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かつて大賢者だった黒猫は王子に転生しても魔王ひとすじ  作者: 前野羊子


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10/17

10【初めてですよ!】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

「また来たのかリーン。

 せっかくAランク冒険者になったのに、森で採取かい?」


「採取は口実だよ。この城は無駄に広いのに、草木に埋もれていたぜ。

 門の周りを出入りできる程度に刈ってきた」


「すまんな、たまには出かけているんだが…」

「空から出入りするからだよ」


「リーンだって今、窓から入って来たじゃない」

「だって入りやすいから。用心悪いよデューク、窓の鍵を開けたままで」


「リーンしかそんな事は出来ないから平気だ。で?ただ掃除しに来てくれたのではないだろう」

「茸のステーキとリゾットを食べないか?」

「…採取した茸をみて食べたくなった?」


「ああ。

 でも、材料あったかな…手持ちに十分あるな。よしじゃあこれで」


 美しいデュークの顔を見るために魔の森に入る。

 そのためだけの冒険者をやっていた。

 

 でも、そこにたどり着くまでの魔物はAランク以上で…。

 いつの間にか俺のランクもそれに対抗できるようになっていた。それは何度も前の生から。


 黒猫になっても窓から出入りしていたけどね。


 〇●●●〇


 宮殿から緑豊かな緩やかな坂を蛇行しながら徒歩で下る。

 坂からは時折横道が両側に伸びていて、美しい庭園と邸宅が見える。

 この辺りは貴族街だ。だんだん坂の下に行くにしたがって、ちょっとずつ区画が狭くなっている。ちょっとずつだよ。

 貴族は領地の方が立派なお屋敷があるし、領地が無い貴族は王都の郊外の高台に広いお屋敷がある。そこから馬車に乗って王宮の仕事をしている。


 貴族は坂の上に家があっても、馬や馬車で出入りするから苦痛じゃないんだよね。

 むしろ、王都を上から見るのが上に立つ貴族には良いらしい。

 …良いかな。便利悪いだけだよね。

 それで言うと一番不便なのが王宮なんだけどな。


 応急は王都のどこからでも、そびえてきらめいているのが見えるのが大切だそうだ。


 たしかに、見晴らしがよすぎて、俺の部屋から海まで見えるのは気に入っている。 


 貴族街を経て富豪の宅地を過ぎ、40分ほど下り切ったところが王都で一番華やいだ中心地だった。


 そこは美しい噴水を囲んだ公園になっていて、周りには高級な店が立ち並んでいる。

 その裏手に従業員や庶民の家があって、経営者などもっと金持ちの平民はさっき通った坂の方の自然のあるところに貴族並みの大きな屋敷を持っている。


 黒猫時代に他の街をウロウロしたけれど、ここもそうだろう。


 華やかな所のすぐそばに厳しい所が隣り合わせであるのは、よくある話だ。


 そんなことは又従兄で辺境伯子息のアズールは知らないだろうけどね。


 さて噴水の公園からさらに海の方に向かって歩いて行くと、すこし雰囲気が荒ぶってきた。


「ここが冒険者ですよ殿…いてっ」

 思わず足を踏む。

 アズールの靴は結構ぼろいから平気。

 訓練の成果とも言うけど。


「だから、敬語はだめだって。

 俺はリーンだって言ったじゃないか」

「分かったよリーン」

「よし」


 通りから馬車用のロータリーが設けてあって、その向こうに懐かしい建物がある。


 剣と盾の看板を見上げる。

 実に百二十年以上ぶりだ。感慨深いものだ。

 黒猫の時は使えなかったからな。


 黒猫で死んでファーリィンとして生まれるまで約50年、その前の冒険者をしていて、人としては生きてから死んで、黒猫に生まれ変わるまで50年かかった。

 とはいえ、死んでから生まれ変わるまでの間、俺の魂はいったいどこにあるのか分からないが、50年の空白は感じられていない。暦を見て時間が過ぎたのがわかるのだ。

 もちろん国名や街名が変わってることもあるんだけどね。

 ちなみに〈積層の魔導士〉などと言われていたのは正確には700年前。その後は女に生まれたこともあった。

 

 有難いのは、黒猫以外は人として生まれられたって事だ。

 猫でも文句はないよ。

 人に嫌がられるような、いやな虫や(どぶ)のネズミに生まれたことは無い。


「アズールは冒険者登録はしてないの?」

「するつもりではいるんだ。見習いが終わって兵士になれなかったら冒険者になろうかと」

「ふうん。じゃあ今は登録までは付き合わなくていいからね」

「いや、良い機会なんで、自分も登録するよ」

「そ?

 でも辺境伯の息子なら冒険者じゃなくてもっと良いポストもあるのでは?」

「それこそリーンだって自分達、この国のトップになるんだから冒険者なんてしなくても」


「それこそ見聞を広げるために必要なんだよ」


 ちなみに、冒険者に登録するということは今朝の食事の席で父上には伝えてある。


「外に出て何をしてくるんだ?」

「冒険者登録をして市井を見ておきたいのです。今後のために」

「まあ、王子が庶民に紛れて働くなんて」

 二言目には俺を否定してくる王妃。


「うむ王妃よそう言うが、実は余も冒険者なのだ」

「わあ、そうなのですね!」

「そんな…」

 思わず父を尊敬したよね。


「まだ立太子もする前だが、自由なうちに色々見たかったのだ。

 さすが余の息子よ。考えることが同じだな」

「父上のランクを教えていただいてもよいですか?」

「ああ…」

 と襟の中から冒険者登録証を取り出して来た。少しくすんだ青いエナメル塗装された小さな板。

「常にお持ちなのですね」

「そうだ…余のランクはDだ。Cに上がる寸前に立太子してしまったから、依頼を受けることがかなわなくなって、ランク上げが出来なくなったのだ」

「父上はデュルコアーズとして登録しているのですか?」

「フフフ、余の偽名は王宮の皆には言わぬ」

 いたずら少年のような微笑みを浮かべて言う。


「いつか、父上と平民のふりをして依頼をこなしてみたいです」

「それは難しいな。余が冒険者に戻るとすれば、ファーリィンがさっさと戴冠して、余が王位を退き、肉体的にも若いと感じていればだからな」

「それは無理です!父上にはいつまでも国王陛下でいてほしいです」

「そうですよ、陛下、そんな早くに退位を考えないでくださいまし」


「安心しなさい二人とも。もちろん退位はまだまだ考えておらぬよ。

  

 ファーリィン、最初の登録手数料は貸してやろう。これは依頼を達成して金を得たら返しすこと」


「はい!」



 というわけで、初めにかかる登録手数料はお小遣いとは別に父上に借りている。

 そして、護衛をもう一人誘うならとその分もある。


「俺は平民として偽名で登録するからな」

「なるほど、自分もそうしようかな」

「付き合うことはないけど、登録料は出せるよ」

 父上が侍従に聞いた値段は、一万フィラ、大銀貨一枚。今回お小遣いも合わせて父上のポケットマネーも合わせて、大銀貨五枚を貰っている。


「いや、辺境伯の息子って便利悪い時があるんだよな」

「なら、王子って身分が不便って事も分かってくれる?」

「ああ」


 ギ…イ…



 この地域の冒険者ギルドではないけど、この雰囲気は130年経っても変わらない。

 昼前なのに薄暗い空間。フロントの前だけ少し明るい。


「こんにちわ」

「おじゃまします」


 目隠し程度の扉を開けると、正面右寄りに受付、左の方に数セットのテーブルと椅子。奥に簡単なバーカウンターがある。

 左の方は中二階になっていてその上にも人がいる様で騒がしい。

 今は昼前だから一番人が少ないはずなのに。


 俺たちは初めて来たということも隠さず、きょろきょろしながらゆっくり受付にむかう。


「ようこそランデルソール王都の冒険者ギルドへ」


 受付の隣の壁の掲示板にいた、スタッフお揃いの裾が短いジャケットの女性が声をかけてきた。

 ジャケットの下は私服のワンピースらしい。さすがにジャケットのデザインは変わっているよ。


「俺達、冒険者登録をしたくて」

「まあ、見たところ見習い兵士のようだけど?」

「俺、孤児院出身で、休みの日は冒険者をして報酬を、育ててもらった孤児院にお返しがしたいんです」

「良くもそんなでたらめがすらすらと…イテッ」

 

 隣の股従兄の足を踏んづける。


「まあ、何て良い子なの!それで君は?同じ兵士の見習いの格好だけど、見たところ君は一見良い所の子に見えるけど?」

 お姉さんはアズールを見る。

 良い目をしているね、当たってます。


「あ、いや自分も故郷の孤児院に寄付はしたいです」

「そう!ではこちらに来て」


 そうしてカウンターから離れた所にあるテーブルに案内された。このテーブルはレストランの席として使用されている。


「あたしはスタッフのセリシャよ。宜しくね。

 じゃあそこに座ってちょっと待ってね」


 座ってるとすぐにセリシャが戻ってきた。

 紙と小さな瓶に二枚の羽を持っている…インクとペンかな。


「さて、冒険者を登録するには大銀貨一枚分の手数料が必要です」

「持ってきています、これ、二人分」


「はい確かに。でもこれは事務手数料なので、この後冒険者として適性が無くて登録できなくても返せないですけど」

「わかりました」

「了解です」


「ではこちらの紙に書ける範囲で良いから書いてね。見習い兵士のようだけど、文字は習得済み?」

「はい」

「はい、あの…俺、小さい時に親とはぐれて本当の名前が分からないのでニックネームとかでもいいですか?」

「いいわ。登録するのは魂の波長だから、名前が適当でも照合されるの」

「わかりました」

「魂の波長なんてあるんですね」

 知らなかったよ。まじで。

 進んでるんだな。

「ええ」


 渡したお金を持って一旦席を外すセリシャ。


 俺たちは申込用紙に向かう。

「名前。リーン」

「リーンだけ?家名は?やっぱり偽名にするんだな」

「俺の家名なんて書けるわけないじゃん」

「なるほど…自分もアズールだけにしますよ」

「アズールは珍しい名前じゃないしな」

「リーンとかリィーンもありふれてますよ」

「まあな、図書館に貼ってるあの人のせいだろ」

「らしいですね。まさかリーンの本名も」

「そうだ、あの人からとったんだって」


「生年月日は隠さなくてもいいか…今は八歳で、主な使用武器は…魔法ってないんだね。

 まあ剣で」

「魔法使えるのか?」

「…コップに水を入れるぐらいだけど」

「すごいな。水魔法は良いよ。水筒を持たなくてもいいんだろ?」

「まあね。

 アズールも、貴族だから魔力があると思うんだけど」

「かもしれないけれど、うちの実家は昔から少ないらしいぜ」

 だんだん平民の兵士らしい口調になっていくアズール。


「お兄さんは今年もミモザ祭りでフロートの魔道具を動かしていたよ」

「へえ。練習したのかな」

「練習すれば出来るぐらいには魔力があるんだろ」

「騎士の方が魔法を使うのか?」

「それは分からないけど。

 現在の住所…見習い兵士だから宮殿でよいか」

「リーンの寝室は自分と違う建物だけどな」

「兵士や騎士にリーンって在籍していた?」

「たしか…国境に女兵士がいたと思う」

「なら良い…よし、書けたよ」

 

 お姉さんが戻ってきた。さっきはしていなかった手袋をはめて胡桃大の透明な水晶玉のようなものを持っている。

 あれが魔道具の魔石だとは分かるけどね。


「それから簡単な身辺検査をするわね。とはいえお尋ね者じゃないかどうかぐらいのものだけど、君達みたいな若い子にはまあ要らない事なんだけど一応ね。

 幼い子でもスリとかの前科がある時もあるから」

「それは笑えないですね」

「まあね。手癖が悪い子は注視するのよ。

 だからそれをこの水晶の魔道具で判定するのよ」

「魔道具ですか」

「ええ、いくら新しい文明が進んでも、こういうことは出来ないからね。魔道具なのよ」


「魔法が廃れたと聞きますけど、今も魔法を使う冒険者っているのですか?」

「魔法で戦う人は高齢者だけね。だから今は冒険者として現場を離れている人が殆どよ。

 今の若い人は魔法の鍛錬をしないの。というか出来ないのよ。

 魔法使いは今はこういう魔道具を管理する仕事をされているわ」

「そうなんですね」


「治療をする魔法使いは?

 一緒に冒険活動しないんですか?」

「その知識をどこで?」

「兵士見習いですからね、王宮の図書館ですよ。

 そう言う魔法使いと冒険すれば心強かったと描かれた物語を読んだのです」

「そうね、たしかに回復役の魔法使いが一緒だとかなり無茶が出来るでしょうね」


「今は少ないのですか?」

「魔法で治療をすると、医師の団体が文句を言うのよ」

「うわ…」

 思わずという感じでアズールが声を出す。


 するとお姉さんが座ったまま前かがみになって小さな声で話す。


「医者の治療なんて、優秀な魔法使いほど完全じゃないそうだし…時間がかかるのよ。

 入院日数や通院の回数だけ治療費が取れるからね。

 必要なら良いけれど、不必要に伸ばす医師もいるのよ。医療費は結構高いのに」

「じゃあ大けがをすると冒険者生命にもかかわるんですね」

「勿論患者に寄りそう良い医者もいるんだけどね。藪医者も多いのよ。

 復帰があまりにも遅くなるとブランクが出来るからね。長い通院中の間に受ける依頼も報酬の低い雑用ぐらいしかできないし。高ランクは低ランクの仕事が出来ないことになってるし」

「なかなか難しいんだね」

「兵士になってる方がいいと思うわよ」

「兵士も怪我をすれば同じです」

「そうね」


 セリシャが二枚の紙を手元に置いて見る、


「君がアズール様で、小さい方がリーン様ね」

「「はい」」

 ギルドにとって冒険者は大事な存在なので、一般職員は下っ端のガキでも様付けをする。

 上役は呼び捨てられるんだけどね。


「アズール様も読みやすいほうだけど、リーン様は文字が綺麗ねぇ」

「ありがとうございます」

「兵士として訓練中だということだけど、計算もできるのかしら」

「自分は普通の買い物程度です」

「俺は割り算も出来ますよ」

「まあ素晴らしいわ。ちょっとリーン様の羽ペン貸して」

「は、はい」


 何かを書き足している。


「さて、では身辺検査をするわね」

「はい」


 二人の前にそれぞれの申込用紙を戻された。

 紙の上部の名前を書き込んだあたりにちいさな輪っかをおいてその上に水晶玉を乗せる。

 大きさは直径3センチぐらいだろうか。


「ここに左の指をのせて指はどれでもいいわ」

「はい」

 二人とも人差し指を乗せる。


「わあ!」

 すると二つの水晶が光り出す。

 アズールのは黄緑色に輝き、俺のは虹色に輝く。


 俺は初めてじゃないよ。150年ぶりぐらいだ。今生も相変わらずの虹色だ。

「まあ…これは…」

 セリシャの手元にもタブレットのような魔道具を持っているようだ。


「はい良いですよ、では戦闘訓練に行きますのでまずはアズール様からこちらへ…」

「はい」

「リーン様はちょっと確認したいことがあるのでお待ちくださいね」

「え?…はい」


 セリシャは手袋をしたままの手で二枚の用紙と二つの水晶玉を持つとアズールを伴って去っていった。 


 確認ってなんだろ…。

 もしかして身に覚えのない犯罪を侵して引っかかったとか?

 まさか。

 今日まで王子としての公務以外で外出したことはなかったよ。

 濡れ衣ですよ~きっと!


 ちょっと不安になるじゃん。


〔すげえなあのガキめちゃくちゃ光ってたぜ〕

〔二人ともだろ?あの服装は宮殿の兵士見習いだけどよ〕

〔騎士ならわかるけど兵士だぜ〕

〔落ちこぼれの貴族かもな〕

〔あんなガキがもう落ちこぼれとか〕

〔お坊ちゃまも可哀そうだな〕

〔がはははは〕


 傍らのバーで昼前なのに飲んだくれてる冒険者にひそひそされている。


 あいつらは夜の仕事明けなのかな?

 とっとと帰って寝ろよ。


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