31【魔女をお出迎え】
いつもお読みいただきありがとうございます!
このページでゆっくりしていってください~♪
「リィン君、今日も薬草を持ってきてくれてありがとう」
森の麓の古い薬師の家にお邪魔する。
ここは香櫞緑の魔女リーンの家の跡地に建て替えられた薬師の家。
ここを切り盛りしているのは表向きは薬師だが本当は魔女だ。
しかし冒険者としての経験が無いので、製薬技術の才能はあるが戦闘能力が無い。
そこで黒猫リィンが、魔物が多いけど魔の森の奥でしか手に入れられないハーブや薬草を持ってきて、代わりに街で買ってきてもらった小麦粉や調味料を分けてもらっていた。
「君の薬草は状態が良いから助かるわ」
にゃーん
美味しい手作りのカッテージチーズが待っていた。
旨い!
「毒もどき薄荷確かに沢山あるわね。
相変わらず臭いわ…ふふふ、こんなに臭いって事は採って来たばかりね。素晴らしいわ。
これで魔素神経活性薬が作れるわ。
このお薬は帝国では取り扱えないらしいから、わざわざ服用しにこの国にやってくるのよ。
大変よね。帝国の人は。
あら、胡椒の実と山椒の実もあるのね」
俺の首輪のポケットを外して広げている。
「貰っちゃっていいの?」
にゃーん
「こっちは良い香り。
近頃はますます森に入りにくくなっちゃったから助かるわ」
にゃーん
外から入って来たのに、ソファにあげてもらっていた。
じゃないと渡すものをテーブル出せないし、受け取るものの確認が出来ない。
「じゃあ、これが小麦粉と、お砂糖と、お塩と…お酢もあるけど要る?」
にゃっ!
「わかったわ、じゃあリィン君の魔法のポケットに入れるから、魔王様に届けるのよ」
にゃっ!“もちろん!”
薬師には、黒猫が魔王の使い魔だと思われている。
べつに本当にデューク様の使い魔になっちゃえるものなら、そういう契約をしてもらうのもやぶさかではない。
でも俺は普通の猫なんだよね。魔法は使えるけどさ。
尻尾が二つになったら出来るかな。
〇●●●〇
宮殿の敷地の内側で、マリアーノと並んでベルジーヌを乗せた馬車を待っていた。
もちろんエリスも俺の後ろに立っている。
「こ…ここは…まさか」
開けられた馬車から出てきたのは、初対面の昨日よりずいぶん元気そうに見える老魔女だった。
「どうぞ、ようこそいらっしゃいました。
ベルジーヌ殿」
「お前さんは昨日のリーンなのか?」
「はい、改めて名乗らせてください。
僕は、外では冒険者のリーンですが、ここ宮殿ではファーリィン・ラ・ランデルソールと申します。
宜しくお願いします」
うやうやしくお辞儀。
「つまり、王子殿下」
「一応そういうことになりますね」
一旦応接に案内する。
「殿下、一応じゃないですよ」
「この人は魔女のマリアーノ。
現在この国の魔法のトップだ」
「マリアーノ・ド・ウイザールです。通産省魔道具係の係長を拝命しております」
「ウイザール…当代のマリアーノはあなたということですね」
「ご存知なんですね」
「もちろんですよ。私も初代マリアーノの書いた香櫞緑の魔女の書物を読んで学んだのですから」
「有難うございます。
でも私は実践が全然で」
「私もですよ、魔法が使いづらくなってきていて。
生活が苦しくて、魔法を使ってはいけない帝国の女工をしていたよ」
「まあ。
とにかく、ご案内します」
二人の女性が三階への階段を上がっていく。
「はあはあ。申し訳ありません、三階なのです」
「大丈夫さ」
おかしいな、マリアーノは五十代だから三階への階段がきつい事はわかるけど、昨日まで寝込んでた八十過ぎのベルジーヌお婆ちゃんは全然平気みたい。
「昨日まで寝込んでいらしたのでしょう?はあはあ」
「殿下に治してもらったし、いまは借りてる魔石の魔力で身体強化を使って階段を上っているよ。
じゃなくちゃ今はまだ歩くこともおぼつかないんだよ」
「そうなんだ…もうちょっと期間を空けてからでも良かったかな」
「いや、手持ちのお金が心もとなかったから、住み込みの仕事をくれるならすぐにでも欲しかったのさ殿下」
「なるほど。女子寮は二階なんだよねエリス」
「いえ、ジルベーヌの部屋は三階です。そこなら水回りが揃ってますから。
昨夜殿下に言われて整えてありますよ。
後でご案内しますね」
「宜しく頼むよ」
一度ソファに座って休憩していると玄関でノックがある。
〔はいるぞ〕
「父上かな?どうぞ」
なんと父上自ら魔法係のフロアに来られた。
「これは…国王陛下」
跪くマリアーノに続くベルジーヌ。
「お初にお目にかかります。ベルジーヌでございます」
「魔女ベルジーヌ、ようこそ我が宮殿へ。余はあなたを歓迎する」
「このような老婆には勿体無いお言葉です」
「いやいや、本来なら謁見の間で皆で貴女を迎えたいところだったのだが、王妃が魔法否定派なのでな。
特に実家の伯爵家が帝国に繋がっているから表立って動けぬのだ」
「そうなのですね」
「しかし、余は魔法省を復活させようと思っているのだ。
だがその前に帝国から疲弊して帰ってきた国民達を救済したい。
それにはマジックポーションが有効だと息子に教わったのだ」
「はい」
「病み上がりで申し訳ないが、協力してくれないか」
「もちろん承ります」
「よかった、報酬など詳しくはマリアーノに聞いてくれ」
「わかりました」
「魔法使いが増えて良かったねマリアーノ」
「はい殿下。
私一人では少し不安でした」
「ファーリィンよ、後は頼む」
「お任せください」
挨拶だけして降りていく父上をチラリと見送ると、二人の魔女に向きあう。
「ベルジーヌ、普段は俺には敬語はいらないよ」
「そうなのかい?」
「俺も冒険者なんだからね。
ただ俺が王子や貴族っぽい格好をしていて、共有の廊下などですれ違った時は取り繕っては欲しいけどさ」
「時と場合によって変えるってことだね。了解したよ」
「うん。
マリアーノも」
「私は難しいです」
「しょうがないか、楽な方で」
「では全体的に現在の魔法係の部署を案内しましょう、どうぞ」
マリアーノが立ち上がって案内する。
応接の扉を開けると真っすぐに廊下が伸びている。
その右手に大きな倉庫。
そこにはかつての魔法使いが使っていた杖や壊れてるかもしれない魔道具、魔法のための素材や武器、ローブや帽子などが突っ込まれていた。
そして壁一面の書棚。魔導書とかかな。
「あの魔力測定器もちょっと出しておいてね」
「わかりました」
倉庫の並びに製薬室。
「ここで今日からポーションを作り始めているんです」
「なるほど、一般的な魔女のちっぽけな家と違って、素晴らしく整った設備なのだね」
「はい、勿体無くも本格的に使い始めたのは今朝からで」
「本当にもったいないよね」
製薬室の隣の扉はトイレや洗面、風呂がそろった広めの居室だった。
「キッチンまである」
「結婚するまでは私が利用していました」
「マリアーノは通いなのかい?」
「はい。これからは、この部屋をベルジーヌさんが使ってくださいね」
「わかった。
隣に製薬室があるなら、効率的だよ」
廊下を挟んで反対側には五つの扉。
「こちらは、女子寮の部屋の予備です。一部屋に二人ずつ入居できるのです」
エリスが言う。
「えーじゃあこの廊下俺が入っちゃだめなんじゃ…」
「王子が入ってはいけないエリアはありませんよ」
「女子寮はだめだろう」
「王子は無責任なことはされないでしょう」
「そうですよ、責任を取れば良いんですよ」
…女子寮で俺が責任を取らなきゃいけない事ってなんだ?
ってマリアーノに言いかけて固まる。
うん、やっぱり、もうここには来ない!無理かな…。
「こちらはベッドが二つと共有の収納があるだけです。
トイレと洗面は廊下に並んでいるのを使います」
「こっちの扉はトイレなんだね。洗面は製薬室に入る前に手を洗うのかなと思ってたけど、確かに鏡があるね」
「はい、風呂やシャワー、は一階で共有します」
「キッチンは?」
「キッチンはこの奥にあります、どうぞ」
廊下の突き当りに扉があって、その向こうに広いダイニングキッチンがあった。
「なんだ、ここでパンを作れるじゃん」
「そうなんです」
「ここなら厨房の邪魔をせずに済むんじゃないのかい?」
「でも、まだ人手が足りないからね」
「そりゃそうか」
ダイニングキッチンの向こうにまた扉がある。
そこを開けると、だだっ広い空間が広がっていた。ただ、ガラクタで半分は埋まっていたが。
「ここは?」
「ここは訓練場です」
「戦闘訓練には天井が低すぎるね。これまでの部屋から屋根裏を取っ払っただけみたいな。
まさか魔術師が体術の練習をするわけじゃないんだろ」
ベルジーヌがマリアーノに聞いている。
「さあ、魔術師がおりませんので」
「そういえば、家庭教師が言うには、大昔は騎士団と軍と同じ大きさの屋外の訓練場があったそうだよ。そこを取り壊して老朽化していた男子寮をこっちに建て替えて女子寮も分けて建てたって」
なにしろ、この高さの天井では、槍は取りまわせても、長い杖は難しい。
「殿下、攻撃するだけが魔法使いの訓練ではないよ」
「そりゃそうか。攻撃は騎士や兵士の仕事だ」
「はい!」
「ここでは瞑想とかそういうのには十分使えるんじゃないかい?」
ベルジーヌが提案してくれる。
「そうですね。床を貼りなおして…最初はカーペットでもいいか」
「ああ、なんなら日光に弱い薬草をここで栽培してもよい」
「確かに」
ちょっと夢が膨らんじゃうよ!
やっぱ魔法のことになるとテンションが上がるんだよね。
グッドボタンお願いします♪
お星さまありがとうございます。
ブックマークして頂くと励みになります!
それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。




