24【チャレンジいや俺じゃなくて】
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「試食は一個を皆で分けようね。
今回は銀蓬が少なかったからね」
「わかりました」
「物足りなければ、普通のバターロールもありますよ」
「わあ」
「でも、マリアーノには丸々一個食べて欲しいから後でね」
「はい?」
「ポーションも試飲してもらわなくちゃいけないからさ」
「なるほど…わかりました」
「じゃあ三人でこの一個を分けよう」
「はい、切りますね」
「マリアーノは食べる前にちょっとこっちに座って」
俺は革手袋を嵌めながら、食堂にマリアーノを移動させて椅子をすすめる。
「はい」
「じゃあこの魔石ペンを握ってみて。魔力を籠めないでね」
「はい…青と緑に光ります、魔力を籠めていないのに」
「うん、魔石ペンの方がちょっと吸うんだよ。
魔法使いらしくしっかり光ってるね」
「そうなんですか」
「じゃあ次は…」
そして、占いの水晶玉のような大きな魔石を取り出す。
加工された真ん丸のものだ。色も透明で水晶玉みたい。
これが天然だとしたらワイバーン並みの魔物だよね。
「これ…ちょっと大きいけど。この空魔石に魔力を込めて。さっき魔灯用の魔石の充填をしていないから出来るよね」
マリアーノが両手を出してきたので乗せる。
「はい…ですがこれは大きいですね。サーチライト用ですか」
「そうだよ。ちょっと大変だけど、怠くなっちゃうぐらい頑張ってやってみて」
「はい。じゃあちょっと集中しますので」
「うん。っとその前に」
革手袋を外して、水晶を持っている手を下から確認する。
「温かいね」
「まだ、先ほどのお昼ご飯でポカポカしてるかもしれません。焼きたてのパンも触っちゃいましたし」
「うん。じゃあお願いするよ」
「はい」
マリアーノを一人にしたままキッチンに戻る。
「美味しいですね殿下これ、蓬の香りが良いわ」
「青臭く無くて良かった」
「うむ、春先の蓬パンのようだ」
「アク取りの魔法が旨く行ったんだよ」
「あーもっと食べたい!」
「ふふ。銀蓬が少なかったからね。
昨日帰りにちょこちょこって採っただけだし。
このパンをもっと作るなら、銀蓬の採集は冒険者ギルドにお願いしてもらおうかな」
「そうですね、さすればすぐに集まるでしょう。
処理済みの銀蓬さえあればパンは普段焼いている者なら作れそうですし」
「多分宮殿の裏手の森に行けばもっとあると思うんだよね」
「森ですか。普通の蓬などは畑の畔とか水路の土手とかに生えているんですけど」
「森じゃないと裏が銀色にならないんだよ」
物足りなくてみんな普通のバターロールに手を出し始めた。
バターロールとミルクティーも美味しいもんね。
「銀蓬の下処理は、僕だけでもいいけど、マリアーノにも練習してもらわなくちゃね」
「そうですな。他にも魔法使いを探す必要はあるかもしれませんね」
「うん」
「料理の世界にも、魔法が盛んだった時代の素晴らしい美味があったそうです」
「そうなの?」
「私はそれが再現できるなら、魔法の技術が戻ってきてほしいとは思うのです」
「魔法で作る料理ねぇ…何だっけ。
魔法の料理と言えば、素早く手軽に作るのがほどんどで…」
「そうなのですか?」
「うん。図書館の本によるとね」
ガタン…
となりの食堂で物音がしたので見に行く。
「わわっ、マリアーノ!」
するとそこには、真っ青になって床に座り込んでいる彼女がいた。
「結構魔法を使ったので、お知らせしに行こうと思ったんですけど、膝が言う事を聞かなくて」
床に転がった魔石を見ると、結構色が付いていた。青色と緑色。
マリアーノは水と土の属性持ちなんだね。
「やりすぎ!ちょっと怠いぐらいで良いんだよ」
「すみません」
「じゃあ、座りなおそう」
「よし、私が」
料理長が補助してくれる。
子供の俺より上背があるから助かる。
「はい」
「料理長、彼女の手、冷たくないですか」
「そうだな、冷え性なのか?」
「いいえ、先ほどは温かいと言われたんですけどね」
「魔力が減るとそうなるんだよね」
「そうなのか」
念のために俺も彼女の手を触る。
魔石に魔力を込める前に比べてかなり冷たくなっている。
逆に魔石の方がほんのり温かく、中の方でちょっぴり緑色の光を帯びている…とはいえ、まだ一割も魔力は入ってないけどね。
ちょっと大きすぎたね。
「じゃあこの魔石ペンを握ってみて」
「はい…青と緑にちょっと光りますけど…さっきより弱々しいですね」
「枯渇ほどではないけど、明らかにさっきより光っていないね」
「魔力が減ってるってことですね。分かりやすい道具ですね」
「うん、今は魔力測定器が無いから…」
「あの部屋にあるんですけど、こんな持ち運べるものではないですよ」
「そうだろうね。
じゃあ、銀蓬パンを食べてみようか」
「はい」
「魔法を使うとお腹もすくもんね」
「たしかにそうなんですよ。いただきます」
マリアーノ・ド・ウイザールは、フレンドリーな感じだけど、食べる所作が綺麗で、やっぱ貴族って感じはする。
「まあ、草が入ったパンがこんなに美味しいなんて」
「ほんとはお茶を出してあげたいけどこれで我慢してね」
と水を出す。
パンだけで食べるってちょっと大変だもんね。今の俺なら平気だけどさ。
「お水美味しいですね」
「魔法の水だよ、乳母のバレリアにも美味しいってお墨付きをもらってるんだ」
「まあ」
「マリアーノも水属性があるから、練習すれば出来るんだけどなぁ」
「そうなのですか?」
「うん。井戸水よりは美味しいんだよ」
「確かにそうですね。でも私は年齢的に今から訓練しても」
「年齢は関係ないけど…魔力が上がると寿命が上がるんだし…」
「⋯⋯なんだか体がポカポカしてきました」
「よかった」
「なんと。
物を食べると体が熱く感じるものだが、こんな小さなパン一つではあり得ない」
「熱いスープとかパスタや肉ならわかりますけどね」
料理長と見習い君が言う。
「食べました」
「んじゃ、もう一度ペンを持って」
「はい。まあ、結構光るようになりました」
魔石に魔力を込める前にちょっと近付いている。
「まだ体は怠いだろ」
「そうですね⋯でもマシに感じます」
「じゃあ、このポーションを飲んでみようか。ちょっと青臭いけど鼻をつまんでもいいよ」
「ふふふ、勉強のためにそのまま飲んでみます」
子供の俺の手の中で握ると、蓋が飛び出る。
そのぐらいの小さな瓶だ。
「うん…どうぞ」
キュポッ
コクリコクリ
「⋯⋯ふう、飲みにくいとは思えませんね」
「そう?ならいいけど」
「はい、医師が処方する風邪薬の方がよっぽど飲みづらいですよ」
「ああ!分かります!
咳を止めたくて薬を貰ったのに余計に喉に引っかかって咳き込むやつ」
「それは濾してないからですね。その方が薬効が残ると思っているのでしょうか」
「そうですな、生野菜のジュースのようなものですよ」
「僕は医師の薬を服用した事は無いのです。
幸いこれと言った病気になっていないから…」
「それは素晴らしいですね」
「はい、乳母や皆のおかげです。
マリアーノ、口直しにもう一度お水を」
「はい、まあ、氷も浮いているわ…なんておいしいのかしら」
「さて、もう一度魔石ペンを握ってくださいね」
「はい⋯⋯ああ、初めの時のようにしっかり光ります」
魔石ペンの魔力吸収の能力には制限がある。俺の場合でもこれ以上は光らない。
眩しいと魔法陣を描くときに差し支えるからね。
「体調は?」
というと、マリアーノは立ち上がって、片足を少し上げる。
「大丈夫です」
「それは?」
「魔力が減ると、片足で立てなくなるので」
「それは素敵な確認方法だね」
「はい」
「ポーションとパンは成功したね」
「はい!」
「「「わあ」」」
「マジックポーションって素晴らしいものなんですね」
これは一番基本のポーションなんだけど!
驚いちゃだめだよ!
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