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女戦士と仲間達の十三話

よろしくお願いします。

 フィルクス大陸において、人々が集まる町や村は、その大小に限らず魔獣の侵入に対する備えとして石造りの壁や堀、魔術による結界などが施されている。

 それは勿論辺境の町メリエルも例外では無く、町は石造りの壁に囲われ、町長からギルド経由で雇われた冒険者などが警備にあたり、空から飛来する魔獣に備えて結界魔術による防空対策も施されている。

 メリエルは大陸東端に位置しているとは言うものの、海に面した港町と言う訳では無く、町の東には地竜の洞窟が存在し、更に東に進んでようやく海が見えてくるというような場所にあった。

 海沿いは切り立った崖になっており船が乗り付けられるような場所では無く、最寄りの町であるメリエルまで徒歩で進めば三日は掛かるという事も手伝って、メリエル一帯は陸の孤島と言っても差し支えの無い場所になっていた。

 そんなメリエルではあったが、実のところ人口はそれほど少なくない。

 辺境故にか魔獣が多く、その魔獣対策の依頼を受けた冒険者達や、彼等が持ち帰った魔獣の毛皮に牙や爪、薬品の材料となる素材を求めて商人達が品物の仕入れに訪れる為、宿屋等の来訪者向けの施設や、武器屋にギルド支部といった冒険者向けの施設も豊富であり、この町を拠点にして活動する冒険者達も数多く存在しているのだ。

 例えば今夜も町の酒場で浴びる様に酒を飲んでいた金髪の女戦士も、この町を拠点に活動している冒険者の一人だった。

 彼女は宿屋と酒場を同時経営する木造二階建ての建物で、魔術師と思しき黒いローブの女性と話し込んでいたのだが、暫くして黒いローブの女性は席を立ち、宿の客室の有る二階への階段を上って行った。

 やがて女性の姿が見えなると、タイミングを見計らったように冒険者と思しき三人の人物が金髪の女戦士に近づいて行き、三人の中では唯一の女性が他の二人に先んじて金髪の女戦士に問いかけるのだった。


 「……エキドナさん。どうでした?」


 「アーネか……まっ明日次第だね。なにせAランクの魔物を相手にしようってんだ。そう簡単に話は進まないさ」


 「そう、ですか……」


 『アーネ』と呼ばれた女性は、『エキドナ』と呼ばれた女戦士と黒いローブの女性の会話内容を予め知っていたようだが、望む結果が得られなかった事に肩を落として呟く。


 「俺ならあねさんに口説かれた時点で一発OKなんスけどね~?」


 アーネと共に近づいてきた二人の男の内の片方、小柄な体躯の男も落胆を隠せない様子で首を捻っているが、それは無理も無い事なのかもしれない。

 なにせ金髪の女戦士、Bランク冒険者のエキドナといえば、彼女率いる冒険者パーティである彼等『金色こんじきとら』のメンバーと共に、この街では知らぬ者がいないほどであったのだから。

 そんな彼女に直接声をかけられ誘いを断る冒険者は、少なくともこの街には居なかったのだ。


 「仕方無いさイーサン。アタシの名声なんてのは、所詮このメリエルに限った程度のモノなんだよ。今日この街に来たばかりの人間がアタシの事を知らないなんてのは当たり前の話さ」


 『イーサン』と呼ばれた小柄な男は、エキドナの言葉に肩を竦めるが、完全に納得した雰囲気では無かった。

 その様子を見たエキドナは苦笑を浮かべながら諭すように続ける。


 「それにまだ勧誘に失敗したワケじゃないんだ。元から今日の所は挨拶程度で済ませるつもりだったしね。明日改めて口説かせてもらうとするさ!」


 「そうっスね……そうっスよね! 突然の事じゃ俺でもビビっちまうかも知れないしな!」


 エキドナの余裕を感じさせる言葉にイーサンが納得の反応を返す。

 打って変わったイーサンの態度に、エキドナとアーネが苦笑を浮かべていると、今まで黙って聞いているだけだった二人目の男が口を開いた。


 「アーネ、イーサン。一ついいか?」


 「はい。どうしました?」


 「あん? どうしたよウルガ?」


 『ウルガ』と呼ばれた二メートル近い体躯を誇る男は、腕を組み、厳めしい表情を浮かべながらアーネとイーサンへ向けて問うた。


 「あの魔術師……見た所かなり小さいが、まだ子供なんじゃないのか? 俺達はAランクの魔物に仕掛けるんだぞ? 足手纏いになっては……」


 「いやいや、お前と比べたらどいつもこいつもガキみたいなモンじゃねーか!」


 「イーサン……ウルガは見た目の事を言っているのではありませんよ。聞きたいのは〝彼女の実力は本当に信頼できるのか?〟 ……そう言う事ですね?」


 「ああ。俺はお前たちと違って彼女の実力をこの目で見ていない。人を見た目や年齢で判断するつもりは無いんだが、魔力の量は年齢の高さと比例する傾向に有るじゃないか。ならば当然子供は大人と比べて魔力量に劣ってしまう筈だろう? いざという時に魔力が尽きてしまっていたのでは……」


 ウルガの口にした懸念は、冒険者として至極当然のものだった。

 魔術を行使してパーティに貢献するのが魔術師の仕事である以上、魔力量に劣り、いざという時に魔力切れのリスクが高い子供はパーティメンバーとして不安が残る。

 加えて今回の敵は脅威度Aランクの魔物なのだ。

 リスクを考慮し疑念を問うのは、冒険者として当然の事であった。


 「なるほどね。ウルガの疑念はもっともだ」


 「リーダー……」


 「だが、その心配はいらないさ! 近くでキッチリ確認させてもらったからね。確かにまだ若いみたいだけど、たいした魔力量だったよ……! あれはもしかすると〝人間じゃ無い〟のかもしれないね!」


 「なっ!?」


 「そこまでっスか!?」


 エキドナの口にしたその言葉にウルガとイーサンは驚愕を露わにする。

 人間では無いというその言葉が意味する所は多々有るが、今回のケースで使用された場合はある程度絞られてくる。

 それは……


 「亜人種……中でもエルフ辺りかもしれないよ?」


 「「「………」」」


 エキドナのその言葉に、仲間達は沈黙を持って驚愕を表す。

 騒々しい酒場の一角で、その場だけが空間が切り離されたかの様な空気で満たされた。

ありがとうございました。

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