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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
四章

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第95話 骨の髄まで愛して欲しい

「これはどういう状況なのか……」


 エリスさんが気絶したのはわかる。いきなり目の前にガイコツが出て来たら、びっくらこいて気絶のひとつもしてしまうだろう。


 しかしだ、ガイコツ。お前はどうなん?


 つうかガイコツが動くとか魔物だろう。


 いつ襲って来ても良いように、警戒する。戦闘になった場合、素手での戦いとなる。俺、素手での戦いは苦手なんだよな。


「お待ちください」


 いつ襲って来ても良いように構えていると、どこからともなく女性の声が聞こえてくる。これがまたアニメ声で耳に心地良い。


「わたくしは悪いガイコツではございません」


 アニメ声を放ちながら起き上がるガイコツ。


「いや、お前の声かい」


 ついツッコミを入れてしまうのを許して欲しい。正直、俺も今の状況が怖い。こうやってツッコミを入れ、なんとか恐怖を緩和させているんだ。


「申し訳ございません。久々の来客で驚いてしまい。お客様に失礼な態度を取ってしまいました」


「あ、ああ。いえ……」


 なんか礼儀正しいガイコツだな。本当に悪いガイコツではなさそうだ。


「申し遅れました。わたくしの名は、ホリー・パロ・ディエゴ・ホセ・フラン・ネ・パラ・ホア・ネポ・リーア・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・サンディ・トリニダ・イ・コメットと申します」


「はい?」


 どこの有名な画家カナ?


「あはは。わたくしの名を聞くと皆様同じような反応をします」


「なんかすみません」


「良いのですよ。長いので愛称で呼んで頂けると幸いです」


「愛称?」


「はい。わたくしのことはホネコと呼んで頂ければと思います」


「それはネタなのか、マジなのか」


「マジなやつです」


「じゃあ、まぁ、わかりやすいからそう呼ぶことにするよ」


「ありがとうございます♪ そんな素直で少年のような心をお持ちのあなた様のお名前を伺ってもよろしいですか?」


「リオン・ヘイヴンです」


「リオンさんですね。そちらの伸びているお方は?」


「エリスさんですね」


「リオンさんにエリスさん」


 噛みしめるように俺達の名を呼ぶ。


「きゃああああああ!」


 唐突にホネコが悲鳴を上げた。先程とは違い、高く女性らしい悲鳴だ。


「今度はなんだ!?」


「リオンさんのエッチ!!」


 言いながらホネコは身体を隠すようなポージングを取る。


「わかります。わかりますよ。リオンさんの年頃になると女の子の裸に興味があるのはわかりますが、あんまり見ないで……恥ずかしいです……」


「女の子の裸に興味はあるけど、極限までの裸には興奮しないタイプだわ」


 ♢


「申し訳ございません。久しぶりに起きたのでお風呂に入っていました。そのため、裸だったのをすっかり忘れておりました」


 ガイコツも風呂に入るんだなぁ。つうか、こんなダンジョンに風呂なんてあるのだろうか。


 まぁ、そこんところのツッコミは一旦置いておき、彼女は先程鬼が立っていた奥の扉へと案内してくれる。


 そこはダンジョンとは思えないほど綺麗な部屋。そのベッドにエリスさんを寝かしてくれる。


「それにしてもエリスさんは昔のわたくしにそっくりです」


「お前のその思想は、おばちゃんが若い子にいう常套句だろ」


「そんなことないのにぃ」


 そんなことをぬかしながらホネコは巫女さんが着ていそうな服に着替えていた、


 ガイコツの巫女姿は、おどろおどろしいな。


「それで、リオンさんはどうしてこんなところにやって来たのですか?」


 ホネコから真っ当な質問が飛んで来る。


 さっきまでのふざけたテンションとは違い、真剣に尋ねてきてくれた。


「正直、俺もなにがなんだか──」


 俺自身もなにもわからない状況だが、起こったことをありのままに話す。


 アルブレヒト領にある未開拓のダンジョンを大勢で攻略していたこと。


 ダンジョンの奥に封印されていた場所があり、無理矢理に中に入ると巨大な鬼がいたこと。


 その鬼と対峙したあと、俺とエリスさんだけが残ったこと。


 ホネコは俺の拙い説明も、うんうんと相槌を打ちながら聞いてくれた。


「──ってな、感じかな」


「それは大変でしたね。しかし、ここがダンジョン……というのに引っ掛かりがありますね」


「ここってダンジョンじゃないの?」


「まぁ見ようによってはそう捉えても不思議ではありませんけどね。ここは贄の祭壇。神様に生贄を捧げる場所です」


「!?」


 なんとも時代錯誤な言葉が飛んできて驚いてしまう。


 前世ではもちろん、今暮らしている異世界ですら、生贄なんて風習はない。


「わたくしはアルブレヒトの巫女。アルブレヒトに朝が来ないのが神様の怒りだと考え、巫女であるわたくしが神様の怒りを鎮めるために生贄に選ばれました。もしかすると、リオンさんとエリスさんはわたくしを救い出してくださるために来てくれたのかと思いましたが、それだったら骨折り損のくたびれ儲け。わたくし既に骨になってしまいました」


 冗談っぽく言っているが、正直笑えない。


「そういや、さっき、久しぶりに起きてお風呂に入っていたって言ってたな」


「寝起きの風呂は骨に染みましたねぇ」


「ちょくちょく骨ジョーク入れるのやめない?」


「骨が折れます?」


「反応に困るんだよっ」


 こいつ骨なのに陽気が過ぎるな。どんなテンションで生きてんだよ。いや、死んでるのか。ややこしいな、こいつ。


「つまりだ。俺達が来たと同時にホネコも目覚めたってことで良いのか?」


「そうだと思いますね」


「俺達がここに来たのと同時にホネコが目覚めた。なにか関係性を感じるけど、助けるためなら手遅れ……」


「もしかしたら、わたくしが成仏したいから手伝って、と無意識にリオンさん達を呼んでしまったのでしょうかね」


「成仏のためぇ?」


 なんだか見当違いなことを言っている気がするな。


「まぁまぁ、考えてもわからないではないですか。ここは一つ、骨を成仏させてくださいな」


「でも、成仏ったって、どうすりゃ良いんだよ?」


「そうですねぇ」


 思い悩むように言ってのけるホネコ。


「あ、そうです」


 思い出したかのような声を上げる。


「わたくし、お嫁さんに強い憧れがあったのです」


「女の子の夢ランキングにちょくちょく出てくるお嫁さんね」


「もしかしたら、誰かのお嫁さんになれば成仏できるかもしれません」


「誰かのお嫁さん?」


 ジーっと俺を見つめてくる。


「おいおい。まさか……」


「てへ」


「骨と結婚とか冗談じゃねぇぞ」


「ままま、本当の結婚じゃございません。所詮、ママゴトですので少しお付き合いくださいな」


 言いながら部屋のタンスよりなにかの紙を取り出した。


「軽くここにサインを」


「ガチの婚姻届けを出すママゴトがあるかよ」


「ちっ。バレたか」


 こいつ、骨のくせして結婚詐欺しようとしてきたんだけど。


「リオンさーん。お願いしますー。少しだけお付き合いくださいなー」


「いや、思いっきり詐欺ろうとしたよね?」


「てへ♪」


「おつかれっしたー」


 スタコラサッサっと部屋を出て行く。


 ホネと結婚なんてごめん葬る。


「待ってくださいまし!! リオンさーん!!」


「げっ」


 巫女姿のホネが全力で追いかけてくるんだけども。


 怖い、怖い、怖い。


 俺は全力でダンジョンの出口目掛けて走り出した。


「来んな、ぼけえええ!!」


「逃げると追いかけたくなる乙女心なのです!!」


「心なんて見えないぞ!!」


「骨に染みてるんです!!」


 上手いこと言いやがって、あの骨。


 あああ!! アルバートに追放されてから鬼ごっこばっかだな、ぼけっ!!


 文句を垂れながらも、騎士一族の超ダッシュで引き離して行く。


 もうすぐ出口だっ。


 ガンッ!!


「あぶしっ!?」


 見えない壁みたいなのに全力で突っ込んでしまったらしい。思いっきりぶつかった衝撃で俺の意識は朦朧とする。


「捕まえましたよ、マイダーリン♡」


 俺は骨に捕まってしまった。


 人類初の骨婿の爆誕である。


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― 新着の感想 ―
さすがに骨はメイドにしようがないだろうなあw 骨が喋る神秘よ
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