48【ノーダッシュ町2】
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「スタイおはよう」
〝にゃーん〟
ノーダッシュ町で朝を迎えて、一番に挨拶したのは窓から入ってきたトラ猫だった。
彼女と約束したのは今朝のご飯だったから。宿の部屋の窓際のテーブルの下に浅めのスープボウルを二つ出して、一つに昨日と同じカリカリを、もう一つは魔法で出した水を入れてやる。
〝にゃーん〟
「おはようリーン。
朝から猫と遊んでるのか?」
「おはようアズール。この猫とは昨日約束してたからね」
「猫との約束ってなんだ」
アズールとスボールも起きてきた。
「二人もお水飲む?」
返事を待つ前に部屋に備え付けられていたコップを三つ出して水を入れる。
「サンキュ」
「ありがとう⋯⋯ぷはぁうまい!」
「どういたしまして」
猫に使ったボウルを魔法で綺麗にして仕舞い、身支度を整えたらギルドの一階に降りていく。
「おはようリーン達」
「おはようございます。カリノも眠れた?」
「それが寝付けなくてちょっと眠い」
「だろうな、今日は馬車でゆっくり寝ろよ」
「ありがとう」
トレランツとカリノの親子ももう席についていた。
だが、他にも待ってる人がいた。
「おはようございます殿⋯」
「しっ。おはようございます班長さん」
「早速なんですが、リーン殿にアズール殿それとお連れの皆さん。昨日の追い剥ぎを連行してきたので、確認いただけますか?」
「え?もう?仕事が早い!」
「そうだね」
「いえいえ、何しろ貴方がたが捕まえた追い剥ぎですからな。あのあと夜のうちに探しに出たのです。そして改めて見れば二人はお尋ね者でした。報奨も渡せますので」
「そうなんだ」
「良かったな」
「でも、捕えたのはスボールとアズールなんだけど」
「いやいや、リーンが魔法で助けてくれなかったらもっと手間だったぞ」
「そうだ、だから褒章は山分けだ」
「「ああ」」
「で、トレランツは大怪我を負わされたとか」
「はい。首のこのところをざっくりと」
人差し指でそこをなぞりながら言う。
「出血が多くて危なかったです」
「しかし傷跡は見当たりませんな」
「はい、リーン殿の魔法が素晴らしくて」
「それは良かったと言いたいのですが、怪我をさせられたという事実が確認ができませんな」
「班長」
「何でしょうスボール」
「俺達の馬車に、昨日トレランツさんとカリノさんが来てた服が残ってると思います」
「この町で処分しようと思ってたんだけど」
「何しろ凄い血痕がのこってるから、洗うのも大変だしね」
「確認させてください」
今朝のカリノはまた俺のチュニックを来ていた。家につくまで男子の服を来たほうがよいからと渡してあったのだ。なのに女の子らしいのが不思議である。子供なのにさ。
「こちらへ。トレランツさんも」
「そうですな、犯人の顔を見ねばなりません」
「お父さん」
「カリノはリーン殿と一緒に待っていなさい」
「うん」
「そうそう、これから朝ごはんなんだから、あの服は見ないほうがいいよ」
アズールが言う。きっと襲われた衝撃はまだ心の傷になりそうだから。
「ここは、騎士のスボールに頼んどけばいいのさ」
「アズールさんも兵士なんでしょ?」
「自分は見習いだから駄目だよ」
「まあ、フフフ」
「う⋯⋯」
アズールがカリノの笑顔に固まっている。同じ年だし、いい雰囲気じゃない?今後も会えるといいよね。
「んじゃ、朝ごはんをお願いしようか」
「うん」
「女将さーん!」
「はいよー」
温かいスープにきのことひき肉のラビオリがどっさり入ったものが出てきた。
それと、キャベツとにんじんの酢漬けと小さな黒パン。
「あんた達子供はこれも飲みな、今朝のしぼりたてが来たよ」
そして牛乳。一口飲んでぬるいなぁと氷をコロコロと入れる。
「リーン、自分のにもお願いします!」
「なあに?」
「氷だよ、カリノにも入れてやってよ」
「そうだねはい」
「まあ⋯⋯冷たい牛乳って美味しいのね」
「でしょ」
「女将さん、この町の施療院って裏の建物かな」
「そうさ、ギルドの裏にあるよ」
「んじゃ後で行こうかな」
「なあに?リーン」
「ほら帝国帰りの脚気患者を見るんだよ」
「まあ、リーンは怪我だけじゃなくて病気も治せるの?」
「あれは脚気じゃないからさ」
「そうなの?なんて病気?」
「⋯⋯魔力枯渇病」コソッ
「まさか」
野太い声が後からしたので振り向く。
「びっくりしたーおはようございます?」
そこには筋骨隆々のおっさんがノースリーブのジャケットを着て立っていた。
俺の胸囲などより太そうな二の腕は丸出しだ。
「ギルマスだわ」コソッ
このギルド兼宿が初めてじゃないカリノが耳打ちしてくれる。
「お前さんがリーン殿か?門の班長が言ってた」
「はい、あなたは?」
「俺はマッソリーノと申しまして、ノーダッシュ町の村長と二つのギルド長をやっとります」
「は?そんな素晴らしい筋肉なのに?っとと失礼しました」
「いや、構いませんよ。俺は現役のAランク冒険者でもありますからな」
「なるほど」
「この町には王都から派遣されている兵士以外に学のあるものがおらぬので、俺がなんでもやってるんです」
「それはご苦労さまです。あ、そうだ。このあと施療院に慰問に行きますので、ちょっぴりお付き合いくださいますか?」
「もちろんです」
「⋯あんた、リーンへの態度がおかしいね」
女将さんが突っ込んでいる。二人は夫婦かな?
「そりゃお前⋯⋯」
といいながらこっちを見るマッソリーノに首を横に振る。班長から俺のことを聞いてるんだろう。
「あ、いや、とにかく施療院だな」
「はい」
「ねえ、リーン、アズール、私もご一緒していいかな」
「いいけど、病人ばっかりだよ」
「わかってるけど」
「じゃあ、マッソリーノさん。すぐに行きましょう。出発が遅くなると困るから」
「分かりました」
「女将さん、スボールとトレランツさんが戻ってきたら言付けといて」
と伝言を頼むのはアズール。
「あの人達はまだ朝ごはん食べてないからね」
「ゆっくり食べさせて」
「わかったよ」
「じゃあこっちだ」
「「「はい」」」
ここのギルドも狭いのに王都のと同じで裏にも出入り口がある。
出口を抜けると両側にテントを張り出しあった雑多な店が立ち並ぶ。隣にはカラフルで元気な鶏がかごに入ったままその中の餌をついばんでるのが幾つか並べているけど、立派な尾羽根の雄だから⋯⋯お肉用だな。
で、ギルドの斜め向かいにそこだけ雰囲気の違う扉と、隣に窓がある。窓からシスターが一人。受付かな。
「おい、入れてくれ」
「まあ、ギルマス様どうぞお待ちになって」
シスターの顔が窓から引っ込む。
ガチャリ。
「最後のやつ閉めてくれよ」
「はい」
最後はアズール。
「子供三人?病気?にしては元気そうね。あら、トレランツさんのところの娘さん?今日はボーイフレンドが二人なの?」
「お久しぶりですシスター。二人はそんなんじゃなくて、私の恩人なんです」
「あら」
「シスター、帝国帰りの病人は何人いるんだ?」
「脚気患者は、昨日二人増えて14人よ」
「また増えたのか」
「そう、この狭い施療院ではいっぱいいっぱいだわ」
「わかった、
リーン上から行くか?三階だ」
「はい」
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