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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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15【初めてのお買い物】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 冒険者ギルドで飲み食いした会計は、ギルドの受付でも生産できるけど、レストランのカウンターでもできる。

「キャマレラさんご馳走様」

 最初に言ったように、俺が二人分を支払う。


「柑橘エールありがとうございました」

「どういたしまして!頑張ってね二人とも。

 君たちはギルマスが手ずから登録を担当する期待の新人なんだから」

「そう言えばそうですね」


 え?それって俺のせいだよね…。


「はい!」

 知らずに元気に返事するアズール。

 こいつ辺境伯の息子なのに本当に庶民的。

 アズールの身分でもギルマス案件かもしれないけど。


「さて、売店を見てこよう」

「ああ!」


 ギルドを出て両側に店が連なっている。


 ギルドに持ち込まれた討伐されたり狩猟された魔物や動物の肉、川や湖の魚、そして海の幸。山菜や近所の菜園の野菜、乳製品などの普段の食材と、干し肉や干物、瓶詰の野菜や小さなジャム。オリーブオイル。硬くてぱさぱさするけど日持ちのする携帯用のパンなどの食品が取り扱う種類によって幾つかに分かれた店になっている。

「あとでクッキーを買おうかな」

「ぱさぱさするからジャムか氷砂糖と一緒に買えよ」

「…なるほど、よく知ってるんだな。初めての買い物じゃないのか?それも本かよ」

「そ」

 ギルドを挟んで反対側には武器や防具、カバンなどを展示販売している。

 他には薬屋もあって、簡単な健康相談も受け付けてくれるらしい。


 もちろん地域の一般の人も買い物できるが、ギルド証を持っていたら割引もある。

 物によっては討伐して得たものと物々交換が出来る。その方がギルドにマージンを取られないから得なあるしね。


「とにかく皮鎧が必要だよな。インナーとボトムと、膝当てと肘当てと…手袋と…」


 単独での買い物は実に百二十年ぶりだ。

 黒猫の時は買い物が出来なくて、森にあるもので賄ってたもんな。

 人間はいいよこういう時。


 久しぶりに文化的な事が出来てちょっと感動。

 ただの買い物だけどね。


「俺はそろえるつもりだけど、アズールは無理しなくていいぞ」

「っていうかリーンはさっそく何の依頼を受けるんだ?」

「魔の森にお手紙…」

「は?あんなとこまで、何日かかると思ってるんだ。

 ギルドが許しても、お前んちは無理だろう」

「そうだろうなぁ…

 アズール、次はいつ帰るの?俺に護衛させて」


「なっ…正月だ」

「えー半年以上あるじゃん」

「陛下に聞いてみるんだな、あっち方面で公務が無いかどうか」

「それの方が早いよね」

「ああ…で、皮鎧見るんだろ。剣は?杖はさすがにないらしいけどな」

「父上に貰った剣があるからそれで」

「そりゃ素晴らしい剣なんだろうな」

「一応国宝って言ったけど、魔剣よりだから、今まで使える人がいなかったんだって」

「国宝は使わないだろう」


「でもさ、剣は使ってこそだよ」

「いやいや、剣を使うってことは戦うってことだぜ」

「あ」


防具専門店の前に来た。


〈初心者冒険者用 スタート皮鎧セット〉って言うのがトルソーに掛けられてあった。

そのスタンドの足下には膝当てやブーツ、革手袋もそろっていた。


〈セットがお得!〉初心者向け冒険スタート十点セット 内訳: 軽皮鎧、肩当て(鉄製)、胸当て(鉄製)、肘当て、手袋、膝当て、鉄板入り脛当て、安全(プロテクティブ)ブーツ、防汚付与インナー上下二枚組、防汚付与靴下二足組 で 大銀貨八枚(8万フィラ)から  今ならサービスで全部に名入れいたします。


「すみませーん」

「はーい、おや可愛い冒険者たちだね」


 出てきたのは乳母のバレリアぐらいのおばちゃんだった。品は違うけどね。


「これって、この値段なら一部中古?」

「はい、中古をメンテナンスしたものですね。鉄の部分で壊れないものとかが中古でね」

「なるほど、新品なら幾らなんですか?」

「新品なら12万フィラするよ。

 でも、君達ならまだ成長するだろ?だから中古を買っといて、成長するごとに取り換えて、成長が止まったら新品を長く使うのがおすすめだよ」


「それ良いですね!」


「ちょっと、アズール」

「はい」


 おばちゃんに聞こえない位置まで引っ張ってひそひそ話す。


「ああやって中古を取り換えながら買ってたら新品買うより高くなるんだ!」

「そりゃそうだろうけど、下取りは?」

「安く叩かれるに決まってる。俺が買い方を見せてやるよ」


 とまた店に戻る。


「おばちゃん、スタートセットの新品下さい」

「わかった」


「うん…あ、おばちゃんそれじゃなくてこっちのセット」

「おい、だからリーンは俺より小さいのに大人用を身に着けるのか?」

「そうだよ。皮鎧はある程度調整できるけど靴や肩当てが重いよ。

 これだから何も知らない新人のガキは…」

 ほら、品が無い。


「そこは何とかします」


「しかし、こっちは13万フィラするよ」

「いいからそれで」


「…チッ」


「舌打ちしたぞ高い方なのに」

「だろうね」

「名入れは?」

「俺は〈リーン〉」

「わかった」

「じゃあお金…あ、割引してね」

 とギルド証を見せる。


「お前さん新人なのにいきなりAランクなのかい?

 冒険者割引したら11万だよ」


「俺は強いからね。でも新人だから割り引き助かるよ、ありがとう。

 で、アズールはどうする?持ち合わせがなければ貸すよ」

 途中で振り向いて言う。


「いや、11万フィラなら…」

 さすが良い所の息子。


「アズールは剣は持ってるの?」

「支給品と別に実家から持ってきているのがある」

「そ…結局11万になったな」

「ああ、割引ってやつか」

「思ったほどじゃなかったけどしょうがない」


「じゃあ支払い手続きは終わったから名前入れるよ。リーンとアズールだね」


「じゃあ他の店見て来るから…一時間ぐらいで名入れ終わる?」

「十分だ。分かった、用意しておくよ」


「次は文房具だな」

「文房具?」

「手帳だけじゃ書けないだろ」

「確かに、ペンが必要だな」


 プロムナードを歩く。


「…ここが文房具だな」

「そうだな」


 神経質そうな眼鏡の青年が立っていた。

「何がご入用ですか?」

「携帯用のペンとインク壺それから…魔羊皮紙ってあります?」

「…あるけど在庫は少ないよ」

「そうなんだ…ありったけ貰えますか?」

「一度に渡せる量は決められている。金はあるのか」

「もちろん!」

「そっちの坊主は?」

 これお兄さん、この方はお貴族様だよ!


「自分は携帯用のペンとインク壺だけで」

「あいよ、ちょっと待ってな」


「魔羊皮紙ってなんだ?」

「ちょっとね。さっきの鎧を調節するのに必要なんだ」

「大人サイズだから?」

「うん。インナーは成長してから着て、今は自分の手持ちを使うつもり」

「自分も私服で使えそうなインナーはあるな」

「でしょ」

「防汚ではないけど」

「そうだね」

「でもリーン、宮殿で着てる真白でつるつるは目立つぞ」

「だけど絹は丈夫なんだよね」

「たしかに」

「でも、普段の街歩きの服も必要だな」

「だろ、キラキラしかないのか?」

「残念ながら。だから今日アズールの服を借りに行ったんだよ」

「なるほどそれで!」


「はいよ魔羊皮紙…F3号でとりあえず1ダースだ。1ダース単位しか売れない決まりだ」

「後何ダースあるの?」

「50ダースで在庫が無くなって、入荷も見込み無しだ」

「それは魔羊の供給が止まってるから?」

「そう言うことだ、原料の魔羊は120年前に討伐されたものだ」

「結構古いんものなんだね」

 アズールがこぼすように言う。

「丈夫だけどな」


「リーン、普通の羊皮紙ではだめなのか」

「ダメって事はないけど失敗しちゃうんだよね…とりあえず手に入ったからこれで…

 あ、この紙があるっていう事は魔石ペンもあるんでしょ?」

「……ああ。そっちもめちゃくちゃ高いぞ、属性は無属性しかないぞ」

「それで。あったら二本」

「ちょっと待ってろ。そっちのお前、携帯のペンとインク壺は冒険者割引で500フィラな」

「はいこれで」

 とアズールが登録証を提示する。

 すると青年が店側のカードのようなものをかざす。

 

 ピラン


「よし領収したぜ、物はこれ」

「はい」


「リーン、後でおしえてくれよ」

「もちろん。きっとアズールも出来るようになるよ」

「なにができるの?」

「後でね」


「魔石ペンはこれだ」


 埃が被ってる箱を振り払いながら眼鏡の青年が戻ってきた。

「確認してみな」

「はい」

「ガラスペンみたいだが光ってるんだな」

「魔石だからね…でも色の無いガラスに見えるって事は確かに無属性だ。ちょうどいい」


「そうか、じゃあ魔羊皮紙とこれとペンとインク壺を足して。2万5千フィラ」

「え?高!」

「安いよ。良いの?」

「ああ、魔羊皮紙と魔石ペンを使うやつは大事にしたいのさ」

 と、青年はかすかににやりとした。

「ありがとう!」


「つぎは古着だな」

「今日は一セットぐらいにしておこうかな」

「ちょっとずつ増やせばいいさ」


 そして防具屋に戻って名入れが終わった皮鎧セットを受け取って帰路に着く。


 初めての買い物♪

 良い買い物♪


 思わず鼻歌歌っちゃうね。


 足取りも軽くスキップしそうな体と心をを押さえながら歩く。

 何しろまだ八歳だから。


いかがでしたか?

また明日のランチタイムにお会いしましょう♪

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