5【剣があってこそ剣術!ではないのだ】
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「ファーリィン、そなたにこれをやろう」
翌朝、父上がぼくの前に一振りの剣を出してきた。
「これは?」
見覚えがめちゃくちゃある剣なんだけど。
「これはアーティファクトと分類されているこの国の宝物で、かつて魔法が戦の中心だったころに我が先祖が〈積層の魔導士〉に貰った剣の一つで、魔法剣としては一番使えないものだと記録されているものだ」
「はあ」
「だが、魔法剣としては使いにくくても、普通の剣としては一流の業物だ」
「これが?」〈一流の剣〉ではないと思うけど。
確かにこの剣も〈俺〉が建国の時にランデルソールにあげたうちの一つ。
でもおかしいなぁ、これが一番凝ってたんだけどなぁ。魔法の仕組みとしては。
壊れてるのかな?
父上が片手で鞘の上の方を掴んで横にしている剣を、両手で掲げ持つように受け取る。
ピピッ シュー…
「わわわっ」
魔法ロックしてないじゃん!
これは柄の所に小さなスイッチがあるんだよ。
思わず父上から奪うように受け取ってこっそり、
プチ
ンンンン……
収まった。
「ファーリィンそなた…」
「びっくりしましたねぇ、何だったのでしょうねぇ」
「…まあ良い。その剣では稽古をするなよ」
「はい?」
「今の様子を見ると、其方はその剣を使ったら災いを起こすかもしれぬからな。
飾るだけにしなさい」
「はい!鞘も美しいですしそうします。
ありがとうございます父上!」
にっこり
「うむ、早く仕舞いなさい」
「はい!
あ、お早うございます王妃殿下」
「あら、王子殿下お早うございます。今日はお早いのですね」
「たまたまですよ」
剣はベルトのポケットに素早く仕舞ったから、彼女には見えていなかったよね。
もし、貰った場面を見ようものなら、
「陛下!そのような一点物を王子に差し上げていたら、将来私が生んだ子供に頂けるものが無くなってしまうのでは!」
って叫ぶのが解ってる。
まあ、一国の国宝が一本の剣で終わりって事は断じてない。
だけど今日はあらかじめ早めに食堂に来るように言われていた。
「クリサテーモは、有力な伯爵の娘だからな機嫌を損ねてはいかぬよ」
っていつも言ってた。
でも、伯爵より上の貴族もいっぱいいるんだよ?この国には。
なんだろ、父上はなにか伯爵家に弱みでも握られているのだろうか。
困ったことがあったらお助けするからね。
さて、父上に剣を頂いたということは、剣術の訓練に入ってよしって合図なんだ。
その日も図書館を出て、騎士の訓練場に駆けっこして、塔の上り下りダッシュの後にエリスに言われた。
「では、今日は木剣の素振りをいたしましょう」
「その前に、一度だけでいいから対戦させて!」
「え?でも」
「剣は握っていなかったないけれど、これまでの訓練で、剣術の稽古前をはじめるまえの今のぼく自身がどの程度が知りたくて…」
「わかりました」
本音は退屈な基礎練習をパスしたいだけだけどね。
「エリスが対戦してくれる?」
「いいですよ、こう見えて私はA級ですよ」
おっ!全前世の〈俺〉と同じ!でもあいつは魔法がメインだったからなぁ。
「A級以上でなければ王族の護衛が出来ませんからね」
「なるほど!そんな決まりなんだね。
んじゃちょっとそこの端っこでお願いできる?」
「わかりました…スボール、こっちに来て審判をしろ」
「え?自分がですか?」
「審判をやってみるのも大事だ」
「わかりました」
スボール君は、今日も俺の塔上り下りの相手をさせられた十歳の少年騎士見習いだ。
他の騎士が、体術の練習をしている横の開けたところで、エリスと対峙する。
するとチラホラと体術の手を止めて兵士たちがこちらを見る。
自分の訓練をして下さいよ!
「殿下木剣です、大きいかな?」
「大丈夫だよスボール君。ぼくの体重よりは軽いでしょ」
「ははは、たしかに。
ではお二方行きますよ!構えて」
でもエリスの木剣より短い!
「「はい」」
「はじめ!」
にらみ合って動かない。
「…あれ?殿下…?」
エリスは栗色の髪をポニーテールのように後ろで結んで、先っちょがくるりとまいてある。
だからぼくみたいに三つ編みにしなくてもばらばらにならないんだね。
緑色の瞳、整った美しい顔。
貴族ってみんな顔立ちが整ってるんだよね。
ドレスを着たところは見たことはないけど、絵に描いたような令嬢に変わっちゃうんだろな。いつか見れるかな。
全然興味はないけどね。
「どうした?エリス?」
ギャラリーから声がかかってる。
「いえなんでも…殿下…隙がなくてびっくり」
「すきって何?
ぼくはエリスはきらいじゃないよ?」
「え?は?」
愛しているのは魔王様だけだけどね!
「いくよっ」
カンカンカン
バシバシバシ
エリスは、もちろんぼくより背が高いからね。
でもAランクだけあって普通に対峙しても彼女には隙がない。
せめて右利きの彼女の右肩の方にまわって…
えい!
「ちょ、殿下、まじか。
今日が初めての剣でしょ」
「それはっ、エリスがよくご存知でしょ」
「私は殿下が生まれた時から護衛させて頂いてますからねっ。
素振りをしてるところも見たことないですよ!」
素振りはしてるよ?
お座りが出来るようになってからすぐに。
始めはタオルを振り回してたんだけどね。
バシューッ
相手の剣をいなして弾いて、懐へ行きたいところだけどタッパが足りなくて足元へ。
タッ
膝裏を目掛けて木剣を振るう。
「よっ」
ガクッ
よし、バランスを崩した。
「え?やだちょっと」
カキーン
「殿下の勝ち!」
「「「うおーっ」」」
「「殿下スゲー」」
「「A級をあっさり」」
「「「あんなに体格差があるのに」」」
気が付けば、内緒をお願いするのは不可能なぐらいのギャラリーに囲まれていた。
⋯⋯やってしまった!
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