50【ノーダッシュ町4】
自分で、祝!五十話!
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個室と言ってもこじんまりした部屋に一つのベッド。確かに大部屋より壁紙や天井、ちょっとした家具などは上質には見える。
そしてそこに眠っていたのはまだ十五歳ぐらいの少女だった。
赤に近い金色で、肌の色は白い。
「こんな少女でもランデルソールの国民が帝国で働いてたってわけじゃないですよね」
「いえそれが、彼女はヴォーレスタ王国へ留学に行ってたのですが、ヴォーレスタの学園に帝国からの客員講師がいて、その人に連れられて帝国に入り、騙されて働かされていたそうです。
でも、皆と同じように体を壊して、この国に帰る乗合馬車に頼み込んで乗って帰ってきたのですが、途中で動けなくなって、馬車の馭者が頼んできて。
馬車は彼女をこの施療院に預けて町から出ていったのです。他の人たちを帰すために」
「じゃあ、もしかしたら王都の人なのかな」
「はい、貴族の末娘だそうですよ」
「名前は?」
「身分証によると、オランジェ・ド・ブラントンと出たので、貴族かと」
「ブラントン?典礼院長の娘さん?孫かな⋯⋯」
「この人のお身内に心当たりが?」
「ブラントンという家名の男性と知り合いです。
ま、まあそんなことより治療を」
ヴォーレスタ王国に帝国から人材を引き抜くスパイがいたのか。
それにしてもどうして、魔法使いなども魔力がからからになるまで働かされていたのだろうか。
魔法使い狩りとか魔女狩りとか言って、魔力を奪っていたのでは?
蒸気機関で何でも動かすのは難しかったとか。
⋯⋯ぐるぐる考えながら、なんだかちょっと腹が立ってきたな。
我が国の国民を使い捨てのように扱うなんて!しかもヴォーレスタ王国から攫っていくなんで。
まだ帝国にランデルソール王国民が疲弊して働かされているなら父上に帰国費用と帰国後の生活の予算を汲んでもらって帰ってきてもらっても良いんじゃないのか?
後で、お手紙を書こうかな。魔法で飛ばしちゃえば今日中につくよね。なんなら冒険者リーンのお金を放出するよ?
転生の話はするつもりはないけどね。もしも叶わぬなら、こっそり動いちゃっても良い。
そんなことを考えながら、処置しているとオランジェ嬢の青い目が開く。
「どうですかオランジェ嬢」
「悪夢から解放された気持ちです」
「体力が回復したら王都に帰られますか?」
「ええ、家族の顔が見たいわ」
「あなたはオヴェガ殿の?」
「末娘になります。あなたは父をご存知なのですか?宮殿の職員にしては幼いから、父の知り合いの子供さん?」
「俺も知り合いですし、俺の父も宮殿にいるので。
とにかく典礼院長はお元気なので、慌てずに療養してからお帰りください。俺達は辺境伯の領にたどり着いたらまた王都に戻るので、その際ここに立ち寄りますから、何なら一緒に戻りましょう」
と当座の生活費にと銀貨や小金貨などを入れた小袋を渡す。
「そんな⋯⋯」
座ってしまったオランジェ嬢の頭髪を整えていたカリノがその様子を見て、
「リーンって何者か分からないけど太っ腹ねぇ」
「でしょ!
カリノも、俺達と仲良くしておくと良いことがあるよ!」
「私を友達にしてくれる?」
「もちろんだよ。俺はもう友だちと思ってるけど」
「ふふ嬉しいわ、よろしくねリーン」
「まあ、羨ましい。私もリーン様と友だちになりたいわ」
「オランジェ嬢からすると、友達にはやっぱりガキ過ぎやしませんか?俺はまだ八歳ですけど」
「ぜんぜん。年齢差なんて関係ないわよ。それにもっとお互い大人になれば差は縮むわ。」
「なら、よろしくお願いします。帰りに迎えに来ますので、施療院を引き払う必要が出るなら行き先をギルドに言付けといてくださいね。俺達は新年度までに帰らなくてはいけないので」
「ええ、待ってます。リーン様。
カリノさんもありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあ」
「お大事に」
パタン
「次は二階ですね」
「はい、早くしないと出発が遅れてしまいます」
「そうね、次の門までまた慌てることになるわよ」
「だろ」
二階に降りていく。
「アズールおまたせ」
アズールが大部屋にいた。ベッドで座ってる数人の患者と話していたようだ。
「リーン、三階は皆終わった?」
「ああ、典礼院長の末娘がいたから、帰りに拾って王都に連れて行くって言ってきた」
「わかった」
二人で通路に出たけど、シスターは座ってる人たちの様子を見にいった。
「二階の軽度な人たちにはポーションを飲んでもらって今は座れるようになってる」
「そう。サンキュ」
アズールにも魔法係の倉庫から引っ張り出した魔石ペンを渡してあって、すでにひと通り見てきてくれたらしい。
「二人ほどヤバい人がいる。一人は特別室に入ってて。もう一人は大部屋だ」
「わかった、じゃあ特別室から行こうか」
「ああ」
「シスターお願いします」
「はい。こちらです」
三階のフロアと同じ配置で、通路のどんつきのドアを開けられた。
そこはもともと男性聖職者の宿舎のための部屋なのだが。今は住み込みの聖職者がいないので、病室として使っているそうだ。
扉の向こうは小さなキッチンが備わったリビングになっていて、そこにもう一つ扉を開けると寝室がある。そこに一人の少年が横たわっていた。
十歳未満、俺やアズールぐらいか。
とにかく、脈を確認しながら魔力の回復に努める。
「リーン、あなた自身の魔力は大丈夫なんですか?」
シスターの疑問。
「はい、まだ潤沢にありますのでご心配なく」
魔力量はある程度遺伝だと言われている。
たしかに、ファンダーは父上に比べたら数倍は魔力があった。あのときは誰しも生活に魔法を使っていたし、小競り合いの戦争があったから、戦に関わるものは攻撃や防御に魔法を使う。武器を使ったとしてもね。そんな環境にいると魔力の保有量が多い。
でも、今なら遺伝からの魔力量だけということになる。
俺の場合どうなんだろう。
黒猫の時も体が大量の魔力の器にならなかったから。常に空魔石を付き合いのある魔女に貰っていた。
それを寝床に敷いたり抱えたりして寝て、魔石の魔力が溜まったら交換しに行ってた。彼女は喜んでたし、デューク様が魔力を充填したと思っていたみたいだけど。
人なら魔力が多いと長生きするのだけど、その常識は普通の猫では無理だった。まあ死因は攻撃魔法をぶっ放したからだけどさ。
その前の冒険者時代も、魔力量の不足で困ったことはない。
魔女の時代もそうだ。
それらの人生の親など血の繋がりの先祖もある程度魔法が使えたけれど、王族ほどではなくて、平民の魔法使い程度だった。
俺の魔力、今回は人々のために有効に使えたらいいよな。
一日でも早く、デューク様に会いに行きたいけどさ。
「あなたは?」
「おっ目が開いたな」
この子は、身分が高いから特別室じゃなくて、子供だから分けていたらしい。でも貴族っぽいよな。
「俺は冒険者リーン。君の名前は?」
「ぼくはフレーマー・ド・ハーフェンと言います。両親は帝国で死んで、一人で帰る途中だったんですけど」
「お祖父さんとかお祖母さんがランデルソールに住んでいるのかい?」
「うん、叔父が準王都にいるのでそこに頼れと言われてて」
「叔父さんってだれ?」
「ランデルソール公爵です」
「ってことはプルチーの従兄か!」
アズールが唸るように言う。
「はい。プルチーは生まれた時にちょっと会ったんですけど」
「あの時の彼女も可愛かったけどね」
「うん」
「じゃあ俺達とも親戚かもしれないね。ただ、俺達は急いでるから、詳しくはまた今度。えっと。二週間待てるならもう一度寄るから、準王都に一緒に帰れるけど」
「お願いします、リーンさんそれと、親戚の⋯⋯?」
「自分は辺境伯領のアズール、リーンの本名はファーリィンだよ」
「ということは殿下⋯⋯」
「しっ。とりあえず当面はギルマスに頼んでおくから、待ってて」
「わかりました」
「ってことでいいかなギルマスとシスター」
「わかりました」
「ではお迎えがくるまでここでお過ごしください。もともと病室ではないですしね」
「そうだな、侍女とか世話するものを手配しようかな」
「いえ、僕こう見えて、自分のことはある程度出来ます」
「そう?じゃあ⋯⋯。あとは気をつけて待ってて」
「わかりました」
連れて帰る人が二人に増えた。
頬に赤みが差してきたところで魔石ペンを握ってもらうと、フレーマーはなんと四属性の持ち主だった。魔力量はまだ俺が注いだだけだから、そうでもないけど。
これは唾をつけとくべきなんじゃない?魔法師団のために
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