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1262 末子の鬼妖
末子の鬼妖は多田義俊著『南嶺子』に次のような話があります。
但馬国伊福村の伝右衛門には3人の子供がいた。
あるとき長子が痘瘡にかかり、病床で言う。
「大熊に連れていって」
大熊は遠く離れた墓地で、そんな所を知るはずがないと思っているうち、長子は死んだ。
翌日、次子が高熱を発し、やはり大熊に連れていけと言って死んだ。
末子はまだ2歳児だったが、上の二人と同じことを言うようになった。
何かがとり憑いているのだろうと、伝右衛門は末の子に刀を抜いて振り上げた。
すると大人の声で、「わしが去ればこの子は安泰。どうか許して欲しい」と言って、逃げ出した。
間もなく末子の痘瘡は治ったという。
この末子の鬼妖。
トウソウしました。
・トウソウ=痘瘡=逃走
・痘瘡=天然痘
・多田義俊(ただよしとし・1694~1750・国学者)
・『南嶺子』(なんれいし・1757年刊・随筆)




