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【連載版】「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」  作者: あいあメル
第二部 ルシアン

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第26話 謝罪

「ランベール侯爵令息様、申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」


 レイシアが断ったことに、アレンは思わず目が丸くなる。


「ランベール侯爵令息様。昔みたいに一緒に過ごして笑えたら本当に良いのでしょうね」

「なら、なんで……!」


 ルシアンが食いかかる。

 それを見たレイシアが悲しそうに笑った。


「あなたは今まで、真剣に私に謝ったことは一度でもありましたか?」


 ルシアンがハッとした。

 しかし、すぐに怒ったような表情になる。


「以前、謝ったじゃないか」


 レイシアはさらに悲しそうな顔をした。


「確かに謝っていただいたことはあります」

「じゃあ!」

「でも、真剣に謝っていただいたことは記憶の限りございません。取ってつけたような謝罪。それを頂いただけです」


 レイシアは笑った。

 その表情に力は入っていない。


 ルシアンがぎりりと歯軋りしたのが見えた。


「……じゃあ謝ろう。本当にすまなかった」


 そう言ってルシアンが神妙な表情で頭を下げた。


 アレンはルシアンが頭を下げたことに驚いた。表情には出さないが。

 レイシアの方をチラリと見る。


 やはり悲しそうな顔をしたままだった。


「ランベール侯爵令息様。謝罪は受け入れます」

「ありがとう。じゃあ……!」


 ルシアンが顔を上げた。先ほどまでの神妙な表情はどこに行ったのやら、晴れ渡るような笑顔になっている。


「けれど、やはりあなたを私たちの創立祭の企画に受け入れることはできません」

「なっ! お前のいう通り、頭まで下げたんだぞ! ふざけるな!」


 ルシアンが目を釣り上げて叫ぶ。

 レイシアの表情は冷たい陶器のように固まっていた。


「謝罪していないと指摘され、流れで行う謝罪。それにどうやったら誠意を感じられるのでしょうか? さらにいうなら、ランベール侯爵令息様以外の悪戯に参加されていた方からの謝罪も受け取っていません。それを許せというのは、すみませんが私には無理です」


 レイシアは頭を下げた。


「申し訳ありませんが、お引き取りください」


 ルシアンの方を見ると、拳を握ったまま顔を真っ赤にしてブルブルと震えていた。


「……後悔するぞ」

「はい。でも自分で選んだ道ですので」


 レイシアは無表情のまま、ルシアンに淡々と告げる。


「……やっと、わかったよ。お前がそういう奴だって」


 ルシアンがレイシアを睨みつける。

 思わずアレンは一歩前に出て、レイシアを庇うように立つ。


 ルシアンと目が合う。


 そこには憎しみの炎が燃えているのが、はっきりとわかった。


「お前も覚えていろ」


 そう言うとルシアンは振り返り、乱暴に教室のドアを開け出て行った。


(やっと行った)


 そう思ってアレンがレイシアの方を見ると、レイシアが近くにあった机にもたれかかっていた。


「レイシア、大丈夫?」


 レイシアに駆け寄るアレン。

 まだルシアンがいるかもしれないので、少し小さい声で聞く。


「ええ。でも少し気が抜けてしまって」


 レイシアの手が震えているのがわかった。

 思わず抱きしめようと体が動く。


「……やっぱり好きだったからなのかしらね。なぜか、少し苦しいわ」


 アレンの体がぴたりとまる。


(好きだった)


 その言葉が頭の中で繰り返し響く。


 そんなアレンの様子に気が付かなかったのか、レイシアは続ける。


「でも、アレンとやるって決めたから。だから断ったの。絶対に成功させましょうね」

「……ああ、成功させよう」

「心配をかけてごめんなさいね。もう大丈夫。遅くなっちゃったしそろそろ帰らなきゃ! じゃあ、人を集められたら声をまたかけるわね」


 そう言ってレイシアは立ち上がり、教室から出て行こうとする。


「……レイシア!」

「何?」


 思わずアレンは声をかけていた。

 なぜかそうしないといけないと思ったから。

 それに振り向くレイシア。


「……いや、またね」

「うん。またね!」


 そう言ってレイシアはにっこりと笑った。


 そして振り向くと、歩いて行った。


 アレンはその後ろ姿が消えた後も、ずっと教室の扉を見ていた。


「……時間がないんだ。このままじゃだめだ」


 その拳は握りしめられていた。

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