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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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35【魔力を増やしてみよう】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 一週間後、再び魔法係のフロアにみんなが集合した。


 それまでの間、俺はリィーン・ラ・ビブリオーの魔法の指南書と、魔女リーンの時代に初代マリアーノが書いた魔法入門書を見比べて、今の言葉に直して書き出していた。

 一週間前の俺の講義を書き留めてくれたうちの、サムエルのノートも拝借して。


 入門書の導入のところは、できるだけ子供でもわかるように童話っぽく。


 何しろビブリオーの時代は、地域もここからちょっとズレていたから、きつい方言のようにあの頃でさえこの地域には学識者以外には通じなかったかもしれない。そのうえ、文字には発音区別符号がたくさんあって、綴りも違って・・・今の人にはなんとなく発音がわかっても意味が通じない 。形容詞とかも違うしね。


「ファーリィン殿下、その解釈は違いますよ」

そんな俺を手伝ってくれるのは俺の家庭教師でこの国の国立学園の学園長をしているラマーノ。


「いいんだよ、内容はこっちの魔女のと伝えたいことは同じなんだから」

「なるほど」

「文学じゃなくて魔法の入門書なんだから」



 王宮内の第一王子である俺のエリアは、部屋と一口に言ってもいくつかの壁で分けられている広い場所なのである。


 赤ん坊のときは広すぎて寒い!って思っていた。

 赤ん坊の時からこの広いエリアを与えられていたんだよね。無駄だったよね。


 応接、執務室(子どものうちは勉強部屋)、寝室、衣装部屋、そして王子専用のバスルーム。他には侍従や文官の部屋、護衛の居室。


 アズールやスボールもそこに引っ越し済み。


「夜が静かすぎで眠りにくいです」

 スボールは雑音が必要なタイプ


「自分はルームメイトは歯ぎしりの激しいやつだったから、やっと熟睡できるようになったよ」

 アズールはルームメイトに恵まれなかったんだね。


 今まで二人部屋だったらしい二人にはそれぞれ違う感想が。


 で、侍従が一人加わっている。

 侍従はベテランで、先王の時代から宮殿に勤めている。

 だから、魔法省が解体された経緯も知ってるらしい。もちろんラマーノ先生も知ってるらしいけどね。


 俺が書き出して、ラマーノ先生が校正をしてくれた文字をアズールとラマーノ先生が連れてきた文官を目指している学園生が書写して増やしている。


 スボールも本来は護衛だから玄関で立ってるべきなんだけど、魔法を身につけたいと書写にチャレンジしている。

 だが残念だけど、スボールは他人様に渡せるような綺麗な文字が書けなかったので、自分用の本というかノートになる。自分では読めるらしいからね。

 中には見返したときに自分の字が読めない悪筆がいたよな。大昔にさ。

 

「それにしても、殿下が五歳の頃から家庭教師をしておりますが、ヴォーレスタ王国の古語も修められていたとは存じませんでした」



 ラマーノ先生、年寄りが同じセリフを何度も繰り返しはじめるとヤバいんだよ。

 とは言わず濁してみる。


「この本はこの部屋のそこの棚にもあったし、図書室も合ったでしょ」

「はい、バレリアは殿下がこの本の図解のところを見ていたと聞いていたので」


「絵本代わりにしていたと思ってたんだねきっと」


「でも、どうやってこの古い本を読んだんだ?」

 アズールが当然言いそうなセリフを言う。


「古語辞典っていうのがあるんだよ、古語を現代語と照らし合わせるんだ、さらに外国語だったから、まずは古語の外国語同士の辞書で古語のランデルソール語に訳して、さらに現代ランデルソール語に訳して読むんだよ。

 ねラマーノ先生」


 一応古語辞典も持ってきてはいる。


「…やり方は合ってますけど」

「もしかしてファーリィン殿下は伝説の言語スキルをお持ちなんじゃないですか?」

 学生が予想を行ってくる。


「いや、そんなものはないよ。ね、アズール」

「確かに殿下のステータスにはそんな項目はなかったけど、フルステータスがやけに広かったから隠匿項目がたくさんあったんじゃないですか」

「素晴らしいです」


「フルステータスって、人によって大きさが違うのですね」

「ちなみに、ラマーノ先生も広そうですね」

「いえ、私のはこのぐらいですよ」

 と手元の魔法書の縁を指でなぞっている。

 俺は見開きぐらいあったよ…。


「殿下、私も冒険者登録しておいたほうがいいのか?」

 スボールが言う。

「そうだね、でも魔力を上げておいたほうがランクがあがるっぽいから、もうちょっと、魔法の訓練をしてからだな」

「わかりました」


「あ、ラマーノ先生、詠唱の文言は魔女の方のをそのまま書き写しで」

「積層の魔導士ビブリオーのでなく?」

「それは当時のものじゃなくて、詠唱まで書き下しすぎてつかえないんですよ、魔女リーンのほうが正解です」


「は?ということはこの本より古いのがあるかもしれないと?」

「さあ、僕はまだこの国から出たこと無いですからね」


 そんなデスクワークをしながら、時折騎士団や軍で戦闘訓練などをして一週間を過ごした。

 もちろん魔力制御の中の魔力循環も朝、昼、寝る前などに三人で習慣にしていた。



 そして、魔法係のフロアに集合した俺達。

 係長のマリアーノと息子のサムエル、冒険者ギルドからセリシャもちゃんと来ている。

 そして、ハオとスウを連れてきたのは父親のバトマン。

 彼だけが今回初めての参加だ。


 前回来た皆はこの一週間、魔力循環を習慣にしてきたそうだ。

 

「じゃあ、1週間だけだったけど、魔力量は変わったかな。

 もう一度計ってみよう」


「はーい」

「「「はい」」」


「じゃあ、スウから」

「はい!」


 元気なお返事。


 測定機の真ん中に手のひらを持っていく。

 先週初めての時はおっかなびっくりって感じだったけど、今はワクワクしているのがわかる。

「わあ、矢印が長くなってる?」

「ああ、数字も先週の5から10の二倍になってるよ」

「やったー」


「やったなスウ。じゃあ次は、おれ。いいですか」

「よし」


 ハオも10から19と倍近くに伸びている。

「じゃあ次は自分で」

 もともと20あったアズールも倍に増えて40になっている。さすが貴族だ。

 もっと増えるだろう。

「アズールすげ、俺も知りたいです」

 そういうスボールは倍ではなかったけどもともと30もあったので50に増えてる。

「やった!20増えた!」

 スボールも騎士なので、末端とは言え貴族につながっているから魔力が多いのだ。


「私も上がってますかね」

 サムエルはもともと130もあった。今回は131。

「1しか上がらなかったですね。魔力循環してましたけど」

「あー100超えると、大技とか、具体的に魔法を使わないと上がりにくくなるんだよ。

 サムエルは四属性あってその中には水もあるから、洗顔や風呂や、飲水を全部魔法で出しているともっと上がるんじゃないか?

 風呂なら火属性も使うしな」

「…魔法の発動を学んでみます」

「うん」

 発動もしたことなかったんだ。


 ちなみにマリアーノは変化無しだ。

 毎日魔力を使ってるからね。何もしなかった人が魔力制御をすると上がるけど、毎日魔石に魔力を充填してる日常にちょっと魔力循環を足したところで変化はないということだ。全然上がるわけじゃないけど、じわじわと上がる。

 もし、もっと精密な測定機があって、小数点数桁単位まで測ることができたら、変化がわかるかもしれなけどね。

 余裕ができたら考えようかな。

 ちょっとでも数字が変わったほうが実感するもんね。



「マリアーノも普段積極的に水を出して、お湯は無理だけど、それだけでも違うと思うよ」

「わかりました。

 そういえば殿下はお座りしたときにはコップに水を入れてたと聞いてます」

「まあね」


「すげー」

「さすが!」

「あたしもお水出せるようになりたい!」

「まだ魔力がちっさいから水を出すのは大変だけど、コップに一口ぐらいならできるかな」

「うん!それで!」


 子供二人の成果を知ったのか、父親のバトマンがにこにこしている。

 ちなみにバトマンを測ると50ある。

 属性は風だけだった。

 冒険者には十分だよ。


「次に魔力循環の応用で、魔力強化をしてみよう」

「「「「「はい」」」」」


 皆で隣の訓練場に移動する。

 半分あったガラクタが片付けられていて、がらんとしている。


「じゃあ、皆そこで待っててね」


 この部屋は入口から奥まで20メートル近くある。

 俺は遠隔で魔灯をともしながら一番奥の壁の棚に一つの本を立てかけて広げる。

 この本の文字は一文字5ミリ四方の文字だ。

 そして右上に装飾的なマークが有る。鳥とか牛とか人とか。


 そして同じ大きさの文字が書いてある本を5メートルおきに手前に入口に向かって下がりながら広げて立てていく。

 閉じたりしないように、洗濯ばさみでページを挟みながらね。


 サムエルはメガネをかけているけど、不要になるはずだ。


 皆がいる入口側の壁に長椅子を組み立てて、並んで座ってもらう。


「さて、みんな魔力循環をして、魔力を目に集めてみよう」

「めに?」


「そう、目が暖かくなればいいよ」

「うん」


「じゃあ、サムエル以外は目を開けてみよう」

「はい」

「あれ?なんだかめっちゃくっきりしてる」

「それで俺がさっき立てた本の右上のマーク見える?」

「見える」

「一番向こうのも見える!」

「すげ」


「すう、一番むこうのマークがなにかサムエルに聞こえないようにおしえて」

「うん!殿下こっちこっち!」


 手招きするのに近づいて耳を寄せる。

 

 “あのね!どらごん!”コソッ


「おっあたり!」


「自分は一番奥のは…3つ目までは見える」

 アズールがちょっと悔しそうにする。

「目を顰めるんじゃなくて、魔力を意識して目に集中させて」

「ああ、魔力を目に集めて……わわっ!みえた!すげ」

「まあ、よく見えるのね」

「ほんどうだ…一番奥の本の文字まで読めるようになってきた!」

「うん!」

「本当だ、うわあすげ」


「よし、皆は目を閉じて、ちょっと休憩。

 じゃあ、サムエルも目を開けてみよう」

「私は近眼だからメガネがないと…ってえ?みえる?どうして?」


「視力を魔力で強化したからですよ」

「こんなことで」

「サムエルは魔力が多いからね、一日中そうやって過ごしてたらメガネは不要になるんじゃないかな」

「それはありがたいです!」


「そうやって、山の鳥とかを見るようにしてたら、目への魔力強化は自然にできるようになると思うよ」


「わかりました」


「じゃあ皆もう一度目を開けて、目の魔力強化をしたりしなかったりを繰り返してみよう」

「「「「「はい」」」」」


「殿下!すごいすごい!」

「ああ、目がよく見えるといいよな」


「動体視力も上がるんだよね」

「まじか!」

「だから、避けたりするのに余裕が出るんだよ」


「それを早く身に着けたい」

「自分も」


「これを、筋肉や皮膚にも応用すると、力持ちになったり、動きを早くしたり、皮膚が固くなって、帝国の武器も手で掴めるようになっちゃうんだ」


「殿下が先日それをやったってエリスが言ってたな」

「でしょ」


「戦闘向けの魔力強化はまた後日やろうな」

「「はい」」


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