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妖怪百物語  作者: keikato
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1650/1757

1650 溺死者の霊

 溺死者の霊は仏教説話集『善悪因果集』に次のような話があります。

 天和2年12月29日。

 近江国草津の矢橋の浦で渡し船が転覆し、乗客26人のうち25人が死んだ。

 1年後のある朝。

 事故で一人生き残った男が突然、京に上ると言い出した。

 それを聞いた妻が、「夕べ、夢を見ました。事故で溺れ死んだ人たちがあなたを京に連れていくというのです。どうか京へ行くのはやめて」と何度も諫めた。

 しかし、夫は妻を振り切って出かけ、またも矢橋の浦で渡し船に乗った。

 そして事故の現場に差しかかったとき、男は船べりから落ち、ブクブクと湖に沈んでいった。

 男の遺体は見つからなかったという。

 この溺死者。

 イタイどこへ行ったのだろうか。


・イッタイ=いったい=遺体

・天和2年=1682年

・『善悪因果集』(ぜんあくいんがしゅう・1711年刊・仏教説話集)


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