第24話 ルシアンの怒り
ルシアン・ランベールは学院の食堂で、怒りながら昼食を食べていた。
運ばれてきたものを乱暴に口に運ぶ。
(おかしい……なぜ俺がこんな目にあっているんだ)
そんなルシアンに話しかける学生がいた。
「あの、席をもうちょっと寄っていただくことって可能で……」
ルシアンはその学生の方をチラリと見る。雰囲気から察するに、高貴な家の出ではないことが、ルシアンにはわかった。どうせ言い返すことはできないだろう。
「ああ? うるせえな。お前、身分は?」
「学院では身分を傘にすることはダメだと……」
「聞いているんだから、黙って答えろよ!」
俯く学生。
「ほら、さっさと答えろよ?」
睨みつけると、ルシアンに聞いてきた学生はさーっと逃げるように去っていった。
「ふん」
「ルシアン様、流石の威厳ですね」
「おう。やっぱり俺はすげえ。だろ? セドリック」
ルシアンは目の前の友人、伯爵家次男のセドリック・ロズウェルに向かって問いかけた。
濃い茶色の髪、灰緑色の瞳。だらしなく着崩した制服からは、傲慢な印象を受ける。
「本当にムカつくぜ。ただの軽い冗談だったのに。そのせいで俺たちはこのざまだ」
「そうですね。ルシアン様。本当にあの女のせいで、散々な目に遭いました」
セドリックが媚びるように同調する。
ルシアンはその答えに機嫌を良くする。
「本当にな。しかもあいつ、俺が仲直りの機会を与えてやったのに、断りやがった。子爵家の娘のくせに」
唇をかむルシアン。
「どうしますか? やっちゃいますか?」
ルシアンは少し考え込む。
そして首を横に振った。
「いいや、それはダメだ。学院に戻ることを許されなかった奴もいる。下手にやってバレたら、俺たちは終わりだ」
「ならどうします……?」
セドリックが顔を顰めながら聞く。どうやら納得できていないらしい。
その時、大きな笑い声が食堂に響き渡った。
セドリックとルシアンがその方向を見る。
そこにいたのは、一緒に食事をしているアレンとレイシアだった。
セドリックが拳を握りしめ、ルシアンは眉間に皺を寄せる。
「……俺たちをこんな目に遭わせて楽しそうにしやがって」
「セドリック、今はやめておけ」
そう言ってルシアンはパンの残りを口に放り込んだ。
「……俺に考えがある」
そう言ってルシアンはニヤリとした。
セドリックが尊敬の眼差しを向ける。
ルシアンはレイシアの方を睨みつけた。
「お前だけが幸せになる。……それは許さない」
そんなルシアンの呟きは、レイシアには聞こえなかった。
♦︎
放課後。レイシアは空き教室でアレンと待ち合わせをしていた。
「さて、じゃあ何をするか決めましょうか」
「わかった。さっき約束した通り、いくつか案を考えてきたんだ」
黒板にアレンが案を書き出していく。
「僕のおすすめは、喫茶店かな。少人数で回せるし、何よりレイシアって食べるの好きだよね?」
「……そうね。でも、喫茶店はいいわね。素敵だわ」
レイシアは食いしん坊と言われた気がして少し複雑な気持ちになったと同時に、好きなものを覚えていてくれて、嬉しくなった。
「その場合、四人くらいは必要かな」
アレンが黒板に丸をつける。
必要事項を書き込んでいく。
「場所の確保、出す品物の選定、当日の動き方を決めること。それから何より、助けてくれる人の確保」
「それに、申請書類を片付けるのも必要だわ」
アレンが少し考え込んだ。
「レイシア、一緒にやるのに誰かいい人はいる?」
レイシアは少し考え込んだ。
「……一人なら、いるわ」
レイシアの脳裏にクロエが浮かんだ。
「じゃあ、とりあえずその人に聞いてみてくれるかい?」
「わかったわ」
レイシアは頷いた。
アレンがにっこりと笑う。
「じゃあ、僕の方でももう一人考えてみるよ、レイシアとの相性も含めて」
「わかったわ。お願いね」
その時、一人の男が教室に入ってきた。
「その話、少し聞かせてくれないかい」
そこにはルシアンがいた。




