走れ!俺!
俺達は今、ドワーフの地下帝国第1階層中央広場にいる。
正確には広場の中心に立つ15m程のモニュメントの柱の上、のさらに上カバン(タンス)の上に3人で正座している。
モニュメントの周り、広場にはロックザウルスが30体……増えてる。
「さて、第1回『俺達やばいよどうしましょう』会議~~~」
「わ~わ~~」「パチパチパチパチ」
姫があおり、アリスが拍手する。
「さて今回の議題は、家を出て5時間で我が家の宝刀小鉄があっさり折れちゃった件についてです。解説は俺、アンブロシウスがさせていただきます」
「いいぞいいぞ~」「わ~わ~」
アリスと姫があおる。
「結論といたしまして、まず夜桜は流石に王家の宝刀だったということです。なにせ今までずっと姫の御供を勤めていた訳ですから~」
「なるほどなるほど」「うんうん」
アリスが突っ込み、姫が頷く。
「対して我が家の宝刀、まさかまさかの初日5時間落ち!一冒険の間すら持ちませんでした。そこで問題発生!」
「なになに?」「よ~ざ~く~ら~」
アリスが突っ込み、姫が泣きながら……思い出したみたいです。
「代えの武器を用意してません」
俺はガックリと肩を落とす。
「ニャハハハハ」
「で、考えたんですが、これなんてどうでしょう?」
俺は懐から自分の小刀を取り出し姫に渡す。刃渡り10cm程しかない小さな刀。
前言ったように東の海底洞窟に眠る竜の巣から拝借してきたもので名前なんか知らないし、自分の剣にわざわざ名前をつける趣味は無い。でも魔剣だ。
「一応小さいが刀は刀。姫がこれで抜刀術を使えば……」
ポイッ
姫は一旦手にはしたが『フッ、こんなちっちゃいの刀じゃね~よ』みたいな顔で笑うと、横に投げる。
ここはモニュメントの柱の上、のさらに上のカバン(タンス)の上。
下にはロックザウルスの群れ。
ゴックン。
大口を開けたロックザウルスの1匹が落ちてくる俺の小刀を飲み込みました。
「………………………………」
「え~~、というわけで今この瞬間に私達は全ての武器を失いました」
俺は絶望に打ちひしがれ涙を流しながら頭をタンスに打ち付ける。
アリスが腹がちぎれるとばかりに大爆笑、姫は『しょ~がないな~』って感じで肩をすくめるのだった。
俺は溜め息をつきながら、立ち上がる。
「取り合えずこんなところに何時までいても話が進まないしな。あてが無いわけじゃないから、走るか」
そうと決まれば俺は袋を解き、タンスの両開きのドレスの入ってる場所に姫を押し込む。
「目的地に着くまでここでじっとしててくださいね」
返事も聞かずに扉を閉めると、俺は袋を閉じアリスに目で合図する。
了解とばかりにアリスはカバンの上でネコになる。
「ヒゲのところ?」
「ああ、まあどうせそこが目的地(第2階層安全地帯)だったからな。考えようによっては帝都着いてから折れるより、運がいいのかもしれないなっと」
俺はモニュメントから飛び降りた。
ロックザウルスの頭を八艘飛びし建物の上に飛び乗り、屋根から屋根へと渡っていく。
第1階層のモンスターに空を飛べる奴はいない(カマキリのようなモンスターも羽はない)。
この移動は姫には無理な方法なので、今まではしていなかっただけ。
俺は2年前に1度この迷宮に来ている。そのときもここはこの方法で素通りした。
第1階層を過ぎ、第2階層への通路をひた走る。
10分もしない内に第2階層へ到着した。
ここは中央に大きな地底湖があり、湖を挟んで北と南に建物が広がっている。
「さあ、ここからだ……」
俺は足に魔力を込め、湖まで一直線に伸びた坂道を全力で走りはじめる。
俺が正しい湖の渡り方を教えよう。
まず勢いを付けてジャンプする。
そして右足が水につく、と同時に右足が沈む前に左足を前に!そして左足が沈む前に右足を前に!
リピートアフターミイ、皆もやってみろ根性があれば出来るはずだ!(注:決してマネはしないでください。)
「オオオオオオオオッ」
俺は500m程の湖を数歩で走り渡り、北側の街に着いた。
「ふう~、やればできるもんだな。俺ってすげ~」
第2階層安全地帯。ヒゲのじいさん事ドワーフの家はもうすぐ其処だった。




