女戦士と勧誘の十二話
よろしくお願いします。
「………本気、ですの?」
黒いローブの女性は僅かに顔を上げ、フードの陰から金髪の女戦士の緑色の瞳を見据え、問うた。
正気を疑うかの様に紡がれたその言葉に、金髪の女戦士はフードの陰から自分を見据える視線を受け止め、頷く。
その表情は真剣その物であり、先程までの陽気さは欠片も見られない。
「ああ、勿論さ。相手は脅威度Aランクの化け物だからね! 腕の立つ魔術師を一人でも多く確保して戦いに臨みたい……!」
「私はDランクの冒険者ですのよ? 足手纏いにしかなりませんわ……」
「冒険者ランクが必ずしも実力を……戦闘能力を示しているとは限らないさ。これでも人を見る目は持ち合わせてるつもりだよ? この目が一目見てピンと来たのさ! アンタは背中を預けるに値する実力を持った魔術師だってね!」
「……!」
金髪の女戦士は唇の端をつり上げ、自信あり気な表情を浮かべながら断言する。
一目見ただけで実力を感じ取ったという女戦士の話に疑念を抱きつつも、自身を評価された事に悪い気はしない。
照れくささを感じ、顔を伏せた黒いローブを纏った魔術師の女性だったが、Aランクの魔物に挑むというのに全く物怖じした雰囲気の無い女戦士に違和感を覚え、再び問う。
「貴女様はBランクの冒険者だと御伺い致しましたが、何か策が御有りですの? その……Aランクの魔物に挑むといいますのに、気圧されした様子もございませんが……?」
「ああ、勿論さ。罠も仕掛けるし地形も利用する、頭数だって当然揃えてある。明日この酒場で最後の打ち合わせをするから顔を出してみないか? アタシ達の作戦を聞いて、その後に返事を聞かせてくれれば構わないからさ!」
「そう……ですわね、明日改めて御話を伺わせてさせていただきますの。御返事はその際に改めて……」
「よっし! じゃあ続きは明日だね!さぁ飲むよ!!」
「えっ……いえ、私は……」
先程までの真剣な彼女はどこへ行ったのか、話に区切りがつくと再びグラスに酒を注ぎ、浴びる様に飲み始める。
当然の様に魔術師の女性にも酒を勧めるのだが、彼女は既に食事を終えていた事もあり、この場を辞そうと席を立つ。
「なんだいもう部屋に戻るのかい? 夜は長いんだからアンタも飲んできゃいいのに。まぁ飲み慣れて無さそうだし無理に勧めやしないが……じゃ、また明日だね。昼メシ済ませたら始めるからその頃に顔出しておくれよ!」
「え、ええ……それではまた明日。御休みなさいませ……」
既に宿泊代と共に食費の支払いを済ませていた魔術師の女性は、グラスを片手に手を振って見送る金髪の女戦士に会釈をしてから未だ騒々しい酒場を後にする。
その小さな背中を見つめる、幾つかの視線に見送られながら。
ありがとうございました。




