真都パンドラにて
-獣人族の真都パンドラ-
ここは秘境南よりの渓谷地帯奥地。
渓谷地帯を抜けると切り立った崖に囲まれた盆地がある。盆地の直径は約5km、囲む崖の高さは200m程もある。その盆地には幾つかの川に連なる滝が流れ落ち、底にはジャングルのような木が生い茂っている。
そのジャングルの中にはブロック造りの遺跡のような建築物が見える。
建築物の中でも最大のものが盆地の丁度中央に位置する城のような建物。
200mの崖の高さには及ばないものの、ほぼ同じ高さ近くまである。
垂直に高く伸びるその建造物はささくれた塔のようにも見てとれた。
その塔から四方に伸びる長い滑走路のようなのようなバルコニーの一つに今、1匹のグリフォンが舞い降り、その背よりプラチナブロンドに白いコートの美しい少女が降り立つ。
「お帰りなさいませ、リーン様」
執事服を着た黒髪に狼の耳を持つ獣人シン・シスが出迎える。
褐色の肌に整った顔立ちのかなりの色男である。
「皆は?」
「北のノワール様と西のヴァイス様、南のルージュ様は既にお帰りになっておりますが、東のアスール 様は聖都で合流するとの事です」
「解った」
少女は足早に通路を歩いていく。
「おかえりなさいませ」「おかえりなさいませ、リーン様」
通路の途中で出会う執事やメイド服の獣人達、ローブを羽織ったエルフやマントを羽織ったドワーフ達がリーンの姿を見ると皆頭を垂れて挨拶をする。
私の名はリーン、リーン・マキシス(9歳)。
父の名はマダル・マキシス、ユーロン王国の三大貴族の一を担うお偉い御方だ。
母の名はメイリーン・マキシス、黄金の歌姫と呼ばれ国民から愛された御方だ。
私は母の血を濃く受け継いでいるおかげか、容姿もそうだが歌を歌うのが得意だ。
そこに持って生まれた巨大な魔力を使い、喉を強化して歌えば、セイレーンもかくやと言うぐらい人の心を魅了する歌が詠えるらしい。
らしいと言うのは歌っている本人では解らないからだが。
そういえば最近の出来事で嬉しかった事と言えば、私は今かなりの成長期なのか、この1年と数ヶ月で背が15cmも伸びて、今では158cmになったことかも知れない。
と、私のことはいい。
この真都パンドラは本来獣人達の隠れ里のようなものだ。
何故ここにエルフやドワーフがいるかと言うと、今回の作戦にはどうしても彼らの助けがいるので、私が助力を願い出て彼らの里から精鋭達に来てもらっているのだ。
両開きの白い扉が開き、中にいた者達が振り向く。
「皆、待たせたな」
少女は部屋に入るとツカツカと3人の前を横切り、奥にある王座のような豪華な椅子に座る。
スラリと長い足を組み、肘掛に片肘をつき顎を乗せる。
当たり前のように取る仕草からは、その幼い身に確かな風格を感じ取る事ができる。
「ノワール、北の状況は?」
黒と呼ばれたのは黒いドレスを着、長い黒髪にクロネコミミを生やした妙齢の美女。
彼女の体の回りには魔具なのか、金色の輪のようなものが体を覆う様にいくつも浮かんでいる。
腰には金色に輝く細身の剣を帯びている。
「北の主要都市5つについては準備整いましてございます」
少女は頷く。
「ルージュ、西の状況は?」
紅と呼ばれたのはメタルレッドの全身鎧を纏った女性。
1本の角を生やした鬼か悪魔とも見える異形のフルフェイスマスクの為、顔は見えない。
しかし派手なくらい豊満な女性特有の胸のラインを描いた全身鎧の為、女性だと一目でわかる。
腰には黒鞘の刀と紫の鞘の刀を2本差している。
ルージュの側にシン・シスが立ち、彼女の代わりに報告する。
「南の主要都市の準備は整っております」
ルージュは交渉事が苦手な為、ここより一番近い都市群を管轄にして、荒事はルージュが、交渉ごとにはシン・シスが行なっていた。
「ヴァイス、西の状況は?」
白と呼ばれたのは真っ白なドレスに身を包み、透き通るような肌の美女。
彼女は長く白い髪に狼の耳を生やしている。
彼女の周りにはノワールと対照的に銀色の輪のようなものが体を覆うようにいくつも浮かんでいる。
手には先端が花のようになった銀色の錫杖。
「滞りなく……」
彼女はシン・シスの双子の妹であり、兄弟そろっての美形である。
リーンが立ち上がる。
「この半年、皆よくやってくれた。
そしていよいよ1週間後に待ちに待った聖誕祭が開かれる。
失敗は許されない皆心して掛かれ!!」
「「「「ハッ」」」」
4人は片膝を着き、頭を垂れて臣下の礼を取る。
「目立たぬよう夕刻よりここを発つゆえ、各自それまでは休息を取っておけ」
そう言い残すとリーンは自室に向かって去っていった。
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残された4人のいる部屋から声が聞こえる。
H「なあ、少し効きすぎなんじゃないか?」
A「いえいえ、あんなものでしょ?ご主人様はあれくらい強力にかけなきゃすぐに解けちゃうしね」
S「もうじき作戦が開始されますけど、あのままでいくので?」
R「確かに、兄さまの仰るとおり少し危険なのでは?」
A「なんとかなるなるニャハハハハハ」
H「それにしてもお前の暗示よく半年も続くな」
A「そんなに持たないよ?」
H「掛けなおしてる姿を見たことが無いが?」
A「ソリは秘密ですゼ、シッシッシッ」
R「私知ってますよ?夜な夜なお部屋に忍び込んでるでしょう?」
H「おまえ!?」
A「ニャハハハハばれちゃいました?今度一緒にどうですか?可愛いですよ~。あ~んな姿やこ~んな 姿も見れますし、最近大きくなられましたしね~イ・ロ・イ・ロと。そして暗示を掛ければ××を××し ても記憶にはムフフフフ」
H「そ、それは本当か!?」
R「え?本当?じゃあ、私も今度……」
S「お待ちなさい。あなた達は、女性というものはもう少し御淑やかにですね……」
…………恐ろしいサバトのような会話が交わされていました。




