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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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32【アズール達のジョブチェンジ】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

カンカンカン、バシュバシュバシュ


「いいぞー殿下!」

「どうした中隊長!訓練が足りないのじゃないか!」


「うっせー。おい、殿下おかしいぞ、何か()()してないか」

「やだなー、軍トップでもあるフォルザ中隊長に見抜けないずるなんて出来るわけないじゃないですか!」

「だが剣術Sの俺が剣術Aの殿下に押されてるなんて!」


「とっとっとアズールを貸してくれないからですよ!」


少し前、軍の詰所で足の爪を手入れしていた中隊長を訪ねた。

 騎士団の人には昼間にそういうことを刷る人はいないが、軍の方は割といる。

 何故かいつも上半身裸の人とかね。


「フェルザ中隊長。無期限でアズールを貸してほしいんです!」

「殿下、アズールを連れて行ってしまうのか?」


「あの……」


 俺と中隊長の間でおろおろしている又従兄どの。


「おい、アズール。殿下から直接の引き抜きって何やったんだ?」

「なにって…先日から何度か下町に行かれるのに付き合ったぐらいで」

「年齢が近いから声をかけられたのだろう」

「出世じゃねえか!」


 アズールは軍のなかでも家名を名乗っていなかったのだ。


 様々な外野の声のなか、唸るようにフェルザ・ド・マッケラン中隊長が言う。

 彼はアズールの身分を知っている。

「しょうがありませんな。陛下にも言われておりましたから」


「うん」


「だが、只では貸せませんな。

 これまでアズールを訓練してきたのは我々ですから」



 ってなわけでランデルソール軍の屋外訓練場で、アズールをかけて模擬戦をさせられているわけだったりする。


 チャンスがあれば、戦いたいんだからこの人は。

 まあ、いまは戦争もないし、訓練か、交代で国境警備をするぐらいしか軍の仕事はない。


「ふんっ」

「んふふ」

 俺も勝負事は嫌いではない。でも忙しいからここは早めに切り上げよう。



 ガシッ

「えいっ!」


「うぉっ!とっとっ」


「中隊長の剣が」

「飛ばされた!」

「あんなほっそい腕で、どんな力だよ」


 ピー

「殿下の勝ち!」


 審判が俺の勝ちを告げる。


「よし!」

「くっそー」


「ごめんね中隊長」

「仕方ないですな」

「正直に言うと、実はずるをしたからね」

「何ですと!どこにずるが?」


 と使ってた木剣を受け取って見ている。

「普通の木剣ですな。

 しかし鉄剣でも受けたかのように重かったですぞ」


「それはね、身体強化の魔法を発動しながらだからね」

「身体強化?」

「それとブースト」


「な…そのような失われた技術をどうやって…」

「図書館の本にあったから」


 そもそも中隊長は体を鍛えるんじゃなくて、戦術を学ぶべきだよ。

 図書館に行ってさ。


 国の関係者は末端の者でも無料で利用できるんだから。

 

 又従兄が俺の隣で歩いている。

「そっか、軍にいても強くなれないって事なんだな」ボソッ

「何だと!アズール!」


 中隊長から離れていく俺達。


「魔法を使わないからね。

 たぶん中隊長も魔力があるから出来ると思うんだけど…あの年齢からはねぇ。

 中途半端に身につけたらかえって危険だし」


「でも、自分には教えて下さるんですよね!」

「もちろん!

 さあ、今から行くよ!」


「どこへ?」

「女子寮の三階」


「じょ…そんな所行って良いのですか?」

「三階は違うんだってさ」


「わかりました」



 ベルジーヌを迎え入れた日から、父上とは毎晩のように、魔法省復活に向けて話し合いをしていた。


「殿下が毎夜陛下の所で遅くまで話されているから、アレファンダに弟妹(きょうだい)が出来ないのですわ」


 中庭で、王妃に嫌みを言われたんだよね。

 そもそも、そんなの俺のせいじゃないよね。


「お言葉ですがクリサテーモ王妃殿下、僕もアレン君の兄ですけど」


「わ、解っておりますわ」


「お暇なのでしたら、なにかお仕事あるか父上に聞いてみては?」


 アレン君の面倒は乳母に丸投げだから、お友達の令嬢などが毎日昼に遊びに来ている


 時々、子連れのお茶会などのときはアレン君も参加しているようだけど、まだお座りがやっとなので、十五分ほど出てきて引っ込められる。


 父上からは、王妃周りのスタッフには、


「お茶会の参加者と使った費用を報告するように」


 と言われていて、お茶会での会話迄筒抜けなのである。


 そして、帝国よりの発言をした貴族の家の領地替えや配置換えをしていた。

 派閥が隣り合わないようにとかね。


 すると、だんだん王妃から誘われるお茶会への参加人数が減っていた。


 当代の国王陛下もなかなかの傑物なのである。初代ほどではないけどね。



くすくす


「何だ?おかしなことがあったのか?」


 思い出して笑っていたら父に聞かれちゃった。


「いえ、王妃にアレン君の弟妹が出来ないのは僕のせいだと言われて」

「あーなるほど。まあもう要らぬだろう。余の弟たちはよく公務を勤めているし、甥なども生まれておる。

 アレファンダの乳母もはじめは王妃の実家から付けられたものだったが、もう年老いていたし、退職金をつけて、空気の良い田舎に追いやったからな」


「そして、バレリアの娘が今は乳母をやっているんですよね」

 父上は良い感じににやりとする。

「ああ、なかなか良い情報が入ってくるのだ」


 それに、王妃は育児をほとんど丸投げなので、アレン君は帝国思想からは守れるのだ。


「さて、アズールの配置転換だな」

「はい、僕の補佐官候補に」

「補佐官をさせるにはこれまでの教育がちょっとずれているが…」

「辺境伯領では最低限はしているようです」

「まあ、彼もまだ若いどころかまだ9歳だから何とでもなるか」

「はい是非」


「わかった、お前がそういうなら」


 ポン

 国王陛下直々にサインと捺印をしたアズールの辞令を預かる。


「本来はもう少し年上の者がと思っていたが、もっと年上ならお前より聡明でないと意味が無いからな」



「ははは、父上買い被りすぎですよ」


「そんなことはない」


「あと、歳が近いということで、騎士のスボールを専用の護衛に」


 先日三年間の見習いが終わったらしいから。


「そうだな、彼はいくつだ?」

「五歳上です」

「13歳か、学園に入れるか。お前の護衛なら修める必要はあるだろう。学費は余から出そう」

「お願いします!」


「エリスは王妃の護衛に変えよう」

「はい」


「だが彼の剣術はまだそうでもないだろ?」

「一応連れていたらいいのでしょう」

「それはそうだが。お前自身は油断をするなよ。くれぐれも気を付けるように」


「はっ、わかりました」


 父親に敬礼。


 〇●●●〇



「でもビックリしたな。

 自分が殿下の補佐官候補なんて…そんな勉強してなかったからどうなるんだろう」

「私もですよ、せいぜい警邏の騎士職だと思っていましたから」


 アズールとスボールは、兵士と騎士という違いはあったが、男子寮の棟は同じなので、食堂などで話すこともあった。合同の訓練も時々行われていた。


「それに、アズール…様が辺境伯の子息だったなんて、そっちも驚きましたよ」


「様づけで呼ばれるの慣れてないんだけど…」

「慣れなくてはいけませんよ」

「だよな…」


 アズールはファーリィン王子殿下と中隊長の模擬戦の後に辞令を渡された。


「私が抵抗したところで、お前の辞令は決定だったのだ」

 負けたくせに晴れやかに笑う中隊長に礼をして受け取った。


 国王のサインと印の入ったそれは、家臣にとっては宝物にも等しいものである。




 一方スボールは来週から警邏への配置が決まっていたところに、上官から辞令を渡された。



 午前中は宮殿内で座学と宮殿内で働くものとしての立ち居振る舞いを仕込まれて、午後から新生魔法省で魔法の訓練をすることになった。


 居室も、男子寮から宮殿内に移動だ。


「まあ、自分の部屋が出来るのはありがたい」

「アズール様はご実家で広い部屋に慣れていらっしゃるでしょうけど、私は落ち着きません」


 スボールは男爵の血筋ではあるが平民だ。


「なら、天蓋のカーテンを閉め切れば落ち着くよ」


「なるほどです」


 まだ9歳のアズールには文官風の服装を仕立てられた。

「そうしてると、やっぱり良い所の貴族の息子だね」

「まあ、そうなんですけど、やっぱり動きにくいです」

「これからは動かす部位が変わるからね」

「うう」


 13歳のスボールは近衛騎士の制服を貸与される。

「汚しそうで怖いです」


 防弾仕様の皮鎧をインナーに仕込み、サーコートを羽織る。

「暑いです…」

「後で涼しくなる魔法を付与してやるよ」


 ファーリィンの一言が嬉しくて、引き抜いてくれたことも合わせてやる気を感じている。


「では、これから再建する魔法省、今は通産省魔道具係に行くよ」


「「はい!」」


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