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妖怪百物語  作者: keikato
1202/1238

1202 眼を舐める猫

 眼を舐める猫は怪異の一種です。

 これは江戸時代後期、青葱堂冬圃著『真佐喜のかつら』に次のような話があります。

 神田に住む某大工は飼い猫をかわいがり、仕事に出るときは、その日一日の食べ物を与えていました。

 ある日。

 大工は眼病を患い、それからは日を追って生活が苦しくなっていきました。

 ある夜。

 大工は猫に語りかけました。

「おまえを養う手立てがなくなった。どうしたらよいのだろう」

 その夜から大工が眠ると、猫は大工の病んだ両眼を舐めました。

 やがて眼病は快方へ向かい、ついに片方の眼が治りました。

 一方、猫は一眼がつぶれ、家を出たまま戻ることはありませんでした。

 この眼を舐める猫。

 二目と見られぬ姿となっていたのでした。


・二目と見られぬ=一眼がつぶれ

・二目と見られない=悲惨で見るにたえない

・青葱堂冬圃(せいそうどうとうほ・江戸時代末期の深川の商人)

・『真佐喜のかつら』(まさきのかずら・随筆集)


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