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1202 眼を舐める猫
眼を舐める猫は怪異の一種です。
これは江戸時代後期、青葱堂冬圃著『真佐喜のかつら』に次のような話があります。
神田に住む某大工は飼い猫をかわいがり、仕事に出るときは、その日一日の食べ物を与えていました。
ある日。
大工は眼病を患い、それからは日を追って生活が苦しくなっていきました。
ある夜。
大工は猫に語りかけました。
「おまえを養う手立てがなくなった。どうしたらよいのだろう」
その夜から大工が眠ると、猫は大工の病んだ両眼を舐めました。
やがて眼病は快方へ向かい、ついに片方の眼が治りました。
一方、猫は一眼がつぶれ、家を出たまま戻ることはありませんでした。
この眼を舐める猫。
二目と見られぬ姿となっていたのでした。
・二目と見られぬ=一眼がつぶれ
・二目と見られない=悲惨で見るにたえない
・青葱堂冬圃(せいそうどうとうほ・江戸時代末期の深川の商人)
・『真佐喜のかつら』(まさきのかずら・随筆集)




