52【ダッシュ領都】
夕方になってしまいました!すみません
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ニャー
「あら、おはようリィン。今日も色々ありそうね」
秋のかかり、今日もヴォーレスタ王国にある、魔女マリアーノのお家に窓からお邪魔する。
もとリーンの家だけど、今も女性のお家だからね、一声かけてから。
この家の魔女は香櫞緑の魔女リーンの一番弟子のマリアーノの子孫。この家はもと魔女リーンの家を数度建て替えたもの。
薬草の良い香りのする魔女が俺の黒猫の頭を撫でる。
ニャー マリアーノ、今日はお客さん?
「なあに?猫?マリアーノ、貴女の猫ちゃん」
マリアーノは代々ファーストネームを引き継いでいる。
魔女のお友だちかな?同じような雰囲気の女性だ。長い髪に、黒い魔羊のローブを今から着ようとしていた。
お着替え中にごめんね。
「いいえ、この子はリィンっていうの。
自分では野良って思ってるみたいなんだけど、どうやら魔王様の使い猫っぽいのよね」
「デューク様の?」
「そう、すごく賢いの。時々魔王さまからの手紙を預かっていて、それをギルドに出したりしているわ」
「手紙?料金はどうしているの?」
「デューク様の口座から落としてるのかな?って思う時あるんだけど、この子自身お金が扱えるのよ」
「あら、診たところ尻尾は一つだけだし魔物ではなさそうだけど」
「でも、アイテムボックスを使えるのよ。ね?」
ニャ
「まあ、私もそういう賢い使い猫ほしいわぁ」
「ね、魔女としては自分用の使い猫はほしいわね。
でも何度勧誘してもリィンはすり抜けちゃうの。でも、取引には応じてくれるから、諦めちゃった。顔を見れただけで良しとしようかな」
「取引?」
「そう⋯⋯今日もその首輪の小さなポケットの中を出して良いのね」
にゃ! 全部出して!
「まあ、魔石がこんなに!」
「でしょ、しかも全属性に分けて揃ってるのよ」
「光属性もあるのね、いいわね」
「そう、これは施療院に献上してるの」
「すてきね。私も施療院のことは気になってるのよ」
にゃ?
「リィン、この魔女はね、こんどランデルソール王国のダッシュ領っていう元は小国だった領地の領主になるのよ」
ああ!ダッシュ王国は代々女王が治めてたもんね。しかも魔女の王様。
魔法で農業や酪農を支えて、産業を起こしていた豊かな国。
ランデルソールの初代王も彼女とダッシュ王国を守るために統合したんだ。
力による領地拡大じゃなくて、共和国的な国造りだったんだ。
ということは、時期女王と言うことだね。もしかして⋯⋯とアイテムボックスから一つの物を取り出してつつく。
「まあ、本当にアイテムボックスを持ってるのね。しかもそれは生姜?あら、私の名前が生姜になるって知ってるの?」
まあね。それより一応挨拶しようかな。
二本脚で立ち上がって、頭を撫でてくる右手を肉球の前足で取ってその甲にキスを。
「まあ、本当に賢い猫ちゃんね」
「でしょー。自分の猫じゃないのに自慢したくなるわ」
「ふふふ。ほんとう、リィン、魔王様じゃなくてダッシュ領に来ない?」
後退りして首を横に振りまくり。デューク様との生活は死守!
「次期ヘンヒブレも振られたのね。良かったわ」
「なにが良かったよ」
「リィンが貴女について行ったら困るもの」
「たしかにダッシュ領とここでは距離があるわね」
「リィン、今日も魔石と、胡椒と山椒の実と、オレンジと柿もあるの?これから実りの季節だから嬉しいわね。あら、さっきの生姜もくれるの?これも旬よね」
「生姜なんて野生では無いわよね、リィン。まさかディーン様が植えてるの?」
ここは面倒なので⋯⋯
こっくり
「まあ、あの魔王様が畑をやってるなんて」
「やだ、マリアーノ、あの方が鋤や鍬を振り回してると思いたくないわ」
なんだと!ディーン様はちゃんと耕してるよ!
半分は魔力任せの魔法でやってるけどさ。買い物に行かないから自給自足なんだ。
食べ物はそれで全然かまわないけど!
「ふふふ、じゃあ、リィンはまた魔羊皮紙でいいのかしら」
にゃ!こっくり
「普通の羊皮紙も必要?」
にゃ!こっくり
「じゃあ、ペン先とインクも必要ね」
こっくりこっくり!
にゃ!にゃ!
「ふふふ、どうぞ」
マリアーノが俺の目の前に並べてくれたそれをポケットに入れてる。
「あとはワインとエールも入れておくわね。魔王様によろしくね」
「にゃっ!」
〇●●●〇
「リーン、ここでも施療院に寄るの?」
「もちろん、苦しんでる人を助けられることがわかってるんだから、やるよ」
ベルトア総合繊維販売の商会頭、ベルランツさんのリビングで一服した後、ここの娘のカリノと冒険者三人組で話していた。
「でもここの施療院は領主館の中ですわよ」
そこにカリノのお母さんのメーリノさんも加わってきた。
新年度から同級生のお母さんってことだから、俺やアズールの身分もサラリと明かしていた。
さて、元は女王統治の王国だったダッシュ領の元お城にはその中に教会と施療院などのいろいろな設備を内包して、いざという時の国民の避難所として堅牢な石造りの大きな敷地と建物にしてあった。
何より、魔法使いである女王がもともと治療が得意だったので、同じ場所に施療院があるのが都合良かったのだろう。
当代のヘンヒブレ・ド・ダッシュ領主も、女王やかつてマリアーノの館で出会った数代前の領主と同じくボルドーカラーの長い髪、赤い瞳で、顔立ちや雰囲気も似ていた。
どうか魔女としてのスキルも引き継いでいたら良いのだけど。
「観念して挨拶ぐらいしたら?」
「そうだね、自分も新年に会ってるんだから無視はだめだよな」
「そうだよ」
新年など他の領主が勢揃いする次期にちらりと挨拶しただけでは、彼女が魔女かどうかは分からなかった。魔力が多いのはわかったけどね。
「でさ、今朝みたいに朝にバタバタするのはどうなのと思うんだけど、夜もねぇ」
「いや、病人によっては一刻を争うこともあるかも知れないから、今から行くよ」
「いまから~?」
「うん。それに領主あての手紙を父上から預かってるからどっちみち会わなくちゃ」
「わかった」
「それに、さっきお伺いする先触れの手紙を、もう出してるから」
「いつ?」
「あ!門に入ったところで野良猫に話しかけてたわね!」
「また猫?」
「魔法使いと言ったら猫だろ」
「いやいや、飼いならした子ならともかく、どこでも頼めないって普通」
「そうよね」
「そうかな?」
にゃー
「あ、来たよ」
「ほんと!」
「前足にリボンが巻いてるわね」
「うん、カリノ外してやってくれる?」
「ええ」
早かったな
ツーブロック向こうなだけだ
この子は白地に銀の虎斑が入った、大柄なボス級の猫だが、その割には早かったな。
野良は俊敏じゃなければ生き残れない。
町中のトラ猫の何が敵かと言うと、ペット用に売りたい業者だ。時には毛皮業者も来る。
リボンと思ったそれは、細長く畳んだ紙を包んだスカーフだった。
広げると現れる、ダッシュ王家の豹の紋章。
「リーンすぐに支度を」
カリノから受け取った紙を広げたアズールが言う。
「すぐ?」
「馬車を向かわすって」
「えー、ツーブロック向こうなだけなのにさ」
「殿下として迎えに来るんじゃねえか」
「ま、この格好でいくけどね」
革鎧は外して、普通のシャツとパンツ、ブーツの格好だ。
「施療院にいくならそうだね」
「自分たちはそうは行かないよ」
「私も着替えます」
「しょうがない。じゃあ俺も着替えるか」
「えーでも、リーン達こっちで晩ごはん食べてよ」
「いつになるか分からないぜ」
「待ってるから」
「わかった」
「また猫ちゃんで私にもお手紙くれたらいいから!」
「⋯⋯わかった、カリカリをさっきの猫に渡しといて」
小さな巾着を渡す、これぐらいならあいつだったら咥えられるだろう。
「まかせて」
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