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有名侯爵騎士一族に転生したので実力を隠して親のスネかじって生きていこうとしたら魔法学園へ追放されちゃった  作者: すずと
四章

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第92話 月夜の下でキザな言葉をきみへ

 俺とフーラのダンスを皮切りに、ダンスパーティのMVPを狙う奴等が本格的に動き出した。そこら辺で男女達が踊っている光景。いや、まぁ、貴族の社交界なら不思議な光景でもなんでもないが、畳の上で踊っているから違和感がある。一応、着物風のドレスだから会場に合っているのかね。


「ふっ」


 唐突に耳元に吐息を吹きかけられた。


「ふゅわっ……」


 咄嗟に耳元を押さえて反応すると、「にゃはは」なんて愉快な声が聞こえてきた、


「なんだ、ウルティムか」


「なんだとはなんだ。耳元に勇者の吐息を吹きかけられたのだから、ありがとうございますだろうがぁ」


「ありがとうございます」


「耳元に息を吹きかけられて礼を言うとか、変態?」


「あのなぁ」


「にゃはは。ごみんごみん」


 陽気に笑いながら謝ってくるから、謝っている感は皆無だ。


「さっきのフーラとのダンス、お見事だね。あれも転生者が成せるチートってやつ?」


「あれは、まぁ──」


 前世の時に罰ゲームでガチムチと踊った記憶が蘇りゲンナリしてしまう。


「俺の口からはちょっと」


「にゃはは。マスターの過去の傷をえぐってしまったかな」


 話題を逸らすようにウルティムが廻縁の方に視線をやる。


「フーラとのダンスが見事だったから、双子の妹の方が拗ねちゃってバルコニーに行っちゃったよ」


 バルコニーではないが、まぁいちいち訂正しなくても良いだろう。


「怒ってた?」


「顔には出してないけど、雰囲気で拗ねてるのは察したね」


「そっか」


 ならフォローに回りますか。


 廻縁の方へ足を向けるとウルティムが、「ちょい待ち」と呼び止める。


「ヴィエルジュと話すなら、これ、褒めてあげなよ」


 言いながら着物ドレスをパタパタさせている。


「なんで? 全員配布の借り物だろうに」


「いつの時代の男も女心がわかってないねぇ。好きな人にならなにを褒められても嬉しいんだよ。逆に無反応なのが一番だめぇ」


「どの世界でも女心ってのは難しいもんなんだなぁ」


 ありがとよ。とウルティムに伝えてヴィエルジュの方へ行こうとした足を止めた。


「ウルティム。その着物ドレス似合ってるぞ」


「にゃ!?」


 瞬間、顔が真っ赤になる。


「へぇ。やっぱり効果抜群なんだな」


「……さっさといけぇ!! バカマスター!!」


 思いっきり背中を殴られてしまった。



 廻縁に出ると、高欄に手を置いて月を眺めるプラチナの髪の美少女の姿があった。一つの芸術作品でも見ているかのように見惚れてしまっていると、ふと、こちらを振り返って来る。


「あ……ご主人様」


 現実離れした光景から聞き慣れた声を聞き、どこか安堵しながらも彼女の隣に並ぶ。


「着物ドレス、似合ってるな」


 先制攻撃を喰らわしてやるが、ヴィエルジュはぷいっと顔を逸らしてしまった。


「そう思っているのにお姉ちゃんとだけ踊ったんだ」


 おいおいウルティム。話と違うぞ。これ、お前が言われたかっただけでは?


「あれは阿呆のフーラが作った流れで仕方ないだろ」


「ふぅん。じゃあ、私も阿呆になればご主人様と踊れたんですねぇ」


 ジトーっと見られて、うっ、となってしまう。


「や、やや、正直、拗ねてんのはこっちだかんな。お前ら他の男にデレデレしちゃってさ」


「え……?」


 ヴィエルジュはジト目をやめて、ジーッとこちらを見てくる。


「なんだよ」


「嫉妬、してくれたの?」


「嫉妬っつうか……なつうか……」


「なんつうか?」


「……嫉妬だよ!!」


 上手い言い訳が思いつかず、勢いで誤魔化しながら正直に言ってやる。


「そうですか。嫉妬ですか」


 そっか、そっか。なんて笑いながら頷いてやがる。


「なんだよ。なにが言いたいよ」


「んー? なんだと思います?」


「わかんねぇよ」


 ガシガシと頭をかいていると、ヴィエルジュに手を握られる。


「嬉しいから、だよ」


「へ……」


 唐突に手を繋いでくる仕草と、恥じらいの混ざったその言葉にドキっとしてしまう。


「リオンくんが私に嫉妬してくれるなんて今までなかったから嬉しいんだよ」


 今までの、恥じらいがなく好意をむき出しにして来た時とは違い、恥じらいながらも好意を出してくるもんだから、なんだかこそばゆい気持ちになる。


「……誘ってくれないの?」


 手を繋いだまま首を傾げられてしまう。主語はない。けど、なにを? と聞き返すほど俺も鈍感じゃない。


「俺と踊ってくれませんか?」


「はい」


 返事を聞いてから、彼女の背に手を添える。


 見慣れたプラチナの髪の女の子が、顔を真っ赤に染めて近くに見える。


「ち、近い、ですね」


「以前までのお前ならそんな反応しなかったのに」


「前の方が良かった?」


「んにゃ。今の方が、なんだかイキイキしてる気がする」


「うん。私も、前の自分より、今の自分の方が好きかもです」


 前向きな発言と共に、月明かりの下、ヴィエルジュとダンスを楽しんだ。



『MVPは──ウルガ・ミレイネペア!!』


 中の方では、ダンスパーティのMVPが発表されたみたい。まさかのオタクパイセンとギャルパイセンが選ばれていた。


『くぅぅやしぃぃぃですわぁぁぁ!!』


 縦ドリルパイセンの断末魔の叫びがこちらまで聞こえて来て苦笑いが出ちまう。


「下手くそな私はMVPに選出されるどころか、スタートラインにも立っていなかったですもんね」


 ぽつりとこぼすヴィエルジュに、「何言ってんだよ、ばか」と言葉が出ちまう。


「下手くそとかMVPとかどうでも良い。ヴィエルジュと月下の下でのダンスをしただけでMVPだよ」


「……ぷっ」


 ちょっと決めセリフを吹き出されちゃったんだが。


「ご主人様にキザなセリフは似合いませんよ」


「悪かったな。所詮、三枚目だよ」


「でも、ご主人様の言う通りです」


 ギュッと手を握られる。


「私は今日という日を忘れません。リオンくんも忘れないでね」


 そう言い残すと、パッと手を離してスタコラと中へと入って行った。


「──ヴィエルジュのやつ……変わったな」


 さっきまで繋いでいた手の温もりが残っている。いや、熱い。これは俺のドキドキ、か。

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― 新着の感想 ―
畳のうえで踊るのはシュールw シューズでなく足袋で踊ると、ターンとか難しそうだ
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