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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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2【王子ファーリィン】

ようこそお越しくださいました!

このページでゆっくりしていってください~♪

「殿下、お早うございます。

 ファーリィン殿下、朝ですよぉ」

 シャッ シャッ


 部屋のカーテンを開けていく音がしている。



「にゃあ」


「くすくす何ですかそれ」


 あれ?


 幸せな猫の夢は冷めちゃったのか。


「おはよバレリア。うーん」


 ぼくはベッドの上でうつぶせのままひざを折り、背中を伸ばすようにしてから胡坐をかいて座る。


「まあ、いつから殿下は猫ちゃんになったんですか?」


 ベッドの天蓋を開けられて見られちゃった。


「前にね。あ」


 気が付けば右手首をぺろぺろと舐めていた。


 昔は朝が来るとこうやってから顔を洗ったんだけど、今はね、ちゃんとやるよ。


 顔を上げると、乳母のバレリアはベッドの傍らのテーブルに洗面器とふわふわのタオルを置いてくれている。


 パチン

 タップン


 指を鳴らすと洗面器に水が半分入る。


 そしてスリッパを履いてテーブルの前に行く。


 バシャバシャ

 顔を洗って

 パチャパチャ

 舐めてた手首を洗って…

 傍らに置いてあったコップにも魔法で水を入れてから、ガーゼで口の中を擦って、口をすすいで…

 ペッ


「見事な魔法ですね」

 すぐ横にあったタオルをわざわざ手渡される。


「しっ!

 魔法を使えるのは、ぼくとバレリアだけのひみつだよ」

「分かってますとも。

 今は魔法使いは少数ですからね。

 それに、殿下がご自分で水を入れられるということは、私が空の容器を運ぶだけなのでとても楽ですし。

 だから黙ってますよ。フフフ」


 そして使い終わった汚れた水の入った洗面器を持って行って、窓の外のテラスのプランターにちょろちょろと捨てていた。

 きっとその草花にも話しかけているのだろう。


 ふっくらした頬にえくぼを見せて笑う乳母は、赤ん坊の時に亡くなった母替わりでもあった。


 ぼくは小さいから何もできなかっただけで、今は何でもできるんだからね!


「でも、将来国王陛下になられるファーリィン殿下なら秘密にしなくても」


 顔を洗い終わったぼくの髪を梳かして、今日もみつあみにしてくれる。


 黒い髪がみつあみになって垂れるのが猫の尻尾みたいでお気に入りなんだ。

 そして、パジャマぐらいふわふわでもっとツルツルのシャツに黒いズボンとピカピカの黒い靴を履く。

 まだ五歳児のぼくどころか、大人でも広い掃除が行き届いた綺麗な寝室で、毎日こんな服を着せてもらってて、ちょっぴり罪悪感がある。


 だって、あのお城も広かったけど、ぼろぼろだったんだよ。




 今朝も朝ご飯を食べる時に、この国の王である父上に挨拶してから、家庭教師の授業がある。


 隙間を埋めないとね。


「お早うございます、父上」

「うむ、おはようファーリィン」

 広い食堂の一番上座に座っているのが、ぼくの父親にしてこの国の国王陛下、アルコアーズ・ラ・ランデルソール43歳だ。銀髪を首のあたりで良い感じに整え、同じ銀色の口髭と顎髭がカッコイイんだ。身長も高いし、細マッチョでなかなかイケメンの国民の人気も高い王様だ。瞳も広大な海に面する国の王にピッタリの青色。


 ずっと前に、どうしておひげを生やしているの?って聞いたら、

「これを剃ったら、顔が少年みたいになってしまって、王の仕事をするのがやりにくいのだ。

 王は偉そうにするのも仕事だからな。

 これは余とお前の二人の秘密だぞ」



 ってほっぺたにキスするほど耳の近くでこっそり教えてくれた。


 もちろん誰にも言わないよ!


 そして、去年ぼくの指定席と交代して、父上の隣に座った女性は、クリサテーモ・ラ・ランデルソール王妃殿下。


「お早うございます、妃殿下」


 ぼくが物心つく前に亡くなった母上は王后だが、この方は王妃。

 違いがちょっと分かんないけど、違うんだって。

 もともとの身分が違うからこうなったんだと、家庭教師に教えてもらった。


 で、父上の向かいに座ったぼく。


「ファーリィンは今日もラマーノ先生か?」

「はい!今日は午前中は座学で、午後からは騎士たちと訓練です」

「うむ。励みなさい」


 一日で父上と会話できるのはこの瞬間だけ。

 ぼくはとっても大事にしている。


「父上は何をされるのですか?」


「まあ、王子殿下。

 国王陛下の執務の内容をこんなところで聞くものではありませんわ」


 王妃殿下がぼくをたしなめてくる。


「どうして?」

「給仕の者に聞かせる内容じゃないですもの」

「そうかなぁ?」

「国王のお仕事というのは大事な秘密もありますのよ」

「お言葉ですが、父上はそんな大事なことをここでぼくに話すわけないですよ」

「うむ。当たり障りのない事を言えばいいだけだろう?」


「はい!」


「国王陛下…」


 ぼくが王妃の言葉を否定して、なんとそれを父上に肯定してもらった。

 それだけでちょっぴり得意になった。

 でも視線を感じて王妃を見ると…


 こわ!


 すごい顔でにらんでいた!

 ぼくはまだ5歳なんだけど!


 料理の方を向いている父上から見えていないからって!


 ぼくの母上が亡くなって喪が明けた後に、王妃になった。

 王妃は、伯爵令嬢だったんだって。


 ぼくの母上は元は外の国の王女で、王后という后だったそうだ。


 家庭教師が言うには、王妃より王后の方がちょっぴり身分が上なんだって。

 でも、その上の身分の王后がいないのだから、クリサテーモ王妃殿下がこの国では一番偉い女性ということになる。


 父上には弟や妹がいて、それぞれ王族としても仕事が沢山あるらしい。


 母上がぼく一人だけを生んで亡くなったので、それは将来父上を手伝う王族が少なくなっちゃったら困るかもしれないからと、王妃と結婚したんだって。


 ぼく、将来忙しくなるのかぁ…やだなぁ。



 …やりたいことあるんだけど。


「余は、本日は会議があって、昼から訪問客が来ることになっておる、夜はその客と晩餐だ」

 おっと、父上がさっきのぼくの質問に答えてくれている。


「お客さまは外国の方なのですか?」


「うむ、ヴォーレスタという国の王弟で、余の古い友人でもあるのだ」


「わあ、父上のご友人ですか?」

「うむ」

「いいなぁ、ぼくもいつかお友達が欲しいです」

「そうだな。王族はなかなか対等な友達を作るのが難しいからな」

「そうなのですか?」

「ああ。普通は兄弟姉妹ぐらいしか年の近しい者が身近におらぬのだ」

「なのに父上にはいらっしゃるのですね!すごいです」


「うむ、そうかそうか」


 でも、なるほど兄弟か!

 さっきはすごく睨まれちゃったけど、王妃殿下に期待だな!


 可愛い弟か妹を期待しながら、うきうきと足取りも軽く、勉強のために図書館に向かう。


 なにしろ、食堂の僕の隣の椅子には、勉強のためのノートと筆記用具を持ってきて置いてあったのだから。


 羽ペンとインク壺、本のように高級な革の表紙を装丁されたのーと、そして昨日読み終えた本。


「殿下、お荷物をお持ちしましょうか?」

 後ろを歩く女性騎士が言ってくれるけど。


 立ち止まって振り向く。

「大丈夫、君の手が塞がったら剣を抜けなくなっちゃうでしょ?」


 近衛騎士だからきらびやかな王宮の内装に合わせた真珠色に輝く美しい鎧。

 それに負けない美しい女性騎士が苦笑するように口を開く。


「そうですけど」

「そっちの方が困る」

「分かりました」

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