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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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20【魔女の記憶】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 その昔、魔の森の麓に三角屋根の古びた建物がありました。

 そこへ遠出の装いの騎士が二人。扉のノッカーを叩く。


香櫞緑(シトロングリーン)の魔女リーンよ。お願いがあります!」

「どうか出てきてください」


「あたしはここよ。ご用はなあに?」


 若い女性の声は建物中ではなく傍らの畑から聞こえました。

 

 ここは薬師として評判の魔女の家でした。その薬を求めてその国はもちろん外国から人々がやってくる。

 ただ、手前の商業ギルドで足止めをされて、そこからゆるされた一組が日に一度だけやってくる。

 なにしろ、普段使うような薬は商業ギルドに卸しているのだから。


「薬を融通してほしいのです」

 年のころは五十近いと聞いていたが、どう見ても二十代にしか見えなかった。

 魔女自身の薬の効果か、はたまた魔女自身の妖しさがそう見せているのか。


 つややかな美しい髪を今は背中で緩く束ねて麦わら帽をかぶっている。

 

 裾の長い上着にすそが広がったパンタロンと言われるボトム。

 活動的な女性に流行っていた。

 

 だが、黒い衣装。それが白い顔を美しく引き立てていた。


「もしかして、また魔力枯渇病?」

「はい…」


「昨日も同じ制服の人だったわ」

「ですけど」


「そんなに魔力を何に使ってるんだか…また戦争なの?」

「はあ、まあそんなところで」

「相手国からの侵略に対抗するために国境線を拡大しているのです」


「一般の民は被害は受けてないの?」

「あやつらは直ぐに避難しますから」

「あやつら?」


 美しい金色の瞳に見つめられて、やっとの思いでその視線を外す。


 この魔女はやばい。

 鬼と言われている我が国の魔法師団長より怖いかもしれぬ。

 

「い、いえ、民の命は大事です」

「そうね。

 ちょっと待って」

「手持ちは無いのですか?」


「保存がきかないのよ」


「なるほど、では材料は」


「材料は日持ちするの、昨日のが残っているわ」

「それは良かった」


「ではそちらに座ってお待ちなさい」


 葡萄棚の下にある白いテーブルと椅子を示す。


「もう、デューク様に届ける野菜を収穫していたってのに!」

 ぶつぶつと文句を言いながら建物に入っていきました。

 

 それから魔女は一時間余りで、製薬が大変難しいとされる、魔力枯渇病の特効薬の十個のポーションを持って家から出て来ました。


「いい?服用したら、丸一日は追加で飲まない事。

 この薬の消費期限は今から五日。

 制服を見ると、あなた方の国に帰りつくまで三日はかかるでしょう」


「はい」

「しかしなぜ魔力枯渇病の患者が五人いると?」


「それは…秘密」


 そして、その国の魔法師団長と部下の魔法使いの命は救われるのでした。



「ふーん、香櫞緑(シトロングリーン)の魔女リーンってかっこいいなぁ。どんな顔だったのだろう…ってあ、肖像画がある…白黒だけど、黒い髪で目が金色…あれ?この組み合わせどこかで…」


 バタン…


「あら、ファーリィン殿下がいらっしゃると思ったのだけど」

「クリサテーモ王妃」

「アズール・ド・オーレンタ辺境伯爵子息だったのね」

「はい。兵士の訓練の後図書室にきたのです。ファーリィン殿下が自分より一つ下なのに博識なのはここでよく本を読むからだとか」


「ふうん。

 で…なあに?香櫞緑(シトロングリーン)の魔女?」



 王妃は今日は貴族の子供の平服のアズールの手元を覗く。

 図書室の中はその方が良いと、先日の晩餐の後にバレリアに教えてもらっていた。


「はい、彼女はあらゆる魔法薬に精通していたらしいですね」


「そんなもの、今のような魔法を使わない時代には何も役には立たないわ」

「そうでしょうか」

「そうよ。

 魔法はそもそも使える人と全然使えない人の間に差があってあまりにも不公平な能力と言われているのよ」

「確かにそうですね。でも、使い方に気をつければ人々を助け、国を豊かにするらしいです」


「ふん。古い事よ」


 不公平を問題にするなんて、誰よりも身分に執着する伯爵家の娘が。

 と心の中で父である辺境伯の言葉を突っ込んで心の中で苦笑するアズールだった。


 〇●●●〇


「出来るだけ早く、再び施療院に戻ってきます。

 でも医師には内緒で」

「はい。わかりました」

 孤児院の兄妹の父親バトマンの具合を見に隣接する施療院に行ったファーリィン。


 バトマン以外にも魔石ペンがちっとも光らなかった危ない人は他に五人いて、その人たちにも応急処置を施してきた俺は王宮に戻る。


「魔力枯渇病なんて過去の病気だと思われていました」

「だけど、最近は脚気が多いというね」

「ええ、帝国に出稼ぎに行く人々は脚気で不調になって帰ってくるそうで」

「でも、ファーリィン殿下に応急処置の技術があるなんて」

「昔はちょっとした魔術師ならできたらしい。でも、魔力枯渇病患者の隣にいる魔術師もそういう時は限界まで魔力を使っていて、他人に渡せる状態でないことがほとんどらしいよ」

「それも図書館の本の受け売りですか?」


「そ」

 

 帰りは、馭者席じゃなくて馬車内で俺の着替えを手伝ってくれるエリス。

 バレリアチョイスのキラキラ王子服にね。


「でも、お金を得るために帝都にわざわざ行っても大して貯金できないんでしょ」

「そうですね、だからと言って国籍を変えるつもりではない人が数年離れるのを止めることが出来ないのですよね」


「あの国ではどういう事になっているのか…

 父さんや外務大臣に聞けるかな」


 石畳から外れて、中庭の植え込みの中に入っていく。

「ところで、殿下はどっちに向かっているのですか?」

「ちょっとね」


 馬車を降りて自室に行く前に、寄り道。というか遠回り。

 宮殿の中の庭園の決まった部分は庭師がビシッと手入れしているけど、それ以外はある程度しか整えられていない。

 つまりこの辺りは掘ったらかしである。

 そのメリハリもまた美しいのだという考えだ。

 おかげてありふれた野草なら宮殿内で見つかるのだ・


「確かここらあたりに…あったあった」

 建物の陰になっている草を探す。

「何ですかこれ、草?

 シダみたいですね」


「シダで合ってるよ。

 これはリアシルバーっていう魔草だよ」

「魔草?」

「ほら、これはね表から見たら普通のシダなんだけど裏返すと…」

「真っ白…ではない?」

「ウラジロってシダもあるよ。それは普通のシダ植物」

「よく市場で野菜の下に敷いているものですよね」

「そうそう、茸とかね、こっちはあれより銀色のうぶ毛がびっしり生えているんだ」


「そう。それと…これ、銀蓬」

「ギンヨモギ?」

「ヨモギの仲間でこれも…」

 ちぎって渡す。

「これも裏が銀色なんだよ」

「まあ、銀色のベルベットみたいですね」

「お洒落な表現だなー、さすが貴族令嬢だね!」

「そ、そんな事は。私はガサツな騎士職ですし」


「じゃあ、悪いけど、エリスはリアシルバーを採集してくれる?」

「わかりました」

「あ、ちぎれば取れるんだけど革手袋してね」

「革手袋?」

「草って意外と手を切るんだよ」

「そうですね」

「はい籠」

「準備良いですね」


「まあね、俺はこの匂いがするギンヨモギの方を」

「匂い?たしかに清々しい匂いがしますね」

「でもたくさん積んだら手にこびりついちゃうからね。こっちは素手で摘みたいから」


 暫く夢中で摘んでいる。

 無心になっていた。


「殿下、戻りましょう」

「あ、そうだね、バレリアに怒られちゃう!」

 このキラキラ王子服のまま草摘みしているんだもんな。



 革手袋でリアシルバーを摘んでいたエリスはそうでもなかったけど

 指先を緑色に染めて戻ってきた俺を見て、いつも穏やかなバレリアが目を釣りあげて怒っていた。


「殿下ぁ…」

「遅くなりました」


「まあ、バレリア殿、明るいうちには宮殿の敷地には帰っておりまして、それから庭にいたのです」

「にしても一度部屋に戻るべきです」

「ごめんなさーい」

 ここはちゃっちゃと謝るのが近道。


「それより孤児院はどうでした?」

 エリスは今日はもう下がらせた。

 子供達の入浴とか大変だったもんね。


「皆可愛かったよ…っていうかちょっとそれについて父上にご報告とご相談があるんだよね」


 ささっと湯を浴びて夕飯のために着替える。


「父上は夕ご飯ご一緒できないのかな」

「そうですね。侍従を呼びましょうか?」

「うん」


 一旦廊下に出たバレリアがすぐに戻ってきた。


「しばらくお待ちください」

「うん」


 その間、自室のテーブルで、摘んだ銀蓬を選別する。


 先っちょの柔らかい所だけを使いたいんだけど…よし、こんなもんかな。



 そして、レシピを思い出しながら書きだす。


 この蓬の下ごしらえの方法、


 強力粉、卵、バター、ビール、膨らし粉、砂糖、塩…。


 分量は様子みてだな。何しろ二百年ぶりだ。ちゃんと作るのは。


 冒険者リーンの時は適当に作ってたからな。


「それからバレリア、明日お昼ご飯の後に厨房借りたいんだけど」

「何を作るのですか?」

「パンだよ」

「では私も手伝いましょうかね」

「お願いするね」


 ああ。この部屋にキッチンが欲しい!


 あとは製薬用の道具を…城にあるかな。なければ冒険者ギルドの並びで買って…売ってるかな。

 もしかして商業ギルドの方かな。



 コンコンコン

「失礼します」


 侍従の声がした。

「どうぞ」


「殿下、

 国王陛下はまだ本日の執務が残っておりまして、食事は自室で召しあがると言う事なのですが、殿下が待てるなら一緒に執務室でとおっしゃっています」

「わかりました。むしろその方が有難いです」


「は、ではそのように厨房と陛下に伝えてきます」

「お願いします」



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