エピローグ(プロローグ?)
夕暮れ時、ここはヨーロッパの様な石造りの街の中。
一人の短い金髪の成年が木箱に入った荷物を担ぎ、それをホロの掛かったトラックの荷台に運ぶ。
「おっちゃん、これで最後だ」
俺はそれが最後の木箱を荷台に積み込み、雇い主に声を掛ける。
「おう、助かったぜ。これが報酬だ。よくやってくれたからチョット水増ししといたぜ!」
「サンキューおっちゃん!」
俺は革の袋に入った銀貨を受け取ると、中身を確認してから懐にしまう。
「坊主、お前も早いとこ出発しろよ」
「分かってるよ。俺も明日にはここを発つ」
気前のいいハゲのおっちゃんに手を振りながら俺は街中に向う。
途中見つけたもう完全に今日で店仕舞いするという果物の露天でリンゴを一つだけ買い、街を見下ろせる丘へと向かう。
丘の中腹に一人で陣取り、先程買ったリンゴを仕舞ってあったポケットから取り出し、口にする。
甘酸っぱい甘味が口一杯に広がり、シャリシャリと心地の良いハーモニーが俺の腹を満たす。
「うん、うまい」
水平線の夕日が海の向こうに沈み、辺りにはすっかり夜の戸張が下りて来る。
丘の上から見える街の明かりは少なく寂しいが、それもまた星明りのようでいて美しい。
そして海に見える港より、今日何度目かの飛行艇が飛び立つ。
それは空を真っ直ぐに目指し、大気圏を抜けて、元月であったソロモンリングが作り出すゲートに飛び込み、消えていく。
「計画通りだな」
丘の反対側から吹き降ろしの風が俺の背を軽く叩き、通り過ぎてゆく。
俺の背後に現れる一つの影。
「お迎えに上がりました、アンブロシウス陛下」
それは赤い軍服を着、同じく赤色の小さな帽子を頭に冠った短い黒髪の妙齢の美女。
その目は闇の中でもはっきりと見えるぐらい赤く光り、整った顔立ちとも相まって相手に畏怖をも感じさせる。
だが臣下の礼を取って俺に向かって跪くその姿は板についており、彼女の軍人としての厳格さを物語る。
彼女の言葉と共に暴風が丘の上を吹き荒れ、短い草を横薙ぎにしながら昼間の様な眩しい明かりが俺のいる辺りを照らす。
そこに来てはっきりと耳を打つ暴音が巻き起こり、空より巨大な白い戦艦の様なものが現れ、俺の上空で泊まる。
芯だけになったリンゴを急いで無理矢理口の中に押し込み、俺は立ち上がる。
「迎えご苦労、シズク」
「はい。主様」
あれから5年。俺は20歳となっていた。
ドワーフ達の精密機械等の技術力向上、エルフ達の魔法によるエネルギー開発の凄まじい発展、獣人達によるその身体能力、特に反応速度や動体視力を生かし、知識欲の向上した彼らの手による綿密なるプログラム開発により、天地の星より宇宙にその足を伸ばし始めて3年。
この星より5000万キロ程の離れた所にある、知的生命体の住まない惑星ドミニク。
空気のある緑溢れる水の惑星を俺が発見し、移住し始めたのが1年と少し前。
屈強なる竜神族と、活動範囲や生活圏を広げるのが得意な人間族や翼人族、人魚族による開拓で、今ではこの星と同じような生活が送れるようになっている。
近くの平原に降り立った戦艦の前に、シズクの創ったゲートが開く。
ゲートから現れた俺を、銀の刺繍の施された黒い軍服を着、数十人の兵士達を後ろに従え、出迎えてくれる銀色の髪のエルフの美女。
「気を付け!陛下に向かい最上級の敬礼!」
足並みを揃え、見事な敬礼をする統制の取れた兵達を前に、俺は頷きながら彼女の前に立つ。
彼女はそうすると後ろの兵より一振りの剣を受け取り、厳かに捧げるように俺に差し出す。
「陛下、お預かりしていたものです」
「うむ。ご苦労であったなティア・ルーン・ミラーン」
俺はそれだけを言うと、夜桜をその手に受け取り、白い戦艦に向かって歩き始める。
戦艦の中に設けられた豪華な自室で、俺はメイド達より長く白い金の刺繍を施した豪華な軍服に着替えさせてもらい、メイド長を勤めるアリスの前に立つ。
「子供達はどうだ?」
「はい陛下、皆お元気にスクスクと成長されております。中にはお元気過ぎて目に余る子もいるくらいでございます」
「そうか、それは何より」
俺はそう言うと人払いを済ませ、アリスと二人だけになる。
見つめ合い、口付けをすると俺は彼女に素の口調で話しかける。
「いつも済まないなアリス。苦労をかける」
「いえ、ご主人様。アリスは今充実した日々を過ごしております。私は子を作れませんが、ご主人様とアーネット姫の間のお子は私の子でもありますからね。可愛くて仕方ありません」
「そうか、なら良いんだが…」
もう一度キスをしてから彼女を抱きしめ、俺はその部屋を後にする。
通路の先、白い両開きの扉が俺の前で兵達によって開かる。
扉の前にいた緑色に光る黒髪の美女、宰相のセーレが俺の来たことを中にいるものに告げる。
「皆の者、陛下が来られた!今より大事なお言葉を頂く!心して聴け!」
セーレはそこで振り向き、頭を垂れながら俺を前に誘う。
俺は白い鞘の刀、夜桜を片手に前に進む。
戦艦の中であるというのに、大理石の柱が立ち並び、部屋の中にいる者達を俺はぐるり見渡す。
俺が立つのは皆よりも一段高い位置にある王座の前。
部屋にいるのは俺の家臣達とその配下のもの達。
俺の家臣。
青の軍を率いるウォーレン・ガーランド将軍。
白の軍を率いるバズロー=緋幻将軍。
赤の軍を率いるアムリタ=ベイモルド将軍。
黒の軍を率いるヘルズ・ミッドガルドと言う名を捨て去り、本来の姿である王位を継承し、今は無き教国の教主となった事のあるアーサー・ヒューム将軍。
以前に俺が言った「これ以降、俺がヘルズに会うことは永遠に無かった」との通り、ヘルズとしてではなく、あれ以来赤の将軍アーサー・フュームとして俺の下で活躍している。
巨大な部屋の柱の向こうはモニターとなっており、この艦の外が見渡せるようになっている。
《戦艦「神無」》
何時の頃からこの地の地下に在ったのかは分からないが、俺の巨人アマテラスが眠っていた船。
高い位置より広大な景色を見渡し、俺は横にある豪華な王座に着く。
刀を床に音を鳴らし立て、両手を柄の上に乗せる。
俺は皆を今一度見渡し、話し始める。
「まもなく、予定道理であればこの星より全住民の移住が完了する。これにより、この星でどのような戦闘が行われても被害は考えなくても良い」
当然皆が知っている事実だが、俺は敢えて口にする。
皆が一様に頷く。
「悪魔達がこの地を滅ぼすべく大軍を率いて舞い戻る時も近い。
この長きに渡る日々を、我らはこの日のために準備してきた。
彼奴等に我らの力見せ付けようぞ!
今より我が旗艦に続く7万の艦隊全てに火を灯せ!
全ての武器、全ての魔法の封印を解除せよ!
総力戦である!故に我らに負けは無い!!」
ウォーレンが俺の言葉を受けて言う。
「我らの力は王のために!」
バズローが言う。
「我らの力は世界のために!」
アムリタが言う。
「統一王が進む道に栄光を!」
アーサが言う。
「陛下が進むべき未来に祝福を!」
全員が声を揃え、俺を称える。
「「「「アンブロシウス王万歳!」」」」「「「「統一王万歳」」」」
俺は微笑み立ち上がり、手を上げてそれを制す。
「全軍ソロモンの輪の外にて月より来る魔王軍を迎え撃つ!」
そして手を振り下ろし命じる。
「出陣だ!」
そうして旗艦《神無》は、発信する。
俺を待つ、7万の艦隊がいる大気圏外へと赴くのであった。
・・・・・・・・・
白い髪のアンブロシウス「という夢を見た」
セーレ「へ~そうなんですの」
姫 「なかなかに壮大な夢だな」
アニー「お兄ちゃんカッコイイ」
リーン「でも兄様、それあたってる部分あるよ?師匠、この間今度教主になるって言って たから」
アンブロシウス「へ?そうなの?ヘルズに会ったの?」
リーン「うん。なんか師匠自分から監獄に入ってたらしいけど、お父さんに連れ出されたんだって。それで教主になって人々を救うのだとか言って。だから忙しいから当分修行は自分でしなさいって。おかげで最近人生満喫できてますから!」
左手を腰にあて右拳を上に突き上げてポーズを取るリーン。
アンブロシウス『だめじゃん。こいつ遊んでばかりいると思ったら……』
ブネ 「話にブネが出てこないんですけど?」
セレスティナとエターニャは、ミーアの子供も用品の買い物に付き合っていていない。
ティアも姫3人では何か問題があっては不味いと着いていってしまった。
アムリタは人の話も聞かずにゲームに夢中だ。
相手をさせられているシズクも対戦ゲームで負けっぱなしで、ムキになっていて聞いてなどいない。
ああ、忘れていたがアソロは宮廷魔術師の仕事と、自分の家業で殆どこの魔王城には帰ってこれていない。
アリス「それよりもご主人様」
アンブロシウス「なんだ?」
アリス「お話しに出てきたその宇宙戦艦ヤ○トって「神無だよ!どんな間違い方するの!?」」
アリス「そう、そのカムイって外に泊まっている船の事ですか?」
ここは魔王城、アンブロシウス達は結婚して全員で魔王城に住んでいる。食事や掃除等はもう悪魔達に慣れてきた実家のメイド達が中心にこの城に来て世話をしてくれている。
その為に実家のメイドの数は3倍に増え、元の離れの屋敷はメイド達の家となっているくらいだ。
魔王城の側にある元々巨人の待機する発着場のような白い大理石の空港のような場所には、渓谷より現れた白く輝く戦艦が浮かび、俺やセーレ達の巨人と一緒並んで停泊している。
アンブロシウス「ああ、あれね。確かにまだ名前が決まっていなかったからもう《神無》でいいや」
アリス「ご主人様。そんなに王様になりたいのですか?」
アンブロシウス「なんでそうなる?」
アリス「だって正夢にしようとしているみたいなんですもの」
アンブロシウス「そうか?そうでもないんだが……。まあ兎に角、あの船の名前は《神無》に決定ね」
アリス「はいはい」
セレスティナ、ミーア「「「ただいま~」」」
そうこうしている内にミーア達が帰ってくる。
アンブロシウス「あれ?ティアとエターニャは?」
セレスティナ「屋敷の入り口までは一緒だったんですけれど、彼女達何か用事があるからと、自分達の故郷に行くと言っていましたわ」
アンブロシウス「そうか」
ミーア「それよりも見てください、あなた。この服とても安くて、とても可愛らしかったんです」
そう言って可愛いピンク色のフリルの女の子のお洋服を荷物から取り出して見せてくれる。
アンブロシウス『安いって一応元姫様なのに……アソロの影響か?』
ブネ 「可愛い~、ブネも今度こんなの買おうかな」
アンブロシウス「おい、カイン(注1)は男だぞ?それは無いだろう」
ミーア「でも義母も喜んでくれていましたよ?」
アンブロシウス「一緒に行ったのか……またあの人は……。頼むから息子には変な格好はさせないでくれよ。それ、結構後でトラウマになるからな」
ミーア「は~い」
アンブロシウス『多分そうはいっても着せるんだろうな~。カインは俺に似て女顔だから……』
アンブロシウスは大勢の女性に囲まれ生活をすることになっても、結局あんまり前と変っていない。
彼自身元々女性に囲まれた生活ばかりをしていた記憶しかないからだが。
困ったことといえば人の数が多くなり過ぎて、素人の作者が書き分けが難しくてできなくなり、台本書きになった事くらいか……。
「アンブロシウス。ちょっといいか?」
姫が俺を招き、二人だけで話があるという。
俺達二人は部屋から出て、魔王城の大きなテラスに出る。
魔王城から発着場を含むこの辺り一体はフィールドで包まれており、空気も確保されている。
そこからは天地の星が丁度一望でき、ソロモンの輪が星に掛かりまるで青く輝く土星のように見える。
「アーネット、どうしたんだ?」
「それが、その……」
いつもの姫らしくない歯切れの悪い態度を取る。
「できたみたいなんだ…」
「できた?何が?」
自分で言ってから気が付く。
「出来たって……まさか……」
「お前との子供だ」
俺はどういった態度を取ればいいか頭の中がパニックになる。
「喜んでくれないのか?」
「とんでもない!嬉しいさ!!いや、ほら俺ってカインはいるけど突然に子供として連れてこられたから実感が無かったというか、こう言うシュチエーションを経験したことが無いって言うか。兎に角めでたい!いや嬉しいよ!」
俺は壊れ物を扱うように姫を優しく抱きしめる。
「そうか……俺の子供か……」
俺の体が喜びで震える。
「まさか、泣いているのか?」
それを姫が勘違いして俺を気遣う。
「いや、嬉しくてな。そうか~姫と俺の子か~」
俺は嬉しくて姫を赤ちゃん抱っこして担ぎ上げてしまう。
「こら!止めないかアンブロシウス!赤ちゃんがいるのだぞ!」
俺は大事な姫と子供をソッと下ろす。
「さて、名前は何にするかな~」
「今から名前か?男か女かもまだ分からないのだぞ?」
「そういや、そうだな。まあなんでもいい。兎に角無事に元気な赤ちゃんを産んでくれ」
「分かっているさ。その為に私は暫く実家に帰るが良いか?」
「ああ、もちろん。俺もできるだけそっちに顔を出しに行くよ」
俺と姫は見つめ合いキスをする。
そして俺は誓う。
今まではこの星の人々の為に戦って来た。
これからは俺の大切な家族を護る為に戦おうと。
そう俺はファミリアーマスター。
ありふれた日常を護る為に戦う男なのだから。
(注1)
アンブロシウスとミーアの息子の名前です。
familiar:ありふれた、親しい
family :家族




