砂浜でのバトル
砂浜から少し離れたところには、元の世界のハワイのように高層ビルのような石造りの宿が立ち並び、南国のヤシの木や葉っぱで作ったような建物、風通しのよさそうなバンガローもその周りに数多く並んでいる。
そんな背景をバックに『FIGHT』の文字が見えるようだ。
どうしてこうなった……。
「さて、第2回『俺達やばいよどうしよう』会議~」
「わ~わ~~」
アリスがあおる。
「さて今回の議題は、やっと海にたどり着いたのに、イチャラブイベント始める前から殺し合いが始まりそうな件についてです。解説は俺、アンブロシウスがさせていただきます」
「いいぞいいぞ~」
アリスがあおる。
「なんか前回と違ってバックがアリス一人だと寂しいね」
「たしかにね~。ご主人様~ボケ姫を中から分離して追い出してよ~私が縄で捕まえるからさ」
「俺のファミリアーは、そんなとんち問題のようなことできません」
「ぶ~ぶ~つまんな~~~い」
さて、話は5分程前に遡る。
おかしい俺は美女&美少女を連れて楽しく遊ぶはずだった。
それが何故今このような状況になっている?
夏の日差しが照りつく砂浜で、今三人の美人がにらみ合っている。
それは、姫とエターニャとアソロ。
事の起こりはアソロの一言から始まった……。
再び偶然出会った俺達とアソロは仕方なく一緒に行動を共にすることにしたのだが、このメンバーで何をしようか考える。
海での遊びとなると考えられるのは、一人で泳ぐ、一人で砂の城を作る、一人で……いや違う今は一人じゃないんだから過去の黒歴史は封印封印。
複数の人間でする海での遊びといったら、波打ち際でのボール遊び、本格的ならビーチバレー、スイカ割り、花火、肝試し、パシリ、それくらいしか思いつかない。
俺が皆で何をしようかという話をしようとしたところ、アソロが、
「ところで先生。わたしと二人で遊びません?見せたいものがあるので」
と、屈みながら俺に腕を絡ませてくる。
『空気読めよ……そして胸が俺の腕に当たってるよ!』
「あら、残念ながらアンブロシウス様は私くしと一緒にあちらでお飲み物を頂きながら、私くし達の将来についてお話しする予定ですので」
反対側の腕にエターニャが腕を絡ませてくる。
『両方の腕にパラダイスの感触が~~~!』
俺は左右に引っ張られ、女性2人にぶら下げられた少し屈辱的な状態になる。
「オイオイ」
俺が流石に二人を諌めようとすると、後ろから俺の脇の下に2本の白い腕が伸びてきて俺は後ろに引っ張られる。
姫が俺を奪い取り、俺の頭は抱きかかえた姫の丁度胸の谷間にすっぽりと収まる。左右から頬に当たるポヨンポヨンとした感触。
『Oh~イッツァミラクル。ヒヒヒ、ヒメ~~~~!?』
俺の心の叫びは姫には届かず、その状態で会話する姫。
「そんな予定は無い。私の従者は永遠に私の従者いや、下僕なのだから、将来も私の下僕、いや奴隷だ。お前との将来なぞ無い」
『何故ですか姫。姫の中の俺の職業欄がたった1回の会話でどん底までランクダウンしましたよ』
こうして……女同士のバトルが始まった。
俺は姫の腕をなんとか逃れ、そっとアリスの側に隠れる。
そして時間が今に至る訳だが。
アソロが口火を切る。
「鱗の無い蛇女が一人でその鹿の角でも磨いてな!」
「鹿…言ってはならないことを言いましたね。……この毛も生え揃わぬ発情メスザルが!」
目が爬虫類の目になってるよエターニャ。竜神族は興奮すると目が爬虫類、というかドラゴンの目になる。
「はっ、生え揃ってるわよ!って何を言わせるのよ!?」
そこでアソロは姫の視線に気がつく。
「何よ?」
「小娘……か」
姫は笑いながら言う。
「あんた!?今、わたしの胸を見ながら言ったわね!!!言ったでしょう!!!」
「別に?」
といって姫はワザとらしく胸を上げるように腕を組む。
「言っておくけどわたしは標準ですからね!あなたが大きすぎるだけでしょう!このデカチチ!!」
さらにアソロは反撃に出る。ニヤリと言う笑いを顔に浮かべながら、
「ハンッ、今からそんなんじゃ将来、垂れるわね!」
それが姫にも火を点けた。姫、一応自分のプロポーションに女性としての美意識があったんですね。
「私の奴隷はこれから私に着いて遠泳するのだ。お前達とはいかん!」
『もう奴隷確定!?俺は遠泳なぞする気はまったく無いぞ!』
「いいえ、アンブロシウス様は私くしと将来について語り合うんです!」
『八歳にして将来について語り合う気は無いです』
「違います!先生はわたしと一緒にいくんです!」
『何処へいくんですか……。怖いから行きませんよ』
背後に虎と竜、鷹の姿が見える
虎がアソロで竜がエターニャ、鷹が姫だ。
俺はアリスのそばに隠れてチョット泣きそうになる。
皆で一緒に遊ぼうよ……楽しくこうキャッキャウフフ(死語?)って感じでさ。
「どうやら痛い目にあわねば解らないらしいな」
スラリと緋幻を抜く姫。
『抜いちゃった~~あっさり抜いちゃったよ~!俺の説明なんて聞いてなかったよ!』
3人は少し下がって間合いを取る。
「あら、それは私くしのセリフですわ」
エターニャの肌の色が緑になっていく。ああなると普通の武器ではかすり傷一つつけられなくなる。
「おばさん達。ぎっくり腰にならないでね!」
アソロが両手に魔力を纏いつかせ、呪文を唱える体制に入る。
一触即発の状態。
『誰か、誰かこの状況で空気を読めずに割り込んでいける勇者はいないのか!!』
「ワクワク」
俺の横で一人だけワクワクしながら期待の眼差しを俺に向けているアリスさん。
『俺に何を期待してるんだお前は』
「そうだ!じいさん、モグラのじいさん(注:ドワーフです)ならいけるはず!じいさんならボケた振りしてこの状況でも入っていけるはずだ!どこからともなく地面から生えてこないのか!」
俺は辺りの砂浜を探す。地面が盛り上がっている場所はないかと、隠れているかも。
「あのじいさんなら、空気を読んで出てくるはず!!」
「アンブロシウスどの~」
「じいさんか!?」
振り返る俺の目に入ってきたのは、じいさんはじいさんでも違うじいさんでした。
声は海の方から近づいてくる。3つの人影。
「海王のじいさん!?」
豪華なマントを羽織り白いヒゲを蓄えた半人半魚、つまり人魚の海王ダーゴンと2人の護衛だった。
彼らは普通海から出られない、何せ下半身が魚だからだ。
しかし3人は楽々と泳いで浜辺の俺達の近くに来る。
彼らの丁度下半身を覆うように、大きな水のボールのようなものが浮かんでいる。その浮かんだ水の中で泳いで彼らは地上へと上がって来ていた。水のボールは少し宙に浮いており、高さを調整すればこのまま空を泳げる。
何故知ってるかって?俺が教えたからだ。
この地を永遠に竜神族のものにすることを引き換えに、エルフの精霊都市でよく見かけるあの、水をボール上にして浮かばせる精霊魔法を彼らに伝えたのだ。水から上がれず地上に憧れていた人魚族は歓喜した。それも陸に上がるだけではなく、空も泳げるようになったのだからその嬉しさといったら、俺がこうして海の王となれなれしく話せるのはそういう理由だ。
「なんでこんなところに、いや、丁度いい!」
俺は身体強化で腕力を強化して、海王のじいさんの腕を掴み姫達3人の真ん中に水のボールごと投げ込む。
「なぬ!?」「「え!?」」
驚く海王。驚く護衛達。
「じいさん!今だ!!死にたくなかったらボケるんだ!!」
「え?なに?なにがどうなってるんじゃ?」
次の瞬間海王にアソロの放った雷が落ち、姫の刀で豪華なマントが細切れにされて飛びちり、エターニャのドラゴンパンチの一撃で、海王は海の彼方に星となって消えた。
「「海王様~~~!?」」
二人の護衛が慌てて追いかけていく。
「ふう、地球の平和は守られた。あ、ここ地球じゃないな」
一撃を放ってすっきりしたのか、俺の説得に応じその後は皆で楽しくおかしく遊び、穏やかな時間を過ごした。
ああ、そのキャッキャウフフ(死語?)な映像は俺の脳内メモリーに完全に記録された。後で見せてあげよう。当然ムネポロ動画も記録済みだ。
そうして時間はあっという間に過ぎ夕方。
俺達はアソロの父親が経営する高級宿の温泉を借りることになった。
あれ?なんか忘れているような……。
まあいっか。




