46【追い剥ぎ】
いつもお読みいただきありがとうございます!
このページでゆっくりしていってください~♪
ノーダッシュ町まで、一時間おきに最小限の休憩を馬に取らせながら街道をひた走る。
途中で貧血のトレランツのために軽食を摂っていた。
馬車の中で、ローストビーフがたっぷり挟まれたサンドイッチとトマトのスープ。
「まだ、顔色が悪いですね」
「でも、少しマシになりました」
「馬車に乗った時は寒いってお父さん行ってたもんね」
「貧血の時は体温もちょっと下がるんだよ」
「お腹が落ち着いたら、また横になってくださいね」
「はい」
「じゃあ出発」
「盗賊の内容を教えてもらえますか?」
走り出した馬車の中で問い始める。単騎に乗っているのはアズールで、スボールは馭者だ。
「盗賊にしては二人だけだったので、追い剥ぎと言ったところでしょうか。すこし帝国の訛りがありました」
「帝国ですか」
「特に食料品にすごく反応していたようです」
「ああ、帝国の食事はまずいからなぁ。
日干し煉瓦みたいなやつだろ」
「そうなの?」
「食事さえ全部工場で作ったものだそうですよ」
「俺は父の友人が土産に買ってきたのを食べさせてもらったのですが」
「まあ」
「口の中の水分が全部持っていかれるようで、水がなければ死にそうなもので、食べられたものじゃなかったのです。一口でギブアップしました」
「ははは、栄養はすこぶる良いようですよ」
「家畜じゃあるまいし⋯おっと」
「そうですな。人の食事にはある程度は味覚や視覚それに香りなども大事です」
「ですです」
「さっきのサンドイッチ美味しかったわ。あんなに美味しい携帯食は初めて」
「それはなカリノ、リーンさんが持ってる魔法袋の効果だ、魔法袋に入れた時の状態を保っているのだ」
「そう、作ってすぐに入れると、もっと出来たてになるんだ。さっきのスープも暖かかったでしょ」
「ええ、とっても美味しかったわ」
「うん」
ヒヒーン
「おいおい、どうした!」
前を行く馬がいななく。
「おいアズール止まれ。リーンも前の方見てくれ、街道から逸れたところに人が」
馭者席のスボールが後に声をかけてくる。
「男が二人いるな」
「もしかしてあれじゃねえか?」
「トレランツさん?」
二人組の破落戸がこちらを伺っていた。
「そうです、あのふたりです。でもあいつらが連れていた馬がいないですね」
「たしかに追い剥ぎにしては歩いてるな、とりあえず二人は伏せて。トレランツさんもまだ貧血なんだから寝て」
「はい」
「リーンも中にいろ」
「えー」
しょうがないから幌のすきまから様子を見守る。
「おい、その馬はどうしたのかな?」
「怪我しているようだけど人を乗せて可哀想に」
おいおい、怪我をさせたのはお前たちだろうが!ってツッコミはこっちの皆の心の中。
「はい、だからノーダッシュ町で馬に詳しい人に見せるのです、それが何か?」
スボールが馬車から降りて答えている。かなり緊張しているのが伝わるがそれはいつも一緒にいる俺達だからだ。
流石に騎士団で鍛えているだけあって、まだ少年と言っても良い彼なのに堂々とした受け答えだ。
俺は友人の外での態度に感心していた。
「なにかって、その馬は坊主の馬ではないだろう?」
「俺達は知ってるんだぜぇ」
「何を知ってるんですか?」
「その馬は商人親子の馬車を曳いてた馬だ」
「どうして知ってるんですか?」
「俺達が横を通って抜かしたからな」
「それから奪って乗っているんだろう?」
「どうして奪ったと言えるのですか。
⋯⋯それともあの男性を痛めつけたのはお前達だってのに、逆に私に罪を被せるつもりですか?」
スボールの声色が変わる。
「んだと?なぜそれを」
「そりゃあ、死にかけた親子のその先にお前たちのような怪しい者が入れば、そのように推測するに決まってますよ。
どうです?観念して自首しますか?
お前たちが追い剥ぎだと」
「なにを⋯⋯」
「次のノーダッシュ町の自警団まで一緒に行きましょうか?今素直に罪を認めれば、ちょっとは刑が軽くなるように口添えできますよ」
と、俺からは見えない位置に何かを出しているようだ。
「な、騎士だと!」
わがランデルソール王国の正騎士は、プライベートであっても常に携帯しないといけない物がある。それが短剣だ。王国と騎士団の紋章が柄と鞘についていて、柄頭には所属を表す石がある。彼は近衛なんだけど、今は所属はどうでもいいんだよ。騎士だと証明できればね。
騎士には、いついかなる時も国と国民を守る義務がある。そして犯罪を防ぎ、犯人を捕らえるのも大事な務めだ。
それはもちろん俺達王族やアズールなどの上位貴族の一族にもある義務だけどね。
俺は魔石ペンを胸ポケットから出して、幌の隙間から彼を補助する用意。アズールは馬車の手綱を握っている。
「おい、もしかして、そっちの馬に乗ってるガキもまさ騎士か?いやまだガキだから騎士見習いか?」
今度はアズールに話しかけている。
「だったらどうするんだ」
律儀にもアズールが応える。
「騎士なら良いもん持っているだろう?見習いでも貴族崩れだからな」
「ふっ、残念だったな、自分はただの兵士さ」
「兵士?」
「一応王国軍だけどな」
「騎士と兵士が一緒にどこに行くんだよ?」
「それは里帰りさ⋯ってこっちの事情はどうでもいいだろう、どうするんだ?自首しに行くだろう?」
「何を間抜けたことを」
「行くわけねえだろっ!」
「やってやるっ」
「っととわっ」
ドドッ
二人が叢の端っこから躍り出ようとしたところで同時にずっこける。
「ぷっ」
「ふふっ」
幌の中で俺とカリノが思わず笑う。
「なっなんだ?」
「足に草が絡まって」
草の中で二人の破落戸が溺れているような動きを見せる。
「もしかして、あれもリーンさんが?」
「どうでしょう」
「わはは、悪いことをするもんじゃないってことだな」
「そうだなきっと大賢者様の呪いだよ」
失礼な大賢者は呪わないよ!
スボールとアズールが破落戸達に近寄っていく。
その前にスボールが幌に手を突っ込んで、ロープを引っ張り出していたけどね。
その時に俺と目を合わせて、
「結局リーンの魔法か」
「まあね、草の上から縛ってよ。腕も草で拘束するから」
「わかった」
「な、何をするっ!」
「離せっ!」
「離すわけ無いだろう」
「ははは」
そして拘束した二人の襟の中に手を突っ込んで、引っ張り出した身分証をちらりと見てそのまま放置。
男二人は叢の中のまま。
「日が暮れたら、虫に刺されそうだな」
「痒いぞー、知ってるか、痒みは痛みより辛いっていうらしいぜ」
「ひっ」
「俺達を連れて行ってくれ」
「この馬車にはお前たちを乗せる隙間はない」
「そんな⋯」
「ノーダッシュ町から兵士が来るまでまつんだな」
「それまで、野犬とか最悪肉食の魔獣に気をつけろよ」
「どうやって!」
「⋯死んだふりしたら大丈夫なんじゃないか」
「そうだな、痒くてもじっとするんだよ」
「ひっ」
そして草が生えてない街道の真ん中より男たちがいる叢寄りに、携帯用の狼煙を設置して着火。
「これを目印に来てもらうからな」
「待っておけよ」
「ちなみに、お前たちが襲った親子はこの馬車に乗ってるから。生きているし、きちんとお前たちの罪状を伝えてもらうから」
「安心して待ってなさい」
「そんな⋯」
「どっちにしても終わりだ⋯⋯」
「あ、自殺されたら困るな」
「ああ、猿ぐつわもしておくか」
友人たちの鮮やかさに内心舌を巻いていた。
「リーン達はめちゃくちゃ若いと思ってたけど三人だけで凄いパーティーなのね」
カリノに褒められて気を良くする。
「ありがとう」
再び一頭の馬と別の一頭の馬が引く馬車が走り始める。
グッドボタンお願いします♪
お星さまありがとうございます。
ブックマークして頂くと励みになります!
それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。




