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記録の水晶

 この物語は俺の一人称視点でしか基本語られない。

 だから俺がファミリアー化していない人の心の中など解るわけがなく……彼女、そうアソロが何を考え、何故俺に好意を持ったような行動をするのか、俺が知る由も無かった。

 そう今この時、俺の横で自分で語るアソロの話を聞くまでは……。


「わたしってほら、「お金持ちのお嬢様」で~「魔法の才能も天才的」で~「美少女」で~「祖父や両親から甘やかされて育った」じゃないですか~」

『自分で天才や美少女や甘やかされてたって言うな。

 あ、最後のは自分で認識できたらいいのか』

「それで~先生に会って~、私気がついたんですよね。先生の冷たい視線に射抜かれるたびに、私のピーがピーしてppppppしていたってことに」

『おい、やめろ。お前が何に目覚めようと知ったことではないがR-15をR-18に引き上げる気か。

 ようは完膚なきまでに鼻っ柱を叩き折られ、それまでの悪印象が好印象に逆転したというわけだな』

 そんな事を知らなかった俺はここに誘われたとき、復讐でもされているのかと勘違いしていた。

 俺は一安心(?)しながらアソロにいざなわれて階段を下りる。


 俺達はフロから出て晩御飯を食べてからアソロに誘われてホテルの地下に来ていた。

 正確にはホテルの地下に続く鍾乳洞の階段を下りている。

 青白く光る鍾乳洞は灯りを持たなくても足元が確認できる程は明るい。

 剥き出しの岩が30m程の円錐のように地下に伸び、その真ん中に螺旋階段を巻きつかせた岩の柱が建っている。

 俺達はその階段を地下に地下にと向かって進んでいた。

 アソロは俺だけを誘いたかったのだろうが、後ろには姫、アリス、ティアさんが着いてきている。


「で、この下に何があるんだ?」

「それは着いてからのお楽しみです」

 アソロは俺の腕に自分の腕を絡ませながら微笑む。

 歩きにくいだろうに。

「大きな精霊の力を感じます」

 後ろにいるティアさんが何かを感じ取ったネタばらししてしまう。

「なんで言っちゃうんですか!?エルフだからって空気読んでよね!」

『お前が言うな……』


 俺達は底に着く。

 そこには神秘的な空気が満ちており、階段から見て奥のほうに石畳が敷き詰められ、そこには水の満たされた大きな泉があった。

「ここは?神殿?」

 巫女が清めの儀式をするような場所にも見える。

 その泉の上をいくつもの光りの珠が踊りを踊るかのように舞っている。

「光の精霊達ですね」

 ティアさんが少し前に進み、手を差し伸べると光の精霊達がティアさんの周りを楽しそうに回る。

 人間界(地上)でここまでハッキリと精霊が姿を現すことは少ない。

 アソロが言うには、俺に精霊都市に連れて行ってもらい精霊達を目にするまで、この精霊達をゴーストだと思ってここは進入禁止になっていたらしい。


「なんでホテルの地下に?」

 俺が聞くと、

「いえ、その~……」

 アソロがいうにはここには崩れた神殿が在ったが、気にせずそれを潰してホテルを立て、地下にあったこの施設だけは潰せず残ったらしい。

『お前の一族って、色々怖いわ』


「先生にここを見せたくって」

 アソロは微笑む。

「ああ、綺麗だよな」

 神秘的な場所だ。竜神族や人魚族の神殿というわけではなさそうだが、一体ここはなんだったんだろう。

「そんな、綺麗だなんて~」

 何を間違いしたのかアソロがクネクネと自分を抱きしめて悶えている。


 俺は無視して泉の方に近づく。

「あ~ん~ぶ~ろ~し~う~す~ど~の~~」

「どわあああああ」

 突然泉が盛り上がり、そこから現れたのは、

「お化け!?」

「儂じゃよ」

 左まぶたの上がソフトボールのように膨れ上がり、お岩さんのような顔になっているが……どっかで見たような……。

「なんだ、海王のじいさんか。驚かすなよ」

『どこから出てくるんだ、俺はまだボケキャラなんぞ呼んでないぞ!ていうかこの泉、海につながってるのか……』

 ここで俺は海王のじいさんの事をすっかり忘れてたことに気がつく。


「あ~昼間は災難だったよな~。つい手が滑って」

 俺が謝ろうとすると、

「いやいや、いいのじゃ。怒ってはおらぬ。儂はどちらかといえば、ビリビリってきてゾクゾクってして最後に可愛い女子おなごに殴られ。チョットいや、かなり気持ち……ゴホン」

『アソロの次はあんたか!よっぽどR-18にしたいらしいな』

 俺の後ろの女性達に気がついたのか途中で言葉を濁す海王。

『もう遅いがな』

 俺の後ろから氷河期のような冷気を感じる。


「で?結局なんの用だったんだよ」

「おお、忘れとったわ」

 じいさんが俺の側に来て耳打ちし始める。

「実はの……」

 どうやら海王のじいさんは空を泳げるのをいいことに俺が話したエルフの精霊都市へ行ったらしい。

『無茶をする。あそこって確か地上から2万フィートぐらいあったような……』

 そこでエルフの王と対面し話をしてる内に「れいのもの」の話になり、どうやら海王もそれが欲しいという。


「いや、まあ別にかまわないけど……」

 俺は上から下に視線を動かす。

 半身が魚……。

『どうやって?』

 俺は首をかしげる。

「そういえば「れいのもの」て何ですか?先生?」

 後ろの女性達も聞いていたみたいでアソロがエルフの精霊都市でも聞いていた「れいのもの」に食いついてくる。

 姫もチョット気になるようだ。

 ただティアとアリスは……言わないでおこう、どうせこの後分かるし……。

「ああ、ええっと「れいのもの」ってのは簡単に言うと」

 俺は言うかどうか躊躇うが、中身は兎も角それ自体の説明はする。


-記録の水晶-

 御伽噺で魔法使いといえば魔女。

 魔女が必ずしもと言っていい程持っているアイテムに遠見の水晶や鏡等が出てくる。

 誰が映像を送信しているのかと疑いたくなるぐらいナイスなカメラアングルで、見たいところを術者の思うように写してくれるという便利アイテム。

 それがいっぱいあれば俺のファミリアー用無し……いやいやそれと組み合わせればファミリアーで見れないところも確認できるし俺の情報網は完璧になる。

 そう考えて探してみたが、この世界にはそんな便利アイテムありませんでした。

 水晶占いとか、水晶の球自体はあるのにな~。

 そこで俺はハタと思いついた。

 遠くの景色を自由に見ることは出来ないが、俺の頭の中にある魔力で保管されてある記録データを魔力付与を施すことによって水晶に移せないかと……(一時的にではなく魔道具を作る手順でファミリアーの様に道具に永久的に(解除されるまで)付与する)。

 出来ました。解除されるまでは遠見の水晶の様に触れるだけで俺が移した映像が誰にでも見れるようになりました。

 再生専用ハードディスク内臓型モニター水晶とでも言うべきものか。

 長いので略して「記録の水晶」にする。


「で、まあ「れいのもの」っていうのはその記録の水晶のことだよ」

「ほう、便利なものだな。今度私の戦いぶりを記録して見せてくれないか?最近少し型が崩れていないか人の目から確認できるのは嬉しい」

 姫が顎に手を当て、感心して言う。

『無理です。姫の剣技は普通に早すぎて目で追えませんから……』


「ところで、先生その記録には何が入ってるんですか?」

『ギクッ!?』

 一番触れてはならないところにダイレクト質問が来た。


「え~と、そのまあ、子供には早いって言うか~~」

 俺はしどろもどろになりながら海王じいさんの方へとあとずさる。

 姫とアソロの女の勘が発動する。


 俺の脳パソの七万時間の映像データの中にはチョット人には見みせられないものがある。

 わざと撮ったんじゃないよ!ネズミが悪いんだネズミが!

 成人男性であれば自分が死んだときにはパソコンの中から身内に見られないように消して欲しいと、それを消す商売人がいる程のあれだ。

 エルフの精霊都市では語らなかったが、とういか感動シーンだったから語れなかったが、あの最後のエルフの王との会話のとき、側にいたティアさんの目が「この助平スケベイ野郎共がっ」という目をしていたのが俺の脳に残っている。


「すまないの~アンブロシウス殿。今度海底都市に来たときにはうちの姫を交えて、お主をあ~んなことやこ~んなことで歓迎するからの~ウッシッシ(死語?)」

『ヒ~~~!?空気読めよ、じじい!!!』

 俺は真っ青になり後ずさるが、こんな地下の行き止まりの洞窟では逃げ場がない。あるとすればどれだけ潜れば海に出られるか解らない泉の水路だけ……。

 女性達から、まるで汚物を見るかのようにさげずんだ目で見られる。

 イタイイタイ……でもチョット気持ち良いかも……。


「どうやら少し教育が必要なようだな。存在自体がセクハラなこやつ等には……」

 姫が黒雪をスラリと抜く。

「そのようですわね。お姉様。お手伝いさせていただきますわ」

 アソロが魔力をみなぎらせ始める。

『お姉さまって何!?アソロと姫っていつからそんな仲になったの!?』

 始めから知っていたアリスとティアさんは完全に知らんふり、むしろ俺をかばうというより姫とアソロの2人を応援している。


「じゃあ儂そゆことで……まだ傷も癒えておらんし」

 海王のじいさんが残った右目で器用にウインクして一人泉に消えていく。

「おい!?待てよ!この状況で俺一人置いていくなよ!」

 振り向くと俺の背後で仁王立ちする姫と目が会う。

「お前の頭の中の記憶を全て消し去ってくれる!!」

「黒雪で斬られたら冗談になってませ~~~~んっ!?」

 雷や炎が飛び交い、姫の乱舞が咲き乱れる。

 光の精霊達の灯火の中、俺の命の灯火が消えようとしていた。



-数日後-

 俺は一人で小船に乗って沖合いに来ていた。

 理由はここにバカンスに来たついでに、前に小刀を拝借してきた「東の海底洞窟の竜の巣」、つまり海竜の巣にいくことにしたのだ。

 あの小刀は海竜達が溜め込んだ宝の中の一つだが、今から取りに行くのは元々俺の武器で、海竜の巣に封印したものの一つだ。

 わざわざ海竜の巣に封印したのは自分の家の宝物庫より海底にある海竜の群の巣の方が間違いなく安全だからだ。

 下手に俺以外のものが触れると危険なものも多いしね。


 俺が乗る小舟の周りに、海竜達が現れる。

 俺のファミリアー達だから俺に襲い掛かってくることは無い。


 俺は海に向けて手を伸ばし、

ヴァーミリオン!!」

 と叫ぶ。

 次の瞬間、海が盛り上がりメタリックオレンジに輝く1本の長剣が現れ、俺の手に収まる。


 前回俺はドワーフの地下帝国で小刀(一応魔剣)を失った。

 だから俺は仕方なく封じてあるいくつかの俺の武器の内から魔剣「ヴァーミリオン」を持って帰ることにする。


 剣の刃に漢字で「暁」と掘ってある上、刃から柄まで全てがメタリックオレンジなのでその名前で呼んでいるだけで、別に俺が名前をつけたわけではない。書いてあるからそう呼んでいるだけだ。

 例え呼び方が「アカツキ」であろうと「ヴァーミリオン」であろうと、只単に「来い」と心の中で命じるだけでも来るのだが、俺は普段こいつのことを「ヴァーミリオン」と呼んでいる。

 なんとなくだからね!決して厨二病じゃないんだからね!


 こいつの特殊能力は投げても目に見える範囲程度(目に見えている必要は無い)、つまりこの下の海底洞窟からぐらいであれば飛んで俺の手に戻ってくるというものだ。


 俺は2年程前から武器を基本持ち歩かない。

 あの小刀で十分だったからというのもあるが、2年前までは普通に魔剣等の武器を持って世界中を飛び回っていた。

 男の子だからね、武器自体が嫌いなわけじゃない。


 何故封印したかって?

 姫だよ。

 あの姫がいる横で下手に強力な剣を持って俺が無事でいられるとでも?

「稽古だ!」等といわれて迷宮へ行く変わりに俺をストレス発散に思われ、つき合わされ始めたら命がいくつあっても足りない。

 だから全てここに封印して武器とは思えない小刀を持ち歩いていたわけだ。

 流石にロックザウルスの腹の中にいってしまった剣の代わりがいる。小刀はもうないから仕方なくこの剣にした訳だ。

 20本近く在る魔剣等の中からこの剣を選んだ理由はこの剣の形状にある。

 この剣は使い方が特殊で、形状は小ぶりの両手剣でクレイモアに近いが、つばと言えるものがこいつには殆ど無い。端から見たら1本のでかい針のようにも見える。

 だから斬り合いにはあまり向かない(下手をすると受けた相手の剣の刃で指が飛ぶからね)ので姫に絡まれることもないだろうと、これを選んだのだ。

 決して他の武器を潜って取りに行くのが面倒だった……からではないぞ。うん。


 俺は鞘が無いので厚めの布で包み皮紐でくくり、剣と一緒に船の上に寝転ぶ。


「……空が青いね~~」


 俺は波に揺れる小船の上で伸びをし、久々に一人になってまどろむのであった。


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