがペンを置いて、顔を上げる。
「はい、私は朗読会付きの喫茶店がいいかなと思いました。稀覯本・装飾写本の展示および朗読ができる喫茶店です」
「なるほど、確かに本が好きな私たちに合った案ね」
クロエが頷く。そして、再びメモをとり始めた。
「メリットは読書好きな人には確かに刺さるし、インテリアとしてもとても美しいわよね。デメリットとしては、少し地味だということと、上手く朗読できるようになる必要があることかしら」
「確かにそうですね」
頷くアレンを横目にレイシアは続けた。
「じゃあ、最後に私の案を言うわね。私の案は各地の特産品を出すことよ」
「各領地の特産品かい? 確かにいい案だと思うけど、それだと他の人と被るんじゃないかな」
アレンが冷静に、指摘をする。
「ええ、その通りだと思うわ。だから私の案は、アレンとクロエの案の折衷案よ」
レイシアは軽く息を吸った。
「紅茶だけでなく、各領地の特産品のお菓子を取り寄せて、それと紅茶のペアリングをするの。そして内装は本で。そんな喫茶店はどうかしら?」
「ふうむ。貴族家は多いけど、全ての家の特産品を使うのかい?」
「申し訳ないけど、それは無理ね。なので、まずは輸送・保存・提供が可能なもので候補を出す。それで一旦申請してしまって、その後に、ペアリングを自分たちで検証するというのはどうかしら?」
「なるほど、確かに良さそうだね」
「私も賛成です」
レイシアはにっこりと笑った。
「じゃあ、この方向でいきましょう。それから、他領のお菓子の場合、王都に支店がないことも考えられるので、どうやって菓子屋と交渉するかも考えましょう」
しばらくそうやって話していた時だった。
「あっ」
レイシアはアレンと共に、クロエの方を見た。
「すみません、申請書類に商品、提供形式、仕入れ先、予算などをまとめて書こうとしたのですが、最後の方に書き損じてしまって。もう一度ゼロから書き始めます。この書き損じたものは、処分しておきます」
「ええ、真似されることはないと思うけど、一応お願いね」
申請書類を細かく破るクロエ。
立ち上がると、ゴミ箱に入れる。
「じゃあ、後ほどまとめて書類にしておきます」
「ええ、お願い。書いてもらったら、それを私がチェックして申請しておくわ。さあ、ここから忙しくなるわよ!」
「望む所だ!」
赤い夕日が三人を優しく照らし出していた。
♦︎
三人が立ち去った後。
準備室に入る一人の人影があった。
その人影は、準備室に入るとゴミ箱を漁り出した。
そして、バラバラになった申請書類をみて、ニヤリとした。
(ルシアン様。無事に情報は手に入れられました)
そしてその人物は申請書類を荷物入れに入れると、その場を立ち去った。




