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戦いの行方

アリスVSアムネジア


「いっちば~ん」

 アムネジアは前に出てアリスもそれに習って前に出る。

「さっきはどうも調子が出なかったけど、メイドごときに遅れは取らないぜ!」

 アリスの耳がピクピクする。

「メイドごとき?」

 アリスの怒りに触れたらしい。

「掃除一つ満足に出来ないあなたが、メイドを馬鹿にするのですか?

 いいでしょう、かかってきなさい」

「ハッ、掃除と戦闘は関係ないね!一思いに殺してやるよ」

 斬りかかるアムネジア。


キン


 アムネジアの抜刀術はいつの間にか抜いた夜桜でアリスにあっさりと弾かれてしまう。

「何!?」

「何ですか今の一撃は、そんなものじゃ蝿一つ斬れませんよ」

「ムッ!」


チチチチ

キキキキン


 放つ抜刀術のことごとくが、抜き身の刀を持つアリスに防がれる。

 アリスは溜め息を一つつき、アムネジアをキッと睨みつけて怒りの声を露にする。


「なっていない!教えたでしょう!

 姿勢が悪い!正中線をずらさない!頭を揺らさない!

 淑女の立ち方、歩き方を教えたでしょう!

 お腹の中心で天と地を結ぶ様に立ち、頭の上の本を落とさないように足運びは常にすり足!

 1対1の敵は自分に対して常に完全な直線状に捉えなさい!

 それに剣は抜くのではありません!収めるものです!!

 斬る事を意識しない!

 意識するよりも早くもう斬れているものなのですから」

「うるさ~~~い!

 なんだよお前!戦う気があるのかよ!」

 アリスの戦い方の指導に切れて怒るアムネジアの赤い髪の毛が逆立って伸び、まるで生き物のようにうごめくそれが、アリスに襲い掛かる。


「仕方ないですね。お手本です」


チチチチ


 アリスに襲い掛かったアムネジアの髪の毛の全てが鳥の鳴く音と共に落ちる。

 アムネジアはゾッとして青ざめる。

『見えなかった……』

 シズクのように手で視界を覆われたわけではないのに、目の前で剣を振るうものの剣どころか斬られたことすら分からなかった。


 それは側から見ている俺達にも言えた。

「なんか……強すぎるな」

『これが肉の重みから開放された魂だけになった姫の強さ……』

 前に戦って気絶させたことはあったが、もしかしたらあれも手加減されていたのかもしれない。

 本気で刀を振るわれれば、魔法でもないと太刀打ちできないかもしれないな。


「セーレ、降参させないか?戦いになってないぞ?」

 俺は横に立つセーレに提案する。


「シズク」

「はい」

「アムのあの剣技、お前の一族のものと違いますけど、あの子は生前剣技を習得していなかったの?」

「申し訳ありません。何分甘やかしていたといえばそれまでなのですが、魔力は私を遥かに越えるものを持つのですが、剣の練習などはすぐに…その、さぼってばかりで……それでも一応型は身に着けていたと思うのですが……」

「そうね、まあ仮の身体では体の記憶に引っ張られて、自分の型を忘れているのかもしれませんね」

 セーレは1歩前に出る。

「アムネジア。もういいわ、下がりなさい」

 俺の提案は受け入れられたらしい。


「いやだ!」

 しかし、アムネジアは了承しなかった。

「下がりなさい」

「い・や・だ!」

「そう、命令が聞けないというの?」

 セーレは上目遣いにアムネジアを睨みつける。

「うっ、脅したって無駄だぞ!あたしは戦いたいんだよ!」

 アムネジアは一瞬怯えながらも抵抗する。

「そう、なら好きにすればいいわ」

 セーレはそう言うと俺の方を振り向く。

「ニー」

「なんだ?」

「1戦目は私達の負けでいいわ」

 セーレはまだ戦っているアムネジアを無視して俺に負けを宣言する。

「まだ、戦わせるんだろう?いいのか?」

「命令を無視して戦うと言うなら、これはもう単なる個人の死闘ですからね。本来の勝敗で言えば負けでいいわ。ほおっておきましょう」

「分かった。まあいくらでもあるから場所を変えようか」


 俺達はアリスとアムネジアの戦いの場所から2km程離れた位置に移動し、戦いを続けることにする。


リーンVSブネ


 リーンとブネが前に出る。

 リーンは自分の相手の可愛い服を着た少女を見て困惑する。

『普通の子供にしか見えないのに、こんなに小さい女の子までが悪魔なのか……』

「今ブネのことを可愛いと思ったでしょう」

 ブネは人形を腕に抱きながらリーンに笑いかける。

「思ってない」

「嘘!」

「嘘じゃない」

「嘘付きは悪魔の始まりなのよ?」

「どんなことわざよ!それを言うなら泥棒でしょ!」

「じゃあ泥棒なの?」

「違う!もう始めましょう!」

「強情なのね。ブネのこと可愛いって言わせて上げるわ」

「絶対に言いません!」

「本当、人間って愚かよね。現実を見つめないで、夢ばっかり見て」

「あんたにそんな事言われたくないわよ!夢見てるのはあなたでしょ!」

「ならブネが悪夢を見せてあ・げ・る」


 そういってブネが手の平を閉じて開く。

 手の平一杯に色とりどりのビー玉が現れ、ブネは空中に投げる。

「おいで、

人形セレナーデ夢幻奏夜オンリーヌ】」


 ビー玉から何匹もの熊や兎等大きな可愛い動物のぬいぐるみが現れる。

「へえ、確かに夢のように可愛い人形・・ね」

 しかしその人形達は一様に地面に降り立つと、その口からゾロリと生えた牙をむき出してリーンに襲い掛かる。

「前言撤回!可愛くな~い!」

 リーンは神槍ロンギヌスを取り出すと目の前に迫る熊の人形を突き刺す。

 だが槍は熊を刺し貫いたものの、痛がるそぶりも無く、腹を刺されたまま熊のぬいぐるみはリーンのその巨大な爪の生えた前足を振り下ろす。

 しかし、その一撃はリーンには届かず、見えない何か壁にぶち当たったように空中で止まる。


 ズン


 どれだけの力が篭った一撃なのか、重い音があたりに響く。


「う~ん、ただ刺しただけじゃダメか…。なら」

 リーンは熊の一撃を気にした風も無く、横から襲い掛かる兎と狸の人形の一撃も躱しつつ、バック転をし、身を捻りながら後退すると槍を縦にくるりと回す。

 神槍ロンギヌスは先端の別れた二股がまるで螺旋を描く様に絡み合い、1本のドリルの様な先端になる。


――――――――――――

 離れた場所で戦闘が始まると、何故かそわそわし出すアムネジア。

 アリスはそれを見てアムネジアに尋ねる。

「観に行きたいのですか?」

「バッ、馬鹿、そんなことないよ!」

 そういいながらもチラチラ向こうの方を見る。

 アリスは呆れながら、譲歩案を出す。

「先に観て、後で続きをしますか?」

「えっ!?いいのか!?」

「…どうぞ」

「すまないな!ちょっと観てくる!」

『本当、バトル漫画が好きなだけあって、ああいう戦闘が見たくて仕方ないのですね。

 まあ、各言う私も血が騒ぐのを隠すためと、ずっと迷宮立ちをしてましたからね。

 結局、私も見たいんですよね。(注1)』

 そう言ってそそくさとアムネジアの後を追って見に行くアリスであった。


 槍を回転させながら襲い繰るヌイグルミ達を突きまくる。

 槍に貫かれたヌイグルミ達は、先程のように貫かれるのではなく、動かなくなるまでドリルの様な槍に体に巨大な穴を開けられていく。

「槍1本で頑張るわね。ブネ驚いたわ」

「お褒め頂き、ありがとう。っと」

 四方八方に突きを出すので、邪魔になるのか先程のような身体を守るような障壁を使わず、横合いから来た角の生えたカエルのヌイグルミの一撃を躱しながら礼を言うリーン。

「じゃあ、これはどうかしら?」

クリスタルバインド

 ブネの体から無数の色とりどりのガラスの蝶が円を描きながら飛び立ち、リーンに襲い掛かる。

 それはあらゆるものを透過し、体の中を通られたヌイグルミ達が次々とガラスの彫像になっていく。

『これは!?』



「ところでニー、本当のところ何が狙いなの?」

「何って?」

とぼけないで答えなさい。本当のところこんな戦いに意味は無いわ。何か考えがあってしている事なのでしょう?あなたは、そういう人」

 俺の口元に笑いが浮かぶ。

「まあな。しかし、半分だな。

 この戦いにも意味はある。宇宙には精霊がいないからな。

 精霊がいない場での戦いでどんな戦い方ができるのか確認したいというのが一つ」

「もう一つは?」

「時間稼ぎ、かな」

 俺は正直に答える。

「時間?まさか!?ブネそこまでよ!戻るわよ!」


 リーンに襲い掛かろうとしていたガラスの蝶が消える。

「戻るってどこに?」

「いいから巨人に乗って!時間が無いわ!」

 焦るセーレ。

 ここで過ごした時間が元の世界と同じならまだギリギリ間に合うかもしれない。

 正午までに魔法陣を発動しないとゲートが開けない。

「おいおい、俺との戦いもまだだろう?」

「黙りなさい!卑怯者!何が時間が止まった世界だ!」

『迂闊だった』

 セーレは後悔する。

 敵の言う事を全て鵜呑みにしてしまった。

 ここでの戦いが時間稼ぎなら外の世界では既に正午、つまり月が真上に来てしまっているかもしれない。

 早く戻って魔法陣を完成させなければ。

 もう、聖都を破壊などしている場合ではない。

「私ともあろうものが、人が創る異世界の空気に飲まれ、信じてしまった。時間の止まった世界等と…なんと迂闊な」

 巨人に転移して慌てて元の世界へのゲートを開こうとする。

 しかし、セーレの巨人フーリーンの前にアンブロシウスが立ちはだかる。

「待てって、そう慌てるなよ。どうせ今から戻ったところで間に合わないさ。次の満月までお前達はゲートを開けない」

「おのれ!」

 セーレはフーリーンの手に持つ錫杖を掲げる。


「おにいちゃ~~~~~ん!!」

 そこへ突然に転移してアニーが現れ、アンブロシウスに抱きつく。

 半なき状態のアニーは何かに怯えているようだ。

「言われたようにおびき出したけど怖かったよ~~~」

「よしよし」

 俺は抱擁しながら頭を撫でてやる。

「アニー……」

「だから待てって言ったろう。話はそれだけじゃないんだよ。

 来るぞ!リーン、お前も巨人に乗れ!」

『何が来るというの?』

 錫杖を下ろし、セーレは悩む。

 リーンはアンブロシウスの言うとおり巨人に乗りながら尋ねる。


「兄様!何が来るの!」

 その時、凄まじいガラスを引き裂くような音と共に俺の創った空間の空が割れる。

 次元を引き裂きながらそこから”あるもの”が現れる。

 それは巨大な、巨人の5倍はありそうな頭の無い翼を生やした白い肉の巨人。

「兄様!あれは何!?」


「俺達の本当の敵だ!!」


(注1)

 いつも迷宮について来ないのはこういう訳でした。

 ドワーフの地下帝国は本当の意味での迷宮ではないので同行してましたがね。


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