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1279 地黄煎火
地黄煎火は怪火の一種です。
これは江戸時代後期、速水春暁斎の絵本読本『絵本小夜時雨』に次のような話があります。
その昔。
江州水口の泉縄手に膝頭松という名の大きな松の木があったのですが、そこで薬草の地黄を煎じた汁を練りこんだ飴を売って、わずかな金を蓄えていた男がおりました。
ある日。
男は盗賊に襲われて殺され、ささやかな財産すべてを奪い取られてしまいました。
その後。
地黄煎売りは無念さゆえ、その執心は死後もその地にとどまり続けました。
以来、雨の降る夜。
陰火が膝頭松の根から現れて、あたりを飛びまわるようになったといいます。
この地黄煎火。
殺された怨みをいつまでもネに持っていました。
・ネ=根
・根に持つ=いつまでも恨みに思って忘れない
・速水春暁斎(はやみしゅんぎょうさい・1767~1823・浮世絵師、読本作者)
・『絵本小夜時雨』(えほんさよしぐれ・絵本読本)




