60【かも知れない種】
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「で、貴方達が程度はまだ分からないけれど、魔道具が使える魔法使いかも知れないと知ってどう?」
「どう⋯⋯とは?」
「俺はまだ混乱している。その魔法入門書とやらも真実かどうか分からぬ」
「読んだのは定義のところだけだよ」
「⋯⋯」
自分が狩られるほうかも知れないと青ざめる二人。魔法使いになれるかもってのは、俺のハッタリだけどね。
「人を呪い殺したくなった?」
「いや」
「呪いたい人はいない」
「それはいいね。
だけど、ボゥグはね、呪術魔法が得意かもしれないよ」
「俺が?」
「さっきこのペンを触ったでしょ?」
「ああ。紫色に光った⋯⋯まさか」
「そう、これはまあ契約する時に使う魔道具のペンだけどね。魔力があれば光るのさ。光らないのは魔力枯渇病か、死体ってことだ。
それと、色は属性。紫色は闇属性を示しているのさ。闇属性は呪術魔法が得意なんだよ」
「呪術魔法⋯⋯呪うってことか」
「呪うのに使うかどうかはその人次第だけど、闇魔法はとても貴重なのさ」
「貴重?」
「酒や漬物をつくるのが得意なのさ」
「酒?」
「そ」
「ふっそれが本当なら良いな」
少し緊張がほぐれた表情。
「でしょ?」
「帝国では役人しか酒が飲めないけどな」
「は?」
「食いもんがあれしかないから」
「ふうん」
確かに極薄塩味のビスケットじゃ酒のアテにならないか。
「それより、あ、赤は?」
「ダンゲは赤く光ったね。赤は火属性さ」
「火?」
「つまり、さっき俺が作った火の玉が出せるようになるかもよ」
「火⋯⋯そんな」
「あとは、魔道具コンロの魔石が空っぽでも自分で火をつけられうってことだね。あ、でも焼成魔石用の魔道具コンロでは仕組みがわかんないから」
「ああ⋯⋯」
魔法使いは悪だと言われて育ったのかな。そしてそれを外へ捕えに行く任務について、自分も魔力があることを知った二人は黙ってしまう。
「さて、後は国の騎士殿に交代しよう」
「分かった。任せろ。
で、銃を持って、どうやって検問を超えたのだ?」
国防に関わる話の尋問をスボールが代わる。
「分解して持っていたからな」
「分解?」
「国境を超えるための仕様だ」
「そんなのが出回ってるのか」
「分解した状態の銃を皆で覚える必要があるってことだな」
「そうだね」
「帝国からここまで間のにはヴォーレスタ王国かカリドー王国があるがどっちを通ってきたのか?」
「カリドー王国は帝国の人間が通るときは高額の関税がかかるのだ」
そりゃね、帝国の工業汚水処理の費用を取っているからね。
「だから、職を探す冒険者としてヴォーレスタ王国を目指していた。そして、帝国側の冒険者ギルドで噂がでていたのだ」
「噂?」
「ランデルソール王国で拳銃を使った殺人事件が、魔法使いに寄って塞がれたと」
「なるほど?」
「それがどんな魔法使いか調べてくるようにと」
「ふむ。魔法使いの内容は伝わってないわけだね」
「確かに、我が国なら手柄を公表するのが普通だがな」
「でもそれは、リーンと言ったか、君じゃないのか?」
ボゥグが俺の方に視線を向ける。
「確かに貴方達の銃をうっかり防いでしまいましたしねぇ。銃など俺には通じないと示しちゃったわけですね」
「しかも夜なのに派手に」
呆れたポーズを付けてアズールが言う。
「騎士や兵士の俺達には無理だぜ」
スボールも言う。
「そのうち二人にも出来るようになるよ」
「避けるのは出来るかも知れないけど」
「目の身体強化だったらな」
「わかる」
「では、聞いておくべきこと続きいいかな」
スボールが脱線を戻す。
「聞いておくべきことだと?」
「帝国の対魔法省の職員は全部で何名いるのだ?」
「俺は知らぬ、二年前に入省したばかりの下っ端だ」
ボゥグが言う。
「冒険者のランクは上なのに?」
「八歳になってすぐに取ったからな」
「なるほど」
「では、ダンゲ」
「俺も細かい数字は知らぬ。何の役職もないからな」
「本当か?」
スボールがダンゲの黒い瞳をじっと見る。
ここで泳がれると嘘となる場合が多い。
「ほんとうだ」
「ではおおよそは?」
「トップを含めて内勤は百人ほどだ」
「で? 貴方達のように外へ魔法使いや魔女たちを探す者は何人いるのだ?」
「こちらもおおよそで二百。内勤の倍だ」
「二百!
そのうち、このランデルソール王国の担当は何人だ?」
「知らぬ。辞令はランダムで組まされた二人一組で受ける。それに、省内でも黒い布を顔に巻いて過ごしているから、同僚の顔はボゥグしか知らぬ」
「そんな⋯⋯職場の友達知人は他にはいないのか?」
「おらぬ」
「それから家族は? 親御さんや奥さんや子供は?」
「対魔法省は内勤以外は独身が必須だ」
「それはまたきついな」
「そうでもない」
「気楽だそうだ。離婚して親権をパートナーに渡してから対魔法省に来る人もいるって聞いた」
「それでも羨ましくはないな」
「まあな⋯⋯リーン。他に聞くことは?」
「じゃあ。魔法使いや魔女を集めて、何をしているか知っているか?」
「魔法について、それを使うことがいかに良くないか教育されながら、主に単純な道具での作業をさせられる」
「単純な道具?」
「手で歯車を回したり、足踏みで滑車を回すなど。人自身の動きが動力になる感じだ」
「それで何を生産しているの?」
「あらゆるものだ。魔法使いとは限らぬ、他国から応募してきた者たちはそうやって工場に住み込んだり、家族がいるものは近くの集合住宅から通って、動力として単純な動きをくりかえしているのだ。そしてその動きが焼成魔石のエネルギーに変換されるのだ」
「⋯⋯最悪だ」
「だな」
「今にも帝国に乗り込んで暴れてしまいそうだ」
俺にこんな感情があったのか。これまで転生を繰り返した五百余りの記憶の中で最悪の気分だ。
「リーン顔色悪いな」
「疲れてるのかも知れないな。もう先に寝ておけよ」
「うーん」
「こいつらの処分はやっておくから」
「処分?」
「お⋯⋯俺等をどうするんだ?」
「そりゃぁ」
「旅に連れて行くのは大変だし、騎士団がいる街に引き返すのも無理がある。予定があるからな」
「となると残りは、処分しかないんだよ」
「騎士にはその権限があるんだよ。後で理由をきちんと申し立てたら処分は俺の成績になる」
「それとも、リーン、お前がやるか?お前なら理由無く出来るでしょ?襲われたんだから。一般人じゃないし」
「なにを?」
アズールとスボールが俺に決断を迫る。
「二人の処分執行」
「「ヒッ」」
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