第89話 パーティ編成
女王陛下への挨拶が済み、次は三校合同のパーティ編成へと移る。
どんな組み方をするのか。くじかあみだか。なんて思っていたら、そこは三校の学園長先生達が事前にディベートして決めていたらしい。お祭り行事だけど、ダンジョンという危険な場所に行くもんだから、そこは真剣に話し合って決めてくれたみたい。
パーティメンバーが発表されたもんだから、挨拶に出向くために広い部屋をみんながうろうろしている。なんか婚活パーティ会場みたいだな。
俺のパーティはアルブレヒト回復学園二年のエリス・ウィンガードさんって人と──。
「リオン」
パーティメンバーを探していると、聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
振り返ると、ボブカットのブロンドヘアでドレス風の鎧を身に纏った女性が立っていた。
「ルべリア王女。同じパーティですね」
そう。ルベリア王女と同じパーティに選ばれたのだ。これは心強い。
「ああ。よろしくな。それにしても、あなたも代表に選ばれて──ん? 魔法、学園の代表?」
「はは……自分が一番わかっていますよ。代表の決め方が特殊だったので」
「どんな決め方だったんだ?」
「杖を光らせたら代表入りみたいな感じです」
「ほぅ。なかなか面白そうではないか」
「ステラシオン騎士学園はどんな決め方をしたんです?」
「バトルロワイヤルだ」
「うわぁ。予想通り過ぎて辛い」
「その上位一〇名が代表なんだが、聞いて驚け、あたしはなんと一位だったのだ。凄いだろ」
子供が自慢するみたいに胸を張るルべリア王女のリアクションに困っていると、頬を膨らませて怒ってしまう。
「おい。無視するなよ」
「いや、すみません。ルべリア王女が一位なんて当たり前過ぎて反応できませんでした」
「え……」
「ルべリア王女が強いのは身を持って知っていますからね。でもすぐに反応できなくてすみません。一位通過って凄いことですね。おめでとうございます。そんな人が同じパーティで心強い」
「や、やや……その、リオンは急に褒めてくるから困る」
照れて赤くなっているルべリア王女が、チラチラとこちらを見てくる。
「リオン。この後のダンスパーティだが──」
「おい、誰が一位だって? お?」
ルべリア王女の言葉が聞き覚えのあるガラの悪い声にかき消される。
「調子乗ってんじゃねぇぞルべリア。ああ?」
「ライオ……あなたも侯爵家の人間なのですから言葉使いに気を使ってはどうだ?」
「うるせぇよ。関係ねぇだろ」
うわぁ。ライオ兄さんもいるじゃねぇか。そりゃバトルロワイヤルで決めるってなったらいるわな。面倒になる前にさっさと退散するか。抜き足差し足忍び足。
「大体よぉ。たまたまおれに勝ったからって調子乗ってんじゃねぇぞ」
「いや、ちゃんと負けたんかよっ!!」
「あん?」
あ、やばっ。ついツッコミを入れてしまった。
「リオぉン。お前がなんでこんなところにいる? ああ?」
「いやー、あははー、魔法学園の代表なので」
「魔法学園の代表ぉ? なんだぁ? お前の最高の剣の腕をお披露目して、魔法学園の奴等を全員しばき回したってか? きゃっはっはっ!!」
この褒めているのかなんなのかわかんない言い方。困るぜ。
「さて、どうですかねライオ兄さん。俺も魔法学園に追放されて数カ月が経過しました」
言いながら杖をライオ兄さんの方へむける。
「なんの真似だ」
「いつまでも俺が魔法を使えないと思っているライオ兄さんへ」
「てめっ、まさか魔法を──!?」
「なんとかなんとか、なんたーら」
「くっ、おおおおおお!?」
「ライオ兄さん大正解。魔法なんて使えませぇん」
「なっ!? てめっ!! はめやがったな!! あったまでっかちだなっ!! オレの弟っ!!」
「誰が頭でっかちだっ!!」
「褒めてんだよ!!」
「どこがだよっ!!」
なんなの、この変なツンデレみたいな奴。
「ライオ。リオン。あまり騒いではだめですよ」
俺達兄弟が騒いでいるところに、ステラシオン騎士学園の学園長、リグナ・ヘイヴンがやって来る。この構図は母親に叱られている兄弟ってことでかなりきつい。
「ちっ……母親が先公とかまじでだりぃ」
思春期爆発中のライオ兄さんは、母上が来ると思春期爆発の言葉を放つ。まさに思春期。
「ん? なんて言ったライオ」
静かな殺気を感じ、ライオ兄さんは顔を青くして姿勢を正す。
「みんなのところに戻るんだぜっ!!」
姿勢を正しくしても言葉使いがめちゃくちゃなライオ兄さんは焦ってパーティメンバーのところへ戻って行った。
「流石は母君。ライオを止められるのはリグナ殿しかおらぬな」
「申し訳ございませんルべリア様。あの子、昔っから言葉使いがなってなくて」
「良い。ライオとは学友だ。学友とは対等な関係だろ」
「お心遣い感謝いたみます」
ルべリア王女が俺と母上を見比べる。
「リオン。先にエリス・ウィンガードに挨拶に行ってくる。あとで来いよ」
親子水入らずに自分がいるのは場違いとでも思ったのか、ルべリア王女が去ってしまう。
「じゃあ、俺もそろそろと」
でも、それはいらぬお節介。
母上と一緒なのは嫌じゃないけど、嫌な予感がするから退散したい。
「なに言ってんのよ。あんたもライオみたいに母親が来て恥ずかしいとか思春期爆発させてるの?」
「ライオ兄さんの場合、もうすぐ終わらないといけない年なのに現役だよね」
「リーフとリオンの思春期が全部あの子に行っちゃったのかしら」
それはあり得る。俺とリーフ兄さんは思春期爆発させたことがない。レーヴェは女の子だから、違う方面の思春期だろうし。
「思春期爆発させてないなら、せっかく親子がこんなところで会ったんだし、語り合いましょうよ」
「なんで母上と青春しないといけないんだよ。つうか、俺は母上と一緒が嫌とかそうじゃなく──」
「リオン・ヘイヴン」
ほら来たよ。嫌な予感してたよ。変な年増の美魔女がやって来たよ。
「なんでリグナと共にいる?」
「母親だからだよ」
「それはそう」
速攻論破しちゃった。この人なにしに来たんだよ。
「シュティア。この合同ダンジョンを良い物にしましょうね」
なんで母上はこいつがやばい奴ってわからずに普通に絡んでいるんだよ。
「あ、ああ」
「でも、MVPはウチの生徒かしらね。今年は凄く良い子が揃っている」
「ふんっ。笑わせる。ウチだって──」
学園長先生が俺を見た瞬間、膝から崩れ落ちた。
「魔法が使えんポンコツがいる」
「おいクソババぁ。目の前に本人と保護者がいる前で良く言えたな。時代が時代なら死んでるぞ」
「で、でも、レオンの息子は強いもん。レオンの息子、つよつよだもん」
「やめてくれ。母上の前で幼児化ババァは共感性羞恥で俺が死ぬ」
「こっちにはライオもルべリア王女もいるからね。強いわよ、あの二人は」
母上は慣れているのか、学園長先生の幼児化を一旦無視していた。
でも──。
「それから、流石にその年でその感じは同世代として共感性羞恥で死ねるから卒業してね」
「ぐはっ!!」
さっすが母上。同世代からの容赦ない一言でオーバーキルだぜ。
「リオン。個人的には応援してるから、頑張ってね」
「ありがとう母上。色々な意味でほんとうにありがとう」
ばいばーいと言いながら母上は違うところに挨拶に行った。
「ぐぬぬ……リグナめぇ……昔からそうだ、あの泥棒ネコめがぁ」
血涙を流しながら学園長先生が立ち上がる。
「リオン。あの泥棒ネコに負けるんじゃないわよ!!」
「あのさ、それどういう気持ちで言ってんの?」
「あの泥棒ネコをぎゃふんと言わせた暁には単位を全てやる!! そう、全てだ!! もうなにもしなくても卒業させてやりゅぅぅぅぅ!!」
もうやけくそだな、この人。
♢
やけくそくそババァは放置して、俺はエリス・ウィンガードさんへ挨拶に出向く。
「リオン。エリス・ウィンガードが見当たらないんだが」
先に挨拶に行くと言っていたルべリア王女がこちらに駆け寄って来る。
「そう、ですか。トイレとか?」
「可能性はあるが、トイレがわからん」
「広いですもんねぇ。この部屋。エリスさんの特徴とかって知っているんです?」
「黄色くて長い髪らしい」
「黄色くて長い髪……」
キョロキョロと探していると、隅の方に黄色くて長い髪の人物を二人見つける。
「あそこじゃないですか?」
「お……確かに……でも二人いるぞ?」
「双子ですかねぇ」
俺、双子に縁があるからなぁとか思いつつ、そこに近づくと双子ではなかった。
「あ、ルべリア王女。リオンさん」
そこにいたのはアルブレヒト女王であった。
「ほら、エリス。二人から来てくれましたよ。挨拶しなさい」
アルブレヒト女王は、もう一人の黄色い髪の女性に優しく言ってのけた。
その女性は黄色い髪を伸ばし過ぎて顔が良く見えない。
「あ、え、えとえと。わ、わたしは──」
がんばれ、とアルブレヒト女王の応援の中、彼女は一生懸命自己紹介をしてくれる。
「アルブレヒト回復学園二年のエリス・ウィンガードと、も、申します。よ、よろしく、おね、お願い、し、します……」
キチンと自己紹介をしてくれた年上の女性に、こちらも紳士として自己紹介を。
「初めまして。アルバートの代表になっちゃった一年のリオン・ヘイヴンです」
「ひっ……ヘイヴン侯爵家ぇ……」
なんで悲鳴だよ。確かに紳士な自己紹介とは違ったけど、悲鳴は傷つくぞ。
「ステラシオン代表の三年、ルべリア・ステラシオンだ。よろしく頼む」
「ひぃぃ!! 外国のおーぞきゅゅゅ……!!」
ルべリア王女にも悲鳴を出しており、王女は傷ついてしまった。
「ごめんなさい。エリスは人見知りするタイプなんですよー」
あまりに酷い状況なもんで、女王様がフォローを入れてくれる。なんとも贅沢なフォローだな。
「へ、陛下……」
「こらこら。ここでは学園長先生ですよ」
「が、学園長先生。わた、わたしみたいな平民なんかが……」
「そんなものは関係ありません。エリスは本に選定された実力者なんですから、もっと自信を持って」
「うう……。ですが、わたしみたいなのがこんな高貴な方々達と共にするなど無理ですぅ……」
「高貴な方?」
ついルベリア王女を見てしまった。
「おいリオン。なんであたしを見るんだ」
あ、やべ。
「いや、ルベリア王女は年上で頼りになるお姉さんだなぁと」
「ふっ。わ、わかってりゅでゅはないか」
この人チョロいなぁ。
「大丈夫ですよエリス。ここにいるのはステラシオンの王族(笑)と侯爵家を追放された男しかいません」
「あの女王陛下」
「急にいじられると反応に困ります」
「あら、ごめんなさい。いじって良いのかと」
この女王チャーミングだねぇ。
「陛下に、王女に、侯爵家……はわぁぁ……貴族が沢山だぁ」
エリスさんは混乱してしまった。
「困りましたね」
混乱解除
女王様が魔術を唱えると、エリスさんは正気に戻った。
「あれ……わたし……ふぁ!? 陛下に王女に侯爵家──」
無限ループって怖くね?




