愛しきものの死(前編)
研究員タックスがこの生物研究施設ハデスに赴任して三ヶ月。忙しい毎日を送っていた。
長い歴史を持つこの研究施設に配属されるということは大変名誉なことであった。
給料も倍に跳ね上がり、故郷の親元への仕送りも楽になった。
この研究機関ではまだ新米である彼はここに着任した早々上司からおかしな説明を受けた。
【関係者以外立入禁止】
巨大な宇宙ステーションの中にある研究施設。
その中にある研究施設用のブロックは五十ある。
そのブロックの内、第十三ブロックから第五十ブロックまでの大半が進入禁止となっているのだ。
それも勤める研究員である自分達が立ち入りを禁止されている区域。
では関係者とは一体誰のことを言うのであろうか?
外部からの搬入ドックも別になっており、そちら側へ行くには幾重にも張り巡らされた厳重なセキュリティを潜り抜けるか、外、つまり宇宙服を着て外部から進入でもするしかない。
そちらのブロックでは何を研究しているのかは不明である。
タックスが知っているのは生物研究施設という表の顔としてのハデス。
しかし裏の顔は細菌兵器にはじまり、人体実験を厭わぬ生物兵器の研究施設であることは軍の上層部や一部のものにしか知られていない。
当然そんな事を知らないタックスは、今日も忙しく研究資料を抱え、一面が強化ガラスになったロビーを勇み足で歩く。
そんな彼の耳に美しい歌声が聞こえる。
いや、歌声というより鼻歌のようなもの。
口ずさむ声を辿るが周りに人の姿は無い。
歌はどんどん近づいて来る。
タックスは辺りをもう一度よく捜す。
そうして彼の視界に一人の少女の姿が目に入る。
それは強化ガラスの外。
一人の少女が歌を口ずさみながら歩いてくる。
タックスは呆然と佇む。
自分は夢でも見ているのだろうか。
年の頃は十六~七くらいの少女。
白いコートを羽織り、金色の髪に金色の瞳。
まごう事なき超のつく美少女であった。
そんな少女が何も無い、空気すらもない宇宙空間をまるで自分の家の庭を散歩するかのように、優雅に彼の方に向かい、歩いてくる。
そして見ている前で、少女は何もそこにはないかのように強化ガラスをすり抜け、自分の目の前まで歩いてきて立ち止まる。
「ショチョサンイマスカ?」
「はい?」
美少女が放った第一声は何処かイントネーションのおかしな母国語。
天の民が使う共通語であった。
戸惑い、口を空けて呆然と立つ男を見て、少女は自分の言葉が通じてないのかと首をかしげる。
「おかしいな。ジローの記憶じゃこれでいいはずなんだけど……」
そう悩みながら少女は発声練習をしながらもう一度最初の言葉を繰り返してみる。
「あ~あ~、所長さんいますか?」
今度は通じたようで、白衣を着た研究員の男は数回頷く。
タックスは目の前の女性が幽霊などではない事を知り、それであれば明らかな不法侵入者であるのに、警備兵を呼ぶと言う単純なことも忘れ、ただ名前を問う。
「えと、あなたは?」
「わたしはリーン。ここの所長さんにお話しがあって来ました」
ハデスの外壁は戦艦と同じく、単純ではあるが魔法防壁になっている。
魔法を使えば即座に警報が鳴り響き、警備兵が駆けつける。
しかしセンサーはリーンの存在を感知できないでいた。
それはまるでエンフェルミナが戦艦に乗り込んだ時のようであった。
その後、穏やかにとは言いがたいが研究所たるハデスの所長、ユダクリフとリーンという二人の重要人物が会見を果たす。
そこでどの様な取引が行なわれたのか、当事者である二人を除いて知るものは誰もいなかった……。
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燃え上がるように逆立つ白い髪をたなびかせ、額に大きな一本角を持つ少女が笑う。
彼女の瞳は紫。
鬼火を思わせる炎の揺らめきを見せる。
黒い宇宙服のようなライダースーツに金色のラインが光り、腰には黒い日本刀。
その横には白いストレートの髪をなびかせて対照的に白いライダースーツに身を包む少女が立つ。
彼女のスーツには赤いラインが光り、瞳は同じく朱色。
そちらの少女に角は無い。
【白鬼とルル】
一見双子のように見えなくは無い少女たちだが、彼女らに血のつながりなどない。
ただ超常的な能力を持つ二人を作り出したる産みの親が同じ人物なだけである。
二人は幾重にも張り巡らされた厳重なるマガダン防衛網をまるで蜘蛛の子を散らすが如く打ち破り、マガダン本星は冥国帝都プププルズの宮廷の中庭に降り立つ。
くしくも二人の降り立った場所は、以前にアンブロシウスが花見をしていた場所であった。
警備システムのレッドアラームがけたたましく鳴り響き、王宮に配備された精鋭部隊がすぐさま駆けつけ、彼女らを取り囲む。
皇室の剣術指南であり、警備主任も勤めるヤマト・オーラを筆頭に、戦車、半重力ヘリ、魔導機兵、肉体強化を施して武装をした精鋭部隊が彼女らを遠巻きにして庭を埋め尽くす。
ただの賊であるならばこの状況に立たされれば天を仰ぎ、両手を上に上げて息をすることすら諦めたであろう。
しかし彼女らは全くそのような状況に動じることも無く、ただ二人してのんきな会話を交す。
「こんなのルルだけでできるよ~。なんでシロちゃんがくるんだよ~」
「仕方が無かろう。この白鬼の調整も兼ねているのだからな。出来ればここは手を出さないで貰いたいものだな。お前が動けば試しにもならん」
「ん~、おかしみつけたらぜんぶわたしがもらってもいい~?」
「かまわん。好きにするがいい」
「だったらいいよ~」
白鬼はルルの返事を聞くと一歩前へと踏み出す。
「止まれ!それ以上動くなら直ちに射殺する!」
ヤマトが動こうとする彼女にけん制する言葉を発し、それに呼応して周りの兵が一斉に銃を構える。
角の少女、白鬼は微笑む。
「やってみろ!!」
宮廷を守護する最新兵器の数々。
例えドラゴン級の魔物であろうと、一匹であればものの数分で跡形も残らず駆逐してしまえる兵力であった。
しかしたった一人の角を生やした少女の前に、小さな砂時計の砂が落ちるよりも早く壊滅させられるとは、その時は誰一人夢にも思ってはいなかった。
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「早く!早くお逃げください!!」
ティッツェ皇女は侍女のアマリリスに急かされ、取るものも取り敢えず自室から脱出艇のドックに走り、向かう。
途中擦れ違う貴族達も同じように各自脱出路に向かい、慌しく走り回っている。
いったいどれ程の数の敵が攻めてきたというのか。
時折響く爆発音と振動が空飛ぶ宮廷を揺さぶり、走る足取りを頼りないものにさせる。
ティッツェ皇女の耳には此度の敵の情報が欠落しており、周りの慌てふためく人々の声も聞きとれど、全く要領を得ないものである。
あるものはアスマンの戦艦が防衛網を突破して大気圏に入っただといい、あるものは巨大なミサイルが次々と雨の様に降り注いでいるといい、またあるものは細菌兵器がばら撒かれ、次々と人が倒れて死んでいるのだと言う。
いったいどれが正しい情報なのか判別がつかない。
分かった事といえば、ここにいては危険だと言うこと。
「お父様は?」
「ナゴール様は先に脱出艇に向かいました。既に脱出していると思われます。お急ぎを!」
側付きの侍女ではなく、足取りのおぼつかない彼女を時折支える、SPの男の一人が彼女の問いに答える。
なんとか数分で皇族専用のドッグに彼女はたどり着いた。
吹き荒れる風が髪を巻き上げ、いつもの黒いゴスロリのドレスの裾を跳ね上げるが、そんな事を気にしている場合ではない。
普段は閉じられている下部のドック入り口が開け放たれ、眼下には帝都町並みが見える。
そこより落ちれば命は無い。
足を踏ん張り、SPの誘導に従って柵のついた通路を自らが乗る脱出艇に向かってひた走る。
脱出艇の前。大きな広場に到着する。
皇族が歩く赤い絨毯が敷かれた床。
幅三メートルほどの絨毯以外の場所はむき出しの白い大理石のような床が広がる。
絨毯の上を悠長に歩いている場合ではないので気にせずに脱出艇に向かって直進しようとしたとき、前方を行くSPが足を止め、進路を塞ぐ。
仕方なくティッツェ皇女も足を止める。
「何故止まるの!早くお行きなさい!」
しかし、SP達は一向に動く気配は無い。
それどころか肩に掛けたレーザー銃を腰だめにし、前方に向かって構える。
そこで初めて彼女は声無き悲鳴を上げる。
彼女が目にしたのは一面の血の海。
そして肉塊。
それは誰のどの部分かもわからぬほどバラバラになった大勢の人々の死体の山。
その中で一人の白いコートを着た金髪の少女が背を向けて佇む。
血まみれの手には巨大な禍々しい大剣。
手や顔についた赤い鮮血を気にせず、彼女は若い女の腕らしきものを持って口に運び、租借していた。
そして彼女はこちらに気付き、肩越しに振り返って微笑む。
「見つけた」
金色の瞳がティッツェ皇女を睨み、それを見て彼女は心臓がえぐられるような衝撃を受ける。
「アンブロシウス……様?」
それが彼女が口にした、この世での最後の言葉であった。
この日、空に浮かぶ宮廷より脱出できた船は一隻たりとも無かった。
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アンブロシウスは自室でホログラフィーによるニュースを見、事の重大さを認識する。
「不味い事になったな」
アーネットは任務で帝都を離れているので無事であったが、アニーとの連絡が取れない。
急いで身支度をする。
そんな時、自らの影が盛り上がり、その中より一人の黒装束の美女が現れる。
黒く長い髪を三つ編みにして前に垂らし、背には長い長剣。
黒いレオタードのようなスーツを身に着け、見た目はクノ一のようないでたち。
片膝を付き、アンブロシウスの側にかしずく。
「シズクか」
振り向きもせずに着替えながらアンブロシウスは言う。
「ハッ、御報告致します。此度の件、アスマン軍部は関与しておりません。内部に怪しき機関がござりますれば、それより放たれた刺客の行なった所業にございます」
「そうか、ご苦労。引き続きアスマンの内情、そして悪いんだがセーレたちが何処にいるかを探ってくれ」
「御衣」
アンブロシウスは着替え終わり、シズクを振り返る。
「っていうかこんな時代劇みたいなこといつまで続けるの?」
「さて、これは否事を。私はアンブロシウス様の影ゆえ「ちっが~う!お前は俺の奥さんだろ!その上影って何!?君は一応この国の元王妃なんだよ!ちょっとは自分の立場というものを……」
彼女はニコニコと微笑む。
無言の重圧を感じる。
少し、いや、かなり怖い。
どうやらこの芝居を続けるしか無さそうだ。
笑顔の中に『お前にだけは言われたくない』というセリフまで見える。
それにしても彼女の中のマイ忍者ブームなんだろうが……妹の漫画の影響だろうか?困ったものである。
黒騎士が忍とは……俺の感覚的にはクラスダウンしているような気がするんだが……。
「それよりもお伺いしてよろしいか?」
「なんだい?」
「鬼姫のことですが何故殺しておしまいにならないのですか?わざわざあの地に情報操作までして誘き寄せましたのに」
「ああ、最初はそうだったのだが……事情が変った。今は正直生かしておいて良かったと考えている。これからの動き方では利用価値もでよう。決してアベルの為という訳ではないぞ?」
彼女は俺の返答に頷き、立ち上がる。
そして一礼すると再び俺の陰の中に消えていった。
それにしてもセーレたちは無事であろうか……いや、無事だろうな。
彼女達がもし、帝都を襲撃したもの達と殺りあったとして、そう簡単にやられるようには思えない。
数万の魔物を呼び出すアニー。魔剣士アムネジア。鏡使いセーレ。
それに彼女達は自分の巨人も持っている。
負ける姿があまり想像できないんだが……。
しかし連絡が取れないのはおかしい。
もしかしたらセーレ達は何者かに捕らえられでもしたのか……。
「殺す」ではなく「捕らえる」となるとかなりの力量の持ち主である。
正直自分があの三人を相手に捕らえる事ができるかといわれれば、無理と言わざるを得ない(封印を解けば別だが)。
俺が最初宇宙に出てマガダンの辺境の惑星に降り立ち、そこに住まう住人と始めて接触した時に安堵の溜め息をついた。
なぜなら俺の知る(元)天の民は魔王や魔人である妻達だけだったからだ。
冥の民と天の民は戦争を数千年もの長きに続けていると言う。
当然、冥の民も天の民も魔人クラスの化け物がうようよしているのではなかろうかと心配していたのだ。
正直、全然普通だった。
地球も、天地の星も、冥の星々も、天の民ですら普通の人々だった。
少しばかり多種多様な種族がいるだけのごく普通な人々。
科学力は地球や天地の星の比ではないけれども、暮らしている人々の能力は、少しばかり寿命が長くとも殆ど変らなかった。
結論。
おかしいのは愛しき妻であるセーレたち魔人+他数名の妻達+リーンやウォーレンやヘルズや魔王やその他大勢……。
俺の側にいるものたちが少しばかりおかしなくらい強かっただけであった。
おかげでどう考えてもチートなはずの俺が普通人に思えるときが多々あったものだ……。
話を戻そう。
兎に角、魔人である妻たちは出鱈目なほど強い。
そんな彼女らを捕まえるほどの強敵がいるとは思えなかった。
魔王や魔竜王が相手であれば別だ。
しかし彼らと出会ったのであれば「捕らえる」なんて事をするのだろうか?
そして王宮を落としただけで立ち去るなんて事をするだろうか?
魔王達ならばきっと星そのものがなくなっているだろう。
よってこれはアスマンの手によるものと考えるほうが妥当。
そして妻達のことは別にして、「帝都襲撃による皇帝の暗殺」これはかなりいい作戦だとは思う。
実際に自分がアスマンの将であれば同じような事を考えたかもしれない。
現皇帝たるナゴール・ド・バイモン。
彼には有力な後継者が三人いる。
一人はご存知セレトニー・ド・バイモン。
しかし彼は第二王位継承権者の次男坊。
第一王位継承権を持つものは別にいる。
第一王位継承権者の名はノイエ・ド・バイモン。
彼はただし病弱で、静養のためと与えられた領地から一歩も出ないどころか、屋敷から一歩も外に出ないと言う変わり者であった。
次男たるセレトニーは自らが辞退した為に領地は持たないものの人望も厚く、軍に入り、将も勤めて数多くの戦歴持つ。
第三位王位継承権を持つのはサージ・ド・バイモン。
セレトニー程ではないが自分の収める領地の軍を仕切り、そこそこの戦歴も持つ。
彼は兄二人とは違って野心家である。
そんな三者が揃えば、それを担ぎ上げる貴族達も三者三様。
古参の貴族は第一位のノイエを掲げ、軍部の出の貴族諸侯はセレトニーを担ぎ上げ、野心の強い貴族達は領地と自軍を持ち合わせる三男を担ぎ上げる。
【王位継承争い】
現在、二つの要所を篭絡されて貧窮しているアスマン軍が活路を見出すとすればこの方法が兎に角有効だ。
マガダンの貴族は一枚岩で結束力がある、というわけでもなく、アスマンと繋がりのある貴族も多い。
それを旨く活用し、各者が争うように先導すればあっという間に戦局を覆すことが出来るだろう。
内部分裂を起こし、命令系統がバラバラで機能しない軍や国など赤子の手を捻るが如く、だ。
という訳で急がねばならない。
俺はたった一ヶ月で休息を切り上げ、再びマガダンに赴こうとしていた。
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王宮が崩壊し、眼下の帝都に落下した事による被害は尋常なものではなかった。
唯一の救いといえばマガダンのマザーコンピューターのフィアレンスが無事だった為に、システム化した各惑星の都市機能に混乱がなかったことだけであろうか。
無事だった理由は襲われる直前、フィアレンス自身が新しい体に魂を写したことによる。
アンブロシウスの渡したデータを解析する為にと、元来の体だけでは無理と判断したフィアレンスが新造戦艦十隻の建築を破棄させて作り出したる移動型巨大コンピューター。
【CC別名:天の岩戸】
その中に作り出したる仮想空間に彼女はその身を移したのだ。
アンブロシウスがこうなる事を予測していたかどうかは定かではない。
しかしアンブロシウスがデータを渡したおかげで、彼女が助かったのは間違いの無い事実である。
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墜落した王宮と帝都を見下ろすことの出来る丘の上。
そこであるものが発見され、急ぎ報告がセレトニーの元に入る。
セレトニーは前線から最速で本国に帰還していた。
前線から来たにもかかわらず、他の兄達よりも先にこの地に到着する。
そして直ちに対策本部を立ち上げて指揮をしていた。
手が足りなくなるのは分かりきっていたので、自分が動かせる手駒であるアーネットも連れ立っての帰還。
亡くなったアンブロシウスには悪いと思いつつも、セレトニーはかつてのアンブロシウスの部下達を自分の手駒の様に使っていた。
アーネット自身士官学校の同期であるセレトニーに手を貸す事自体やぶさかではないので、素直に従っている。
部下からの報告を聞き、セレトニーは血相を変えて対策本部からヘリで飛び出す。
アーネットもそれに随伴する。
丘の側にヘリが着陸し、セレトニーとアーネットは兵を引き連れて報告のあった場所に駆けつける。
ヘリが降りた位置はそこより風上であったので、アーネットはそれが何であるかに気がつくのが遅れた。
もう少し早く気がついていればセレトニーを殴り倒してでも近づけさせなかったのかもしれない。
しかし、遅かった。
「あああああああああああああああああ」
セレトニーが気の狂ったような喚き声を上げ、それにすがりつく。
そこは……地獄であった。
セレトニーという男は何処か世界を達観し、あまり感情というものを見せず、アンブロシウスと合う時以外は常に作り笑いの仮面を被る男であった。
セレトニーは皇族として生れ落ち、野心を持つ貴族や醜い権力争いに晒されて生きてきた。
王位継承権を持つ弟たちの義母たちが行なう身内の毒殺なども日常茶飯事。
暗殺に怯え、誰も頼ることが出来ずに孤独に生きてきた。
ただ妹であるティッツェ・ド・バイモンは別であった。
彼女だけは父と母を同じくする本当の意味での血の繋がった妹。
セレトニーの母は身体が弱く、ティッツェを産んで直ぐに亡くなった。
彼にとって唯一心を許せる血の繋がった実の妹……。
アーネットは、これ程取り乱す彼の姿を今まで見たことが無かった……。




