進入、そしてどうするの?
前回のことは一旦忘れて、俺達がここに来たのはこの滝の裏に地下迷宮への隠し入り口があるからだ。
人目につきたくないこともあり、また、姫の巨大な荷物を持って移動する俺は有名な入り口を避けて、大きな荷物を持っては入れるこちらから入ることにした。
この滝の裏の入口は一部の冒険者も知っている秘密中の秘密と言うわけではない。
「ほう、こんな所にこんな大きな入り口があったのか」
姫も驚いている。
「ここは昔、川じゃなかったんですよ。ドワーフ達が物資や魔獣を搬入するのに使っていた入り口みたいです」
「魔獣?」
「ええ、彼らの娯楽も人間と同じようなものがあった見たいで。もう少しすれば解りますよ」
巨人が歩いて通れるような通路。
所々、左右が牢屋のようになっており、壁には魔獣の爪あとが残されている。
石畳の長い坂になった通路を降りていく。
左右の壁には美術品といっていいほどの美しい彫り物が施されており、唯の通路一つとってもドワーフ達の作り込みの細かさには感嘆させられる。
通路が終わり、広い石柱が立ち並ぶ広場に出る。
「ここは……。コロッセオ(円形闘技場)か」
1万人は収容できそうな観客席が広場をぐるりと囲んでいる。
「はい。彼らの娯楽の一つだったんでしょう」
闘技場の真ん中を横切り、正面の砕けて今はない門を潜り通路を行くと闘技場の外に出た。
闘技場が建てられた位置は街の端の一番高い位置にあり、そこから見える景色は石造りの建物が見渡す限り続いており、見上げた上空数十mくらいのところに岩で出来た天井がなければここが地下だとは思えない。
地下にある都市だが、精霊の力が働いているのか夕闇程度の明るさがあり街の端までは見えないが視界はある程度確保できる。
ここは第一階層にある中堅都市でこの規模の大きさの地下都市は帝国の領地の至る箇所の地下に無数にある。第1から第7階層まであり階層が深くなるごとに敵の強さも増す。
第7階層といっても縦に連なっているわけではなく、真ん中にある巨大な都市を中心に蛸の足のように中堅都市が伸び、地上に一番近い入り口のある階を第1階層、次いで真都に向かって石造りの坂を下ってつながっている別の中堅都市を順に第2、第3階層と言う。
帝国の王都に続く第1階層の中堅都市に行くには、一旦第7階層、当時のドワーフの真都と呼ばれた中央の巨大都市ドンドルマに一旦下り、そこからまた向こう側の中堅都市をいくつか登って行く事になる。
元々交通の要所を中央の都市に置くことによって流通と通行税を掌握していたため、このようなめんどくさい工程を辿らないと、他の中堅都市から直接別の中堅都市に行くことはできない。
その為、いくら帝国側と王国側がこの地下都市を通じて結ばれていてもここを通って軍を派遣するということは実質不可能であった。
第7階層まで軍が生きてたどり着けないからだ。
冒険者達の一流と呼ばれるものでも、この迷宮都市で第7層までたどり着けるものはいない。
空間魔法がこの世界には無いので、最深部を目指すのであれば安全を確保しながら長期間迷宮に滞在することになるが、この迷宮で安全地帯を確保するのは難しい。
そのため各地にある第1階層から第3階層まで位が現在の冒険者達が探索できた全てだ。
そんな中俺達が向かうのは第7階層。どんな未知の敵がいるかはまだ誰も知らない。
かく言う主人公のファミリアーも第4階層までしか確認できていない。
第4階層以降、ネズミすら生存できるような環境ではないらしい。
「さて。ここから第2階層までは少し走りますよ。次の第2階層にある“安全地帯”で今日は休みましょう」
アリスは人型のまま、俺の荷物の上で足をぶらぶらさせながら欠伸をしている。
「アリス聞いてるか?走るぞ。落ちるなよ」
「そんなにトロクはないわよ~」
まったく。自分の足で歩け(走れ)よ。
都市の中は平坦で、次の第2階層の入り口までは走っていける。
途中出会うモンスターは姫が先頭に立って走りながら全て片付けていく。
姫は実に楽しそうだ。
俺は後ろから姫に行き先を指示しながら着いていく。
30体以上の堅い鱗のリザードマンを斬り、10体の鉄のように堅い体のカマキリのようなモンスターを斬り、そして岩のように堅いロックザウルスを……斬ろうとして変な金属音が聞こえ、姫が立ち止まる。
姫は敵を前にしてこちらを振り向き、刃の部分が途中でポッキリと折れてなくなった小鉄を上に掲げて、
「お~れ~た~~~」
「………………………………」
「おおおおおおおああああああああああ」
俺は涙目になりながら、姫をお姫様抱っこしてロックザウルス20体から逃げている。
「ニャハハハハハ」
アリスはカバンの上で変なネコ笑いをしているのだった。
「笑ってる場合じゃね~~~!!」
まさかの第1階層途中にて戦力がタンスを担いだ俺一人……前途多難である。




