第23話 創立祭
「話がある」
アレンがそう告げた時、レイシアは学院の食堂に行こうと席を立ったところだった。
「……そんな真剣な顔をされると怖いのだけど」
昨日クロエに話したことを思い出して、レイシアの胸の鼓動が大きくなる。
(何意識しているの……私の馬鹿!)
アレンが不思議そうな顔で自分のことを見ているのがわかる。
「大丈夫、怖くないよ……多分」
そう言ってアレンはにっこりと笑った。
その笑顔を見ると、なぜか不安だけでなく、心臓の鼓動の音がひと回り大きくなった。
黙っている自分のことをアレンは笑いながら待っている。
「じゃあ行こうか」
アレンが手招きをした。
レイシアは高鳴る鼓動がアレンにバレないようにと願いながら、アレンの方に歩み寄った。
♦︎
アレンと一緒に来たのは食堂だった。
昔だったら、ルシアンと一緒に食べていた。
最近だったら、よくクロエと。
アレンが椅子を引く。
「どうぞ」
「ありがとう」
そう言って座ると、アレンはにっこりと笑った。
アレンも続いて座る。
二人、ナプキンを膝にかけ食事を待つ。
学院の食堂では、専門の給仕が食事を運んでくれる。
内容は日替わりの簡単なコースだ。
レイシアは家の食事よりも豪華な昼食が毎日楽しみだった。
「やけに楽しそうだね」
「だってご飯、本当に美味しいから。アレンは違うの?」
「……僕は普通かな」
アレンは苦笑いしながら答える。
普通の男爵家の食事よりは贅沢なはずなのだが。
(アレンは舌が肥えているのね)
レイシアはそう納得した。
そんなレイシアを横目に、アレンが口をひらく。
「実は学院の創立祭のことなんだ」
創立祭。
それは秋の始まりに行われる学院のお祭りである。
生徒たちが出し物を考えて発表する場で、グループを組んで出し物を出すのが、基本だった。
「創立祭がどうしたの?」
アレンが少し俯く。
何か考えているようだ。
しばらくそうした後、アレンは顔を上げた。
「……僕と出し物を出して欲しいんだ」
「……いいけど、二人で? 何を出すの?」
レイシアは拍子抜けした。深刻そうな顔をしていたから、もっと深刻な話かと思っていたのだ。
「……ごめん、実はまだ考えていない。けど誘っとこうと思って。せっかくのお祭りだし、二人で何かしたいんだ」
そう言ってアレンは少し影のある表情をした後、それを振り払うように笑った。
(そっか。じゃない、二人で何かしたいから、って何よ。勘違いさせるつもり!?)
アレンの暗い表情が一瞬気になったが、後半のセリフにすぐに意識が持っていかれる。
心臓の音が大きい。
レイシアは、動揺を隠そうと俯いた。
「……ダメかな?」
顔を上げると、アレンが困ったような顔をしていた。
「……ダメじゃないけど、何するか次第よね。まだ申請の締切まで時間あるし、話してから決めましょう」
「わかった!」
アレンの顔がぱあっと明るくなる。
(こんな顔されたら断れないじゃない)
アレンとは出し物をやることになりそうだ。
でも全然嫌な気持ちはしなかった。
「失礼します。前菜のサラダです」
話していると、給仕の方がやってきた。
「「ありがとうございます」」
アレンと声が重なった。思わず、目を見合わせる。
アレンが笑う。そして、レイシアも釣られて笑った。
「じゃあ食べようか。詳しい話は放課後でいいかな?」
「ええ、いいわ」
♦︎
ルシアンは食堂で楽しそうに会話しているレイシアとアレンを見て、つぶやいた。
「……それは許さない」




