↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
石と悪魔と平凡な私 〜世界を越えてカタチを変えて少女は〈物語〉を届ける〜  作者: 銀天儀
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/93

第84話 内緒の手回し

 カレフィーネは、皇都南公設賭博場の経営者との会談から戻ると、すぐに私の部屋の扉を叩いた。

 机に広げていた原稿をそのままに、私は椅子から立ち上がった。扉を開けると、彼女はまだ外出用の鞄を手にしている。


「賭博場の取材、許可してもらえたよ」

「やった!助かるよ。これで第二部の翻案も、しっかり進められそう」


 ところが、カレフィーネは一緒に喜んではくれなかった。目を細め、にこにこしている私の顔をじっと見つめている。

 部屋へ招き入れて扉を閉めても、その視線は変わらない。私も、浮かれていた顔を引き締めた。


「それは良かったんだけどねぇ。その前に、私に何か話す事があるんじゃない?」


 どうやら、取材の許可が出るように、内緒で手を回した事に気づかれてしまったらしい。


――あっ、まずい。ちょっと怒っているみたいだ。ちゃんと謝ろう。


「ごめん。うまくいくかわからなかったし、カレフィーネは知らない方が、会談も自然に進むんじゃないかと思ったんだよ」

「ふーん。兄さんの部署が、ああいう人達に恐れられているのは知っていたけどねぇ」


 カレフィーネは、まだ私から目を離さない。


「今日、兄さんの話は一度もしていないのに、帰り際に『お兄さんによろしく』って言われたんだよ。どうして私との関係まで知っていたのかなぁ?」


――うん。これはもう、素直に白状した方が良さそうだ。



 エリが提案したのは、継譚商会には財務局調査室とのつながりがある、と賭博場の経営者に知ってもらう事だった。


 エリによると、経営者自身は真っ当な事業家でも、賭け事を扱う以上、裏の世界との付き合いを避けきれないらしい。表立って説明しにくい金のやり取りもあり、財務局に詳しく調べられるのは、何より避けたいのだという。

 そんな相手との会談に、調査室に勤める人の妹が同席する。兄が妹からどんな話を聞くのか、先方としては気になるだろう。こちらから怖い言葉を使わなくても、頼みを無下にはしにくくなる、というわけだ。


「実は……二人が出かけた後で、フェルディオさんに電話したんだよ。女性二人だけで、ちょっと怖そうな人に会いに行くのが心配だって……。お兄さんから一言あれば、先方も無下にはしないかなと思って」

「なるほどぉ。それで兄さんが、『妹が会いに行くのでよろしく』って連絡したわけだねぇ」


 カレフィーネの推測は大正解だ。


 電話を切った後のフェルディオの動きは、エリに聞いて確かめてある。私から話を聞くと、すぐに賭博場の経営者へ電話を掛け、まさにそのとおりの挨拶をしていた。


「だから、私に付いて行けって言ったんだねぇ。最初から、私達が出発したら兄さんに電話するつもりだったんじゃないの?」

「いや、どうしようか迷っていたけど、決めていたわけじゃないよ」


 これは本当だ。先方がカレフィーネをフェルディオの妹だと気づいてくれれば、電話はせずに済ませるつもりだった。けれど、エリに確かめてもらうと、二人の関係までは知られていなかったのだ。


――だから、最初から決めていたわけではないよ。うん。


「本当かなぁ」


 カレフィーネは、もうしばらく私の顔を眺めてから、小さく息を吐いた。


 エリに確かめたところ、フェルディオから電話を受けた経営者は、その後に持ち込まれる「取材」の依頼について、色々と悪い想像をしていたらしい。財務局とのつながりをちらつかせて、一体何を調べるつもりなのか、と身構えてしまったのだ。


 私が見たいのは、部屋の様子と紙札の模様だけだ。もしかすると、余計な警戒をさせたせいで、ルッシェリーナはかえって説明に苦労したのではないか。許可が出たと聞くまでは、それも心配していた。


「まあ、色々と良い経験はできたし、今回はもういいよ。でも、兄さんの名前を出すなら、私にも先に言ってよねぇ。相手が何を気にしているのか、知らないまま話すのは困るよ」


 私が頼んで付いて行ってもらったのに、カレフィーネは、自分の役割を知らないまま席に着いていたのだ。うまくいったから良いでしょう、とは言えなかった。


「うん。何も知らないまま行かせたのは、ごめん」

「もういいよ。それでね、会談でルッシェリーナの小さい頃の話を、色々と聞いちゃったんだ――」


 話題が変わると、カレフィーネの声もいつもの調子に戻った。その声を聞いて、私は少しほっとした。


 賢者の石の能力を、カレフィーネに知られるわけにはいかない。そのため、相談できる範囲は、どうしても限られてしまう。でも、お兄さんから連絡を入れてもらう事については、先に相談くらいはしておくべきだったかもしれない。


 今回、事前にカレフィーネに相談しなかった本当の理由は、フェルディオへの連絡に反対されると思ったからだ。

 カレフィーネに反対されても、先方がどこまで調べたかによっては電話をしたかった。でも、その調査状況をどうして私が知っているのかは説明できないのだ。


――だから、また黙って動く事はあると思う。なるべく相談するつもりではあるけど……。ごめんね。


悪魔(エリ): カレフィーネとフェルディオの関係は、ベルサディウス達が自力で気づけた可能性も高い。ミリアナも、知らん顔(ポーカーフェイス)を貫けばごまかせたはず。

悪魔の眷属(エーアイ): その「知らん顔(ポーカーフェイス)」が、ミリアナさんには一番難しいんですけどね。


リアクションをいただき、ありがとうございます。

この物語を「面白い」「また読みたい」と感じたら、★やブックマークで応援していただけると作者は大変嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。