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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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57/81

57【闇の向こうから】

57~58話 改訂しました

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 バシャ。

 満天の夜景を見上げて露天風呂を楽しんでいた。


 コロコロコロ フンフンフン



 BGMは8月だというのに早くも鳴き始めた秋の虫、それと俺の鼻歌。

  

 コロコ⋯⋯

 しん⋯⋯


 虫の音が止む。


 結界を修繕したのにナイトアリゲーターか?いやこれは人の気配。


 フンフンフン


 俺は気付いたことが気付かれないように、さっきから歌ってる鼻歌を続けながら湯船の栓をぬいて湯だけ落とし、一旦風呂から出て着替える。これから寝るにしても鎧に着替えるのは野営の鉄則だ。

 馬車の近くではアズールやスボールの話し声。俺の回復魔法をかけてタブレットをかじった馬は柔らかい干し草の特大カウチに横になっている。

 干し草のカウチは旅をともにする大事なパートナーである馬のために考えたものだけど、王子としての日常生活の合間を縫って作ったもの。

 縫ったのは当然俺だ。


 風呂桶の湯が出きったのを確認して、風呂セットを一気に浄化する。

«ピリフィケーション»コソッ

 エフェクトを抑えようと発動したら中途半端になったけど、アイテムボックスに仕舞うなら黴が生えることはないし。使う時にまた洗えばいいしね。

 

 心の中でそんな言い訳をしながら、アウトドア用の風呂セットを一気に仕舞う。


 ガサッガサッ


 もはやあちらも隠れる気はないみたいだね。

 

 くんくん⋯⋯

 銃ってのは匂いがするから助かる。鉄の匂いと何より火薬の匂い。

 俺は目の前にあるメインの防御魔法の杭にさらに魔法陣を幾つか付与する。

 より強力な物理攻撃への耐性だ。


 ヴン⋯⋯

 白い光は少しグリーンがかっていく。


「なっなんだ?」


 聞こえてるよ。


 フンフンフンフン ラ~


「リーン長風呂だったな」

「あ、もう片付けたんだな」

「うん、腹減ったな」


 何も知らない連れに話をしながら、手元はランデルソール王国の騎士と兵士が身につけているハンドサインでさっき気付いたことを伝える。


「なっ銃だと?」

「しっ」

〝匂い?〟

〝うん、王都で嗅いだのと同じ〟

〝帝国か?〟

〝流石に帝国人の匂いはわかんない。人の匂いはした〟

〝それで光の色が変わったんだな⋯⋯〟

〝物理攻撃からの防御を強化?〟

〝そ、弾丸は止められるけど、人が入ってきたら無理だ〟

〝どうする?〟

〝勿論捕らえるけど〟

「とにかくご飯ご飯!」

「熱いぞ気をつけろよ」

「ホントだ、ちょっと冷ましちゃおうかな」

 せっかくのスープなのに氷を一欠片入れて冷ます。

 ゆっくり食べていられない。

 後は交代で寝るはずだけど、二人とも防弾仕様の革鎧は着用済み。


「ナイトアリゲーターって、暗闇で襲うのだろう?」

「だけど、対処法はあるのさ。ただ」

〝帝国のやつがそれを知ってるかは分からない〟

「ふうん。ランタンをぶら下げて歩くとか?」

「それも有効だけど」

〝そいつは灯りをぶら下げていなかった〟


 緊張しながら、飯を食う。打ち明けないほうが良かったか。でも騎士と兵士の二人に分かってくれている方が警戒できるしね。


 食事が終わって、炭を薪に替えて炎が立ち上がるようにしてくれるのはスボール。


「アズールこれ、靴の紐の間に並べて挟んで?」

「これは中銀貨?」

「そ、闇属性の魔物は銀に弱いからね、念のためにだよ、中敷きの踵の下にも敷いて」

「わかった、スボールにも言っておく」

「うん」

「さっき言ってた対処法がこんなことなんて」

「ふふふ、知らなかった?」

「知るわけないよ」

「あとは、こっちの剣に差し替えて」


 闇属性に強い銀の装飾が鞘にも刃にも施されている美しい剣を渡す。光属性の小さな魔石が少し光っている。

 これは王宮の宝物庫に適当に置かれていたものを持ち出したのだ。結構何本もあって、今は使われていないのが惜しい。


「は? このハデハデ装飾の剣は飾りじゃないのか? これ実家にも飾ってたけれど」

「そうなんだよねー、闇属性に強いんだ」

 宝物じゃないんだよ。活用すべき剣だ。昔はどんな鍛冶屋でも作れるほど量産できたんだから。

「知らなかった⋯⋯」

「でも、ナイトアリゲーターだけじゃなくて他のものもちゃんと切れるからね」

「⋯⋯わかる。刃を見ればまあまあだからな」

「でしょ」


 念のため先に眠っている馬にさらに睡眠が深くなる魔法をかけておく。この子は動かさないほうがよい。怪我されては困る。


「んじゃトイレ行って寝るわ。明日早いし、もう寝といて。交代の順番は?」

「あー自分はずうっと寝てたし、不寝番をするよ」

 御者の免許がないアズールが申し出る。

「じゃあ、私もリーンの後にトイレを使って寝るか」

「うん、ここで待ってて」

〝付いてこないでね〟

 スボールに念を押す。

〝なぜ?〟

〝後ろにいると避けられなくなるから〟


「⋯⋯わかった、後ろにはいかない」

〝気をつけろ〟


「うん」


 あーあ、トイレの順番待ちだって設定なのに銀の剣を抱えちゃって。

 俺はアイテムボックスに入れてるから丸腰には見えてるよ、たぶん。


 クンクン


 二人か。


 三人の子供に二人がかりって過剰じゃない?


 嗅覚のスキルは黒猫から身についたのか。前回の冒険者の時はこんなことは出来なかった。潜んでいる二人はどちらも銃を持っているのも分かる。


 まあ、一番先にトイレを浄化しておいたから分かるんだけどね。掃除しておいてよかった。


 スボールも動いちゃったじゃん。後ろにいてくれるなと言ったから横の方だけど。勿論スボールとアズールの匂いも分かってるよ。

 

 何気ないふうを装いながら全身警戒状態で歩いていく。産毛が逆だってるのが分かるけど、猫の時代に比べたらなんてことはない。


 バンッ


 カツン


 早速一人が撃ってきた。でも弾丸が地面に落ちた音が続く。

 

 バンッ バンッ


 カツン コツン


 もはや相手は立ち上がり、隠れることなく銃を俺に向けて引き金を引いていた。

「なっ、なぜ当たらない」

 暗くてわかりにくいが、中肉中背の男だ。シルエットだけでは細かい年齢まではわからないが、大人に近い少年かも知しれない。

 下半身が銀色に光っている。銀の脛当てを身につけているんだな。なるほど、ナイトアリゲーターの対策はしていると。だがそれ以外は真っ黒、頭まで黒いマスクに覆われている。すね当てと白目部分だけが光ってるみたいで面白い。


「貴方は誰?どうして子どもの僕を殺そうとする?普通子供は攫っていくんじゃないのか」

 子供ってことを強調するために、僕って言ってみる。

「⋯⋯」


 バンッ バンッ


 カツン カツン


「くそっ」


「答えてくれないんですね」


 バンッ


 バシッ


 スボールが控えてる反対側からも弾丸が飛んできた。

 残念ながらこの結界は人は超えちゃうんだよね。結界の内側に入りこまれていた。


 でも、弾丸は捕まえたよ。


「なっ、このガキ素手で⋯⋯」

 結界の内側のやつがつぶやく。

「そう。何発撃ったって無駄だよ」



「そんなはずはっ」

 バンッ バシッ バンッ バシッ

 バンッ バシッ バンッ バシッ


「だから無駄だって」


 ジャラッ

「ヒーフーミー、たくさん集まったね。もしかして貴方より僕のほうが弾《たま》を持ってるんじゃない?だから銃と手持ちの弾をそこに捨てて投降しなさい。あっちに騎士もいるからね」

「!⋯⋯ガキが偉そうに」

「投降しないと反撃しちゃうよ。痛いよ!」

 大きな声で宣言する。


 バンッ バシッ


「もうしょうが無いなぁー。言ったからね!逃げてくれてもいいけど」

「逃げる?ふっ、何を言う」

「逃げないならしょうが無い」

 集まった右手の弾を左手に半分移し替えて、残りを結界の内側にいる男にお返しする。

「覚悟しろよ!」

 素早くだけどちょっと振りかぶって、三つを一度に、

 

 ヴンッ


 ドスドスドスッ


 やつの右足を狙った弾は、狙い通り太ももに当たってめり込んでいる。

 脛当てだけみたいだったから太ももの防御力は少ないかなって思ったんだ。


「うわぁ」

 パンッ! バシッ  

 

 倒れながらもさらに撃ってきたので左膝にも弾を投げ返す。

 ヒュン ドスッ



「うっ」


 風魔法に乗せてるから早くて重いよ。昔も弓に負けたことはない。銃にも負けないかもね。


 確か前に銃を見せてもらった事がある。

 王都で両替商を襲った犯人が持ってた銃は一度に六つの弾を入れることが出来た。

 そいつが持っている銃も同じ形なら、もう撃てないはずだ。弾を充填しなくては。まあ、何丁も持っているかも知れないから油断は出来ないけどね。

「空っぽになっちゃったね、おじさん」

 今度は近づいていく。

 結界の外にいるやつは動いていない。


「気をつけろよリーン」

 スボールから声がかかる。

「大丈夫」


 だけど大丈夫じゃないかも知れない。

 もう一人が結界の中に入ってきた。


「貴方の方の弾はあと何発残ってるかな」

「⋯⋯」

「今度は僕に当てられるから撃ってみてよ」

「おい、リーン挑発するなよ」


「大丈夫だって」




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