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1213 酒の虫
酒の虫は宮負定雄著『奇談雑史』に次のような話があります。
酒が何よりも好きな男がいた。
あるとき、心配した親が医者に治療を頼んだ。
すると医者は、まず酒と肴を大量に用意させ、男を柱に縛りつけた。
次に人を集めて酒を振る舞い、宴会を始めた。
これを見た男は、何とかして酒を飲もうとするのだが身動きできない。
飲みたい、飲みたい。
その思いが最高潮になったとき、男の口が大きく開き、喉の奥から真っ赤な虫が這い出してきた。
医者はそれを捕まえると、酒を注いだ盃の中に入れた。
すると虫は息も絶え絶えになり、しばらくすると酒の中で消えていった。
男は大の酒嫌いになったという。
この酒の虫。
虫の息になったのでした。
・虫の息=呼吸が弱弱しくて今にも止まりそうな様子
・宮負定雄(みやおいやすお・1797~1858・国学者、農政家)
・『奇談雑史』(きだんざっし・幕末期の奇談集)




