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【連載版】「俺の告白を信じたお前の顔、最高だったよ」  作者: あいあメル
第一部 ヴィオレッタ

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16/28

第16話 手

 レイシアが庭園に着くと、アレンが駆け寄ってきた。


「来てくれたんだね。ありがとう」


 アレンが目の前に立ってにっこりとしていた。

 レイシアは、ふと泣きそうになった。


「……アレン。本当にありがとう」


 アレンは目を丸くした。


「ううん、来てくれてよかった」


 そして元の穏やかな笑みを浮かべた。


「座ろうか」


 そう言って、アレンはハンカチを側にあるベンチに敷いた。


「どうぞ」

「……ありがとう」


 手で座るように示されたハンカチの上に座るレイシア。

 それを見て、アレンが隣に座る。


 黙り込む二人。

 夕陽が二人を照らしていた。


 沈黙を破ったのは、レイシアだった。


「あのね。本当にごめんなさい」


 レイシアは頭を下げた。


「どこから話せばいいのか、自分でもまだわからないの。だけど、聞いてくれたら嬉しいわ」


 アレンは優しい笑みを浮かべ、黙って頷いた。

 それにホッとしたレイシアは、俯きながら話し出した。


「……正直、私今怖いの。ルシアンに傷つけられたと思ったら、友達になれたと思った子に裏切られた。他の人にも裏切られるんじゃないかって」


 アレンの方を、一瞬ちらりと見る。

 真剣な表情をして聞いてくれている。


「だからごめんなさい。アレンのことを今、信じることが怖いの」


 アレンが息を呑むのがわかった。


 受け入れてもらえないかしら。

 自分の本音を曝け出すのがこんなにも怖いなんて。


 レイシアは手をぎゅっと握りしめた。

 白く細い指が、さらに白くなった。


「レイシア」


 アレンの声に、レイシアはパッと顔を上げた。


 そしてアレンの顔を見る。

 アレンの瞳が見える。

 その透き通るような紫色の瞳で、何を考えているのだろう。


 胸の鼓動が強くなる。全身が血管になったように、鼓動を感じる。


 アレンが口を開いた。


「正直に言うね。信じてもらえないのは、少し悲しい」


 そう言って、アレンは力無く笑った。

 レイシアは手に込めていた力をさらに強くした。


「でも、それで当然だと思っている。だから、正直に言ってくれてありがとう」


 そう言ってアレンはにっこりと笑った。


 拒絶されるのが怖い。アレンから拒絶されるくらいなら……


「……私と縁を切りたかったら切っても構わないわ」


 アレンの表情が消えた。

 心臓が再びうるさくなった。


「レイシア」

「……はい」


 アレンは口を開いて、閉じた。そして再び開いた。


「お願いだ。二度とそんなことを言わないでほしい。僕は君のそばを離れない。絶対に」


 そう言って真剣な目で見つめてくる。


「……私はダメな女よ」

「そんなことない」

「……女としての魅力もないし」

「レイシア」

「……人の不幸を笑う最低な人間だし」

「レイシア!」


 アレンが少し大きな声を出す。


「レイシア、君は素敵だ。お願いだ、そんな風に自分自身を傷つけるようなことは言わないで」


 アレンが泣きそうな顔をしている。


「……ごめんなさい」


 アレンが首を振る。


「いいんだ。今までずっと不安だったよね。話してくれて、本当にありがとうね」


 そう言ってアレンは優しく笑った。


 温かい。


 気がつくと、アレンが自分の手を握りしめてくれていた。


 なぜか、肩が震える。

 頬を雫が伝って、手の甲に落ちた。


 アレンは何も言わなかった。


 ただ、黙って背中を撫でてくれた。


 ♦︎


 日はすっかり沈み、辺りは暗くなっていた。


 学院の入り口でレイシアはアレンと別れることにした。


「ありがとうね」

「ううん、こちらこそありがとう」


 そう言ってアレンはにっこりと笑った。

 レイシアもつられて笑顔になる。


「じゃあね」

「うん、また明日」


 また明日。何気ないたった一言だ。

 けれど、今のレイシアにとっては、元気の出る魔法の言葉だった。


 ♦︎


 アレンは帰っていくレイシアに手を振っていた。


 レイシアが見えなくなる。


 気温が一段と低くなった気がした。


「アレンのことを今、信じることが怖いの」


 レイシアの言葉が蘇った。

 心臓を握られたような痛みが走る。


 アレンは首を振った。


「僕は思ったよりも、欲張りなのかもしれない」


 春の夜風が優しく吹いていた。


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