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1275 人を呼ぶ鰻
人を呼ぶ鰻は江戸時代中期、中村満重の『続向燈吐話』に次のような話があります。
その昔。
相模国の大山に、小舟で川漁をする男がいた。
ある日。
男は長さが四尺もあろうかという鰻を獲った。
その日は、ほかにも多くの魚が獲れていたので、早めに引き上げようと、すぐに帰りの舟を出した。
その帰り。
川の中から「太郎、太郎」と呼び声がして、それに応えるように、舟の中から「おう、おう」と声がした。
男は逃げるように舟を漕いだ。
だが、なおも呼び声はやまず、しかも応えているのは舟の鰻だった。
男は驚いて、鰻を川の中へ投げ捨て、ほかの獲った魚も捨て、必死に逃げ帰ったという。
その後。
男は鰻を見ると必ず言いました。
「鰻、コエー」
・コエー=恐い=声
・中村満重(詳細不明)
・『続向燈吐話』(しょくこうとうとわ・1740年序)




