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ティナル王国物語  作者: ふわむ
フェニカの追憶
4/5

第04話


アリスとエステリーナ様についてのお話は、これくらいにしまして。

そろそろ、わたくしが二年生のときに起こした騒動の顛末てんまつをお話しましょう。


騒動の数日前、二年生になって最初の定期試験が行われました。

二年生になると一年生の時よりも試験科目が増え、内容も基礎的なものから応用的なもの、実践的なものへと移っていくのです。


そしてこの日、その試験結果が学内に掲示されました。


はぁ・・・。

成績が上がりませんわ。

試験前あれほど頑張ったのに、どうして・・・。


掲示物を確認したわたくしは、その結果に落胆しました。

学年全体で287人中117番。クラス内では30人中27番。

試験に臨むにあたり、今回こそはと試験前の勉強量を増やしたのですが、結果は振るわなかったのです。


ちなみに。

学年上位13番目までわたくしのクラスメートで占められており、エステリーナ様は学年10番。


そして一年生からずっと学年1番のアリスは、今回も1番でした。もはや笑うしかありません。

・・・いえ。この時のわたくしは、笑う余裕すら失っておりました。


教室に戻り、自席に着いたわたくしの脳裏に浮かんだのは、定期的に届く実家からの手紙のこと。

先日届いた手紙には、『お前は誰よりもできるはずだ』『家族みんなが期待している』『二年目こそは頑張るように』などの言葉が連ねられておりました。


それらを思い出した次の瞬間、湧き上がってたのは強迫観念に似た衝動。

手紙にあった言葉が、わたくしに繰り返し襲い掛かってくるような、そんな感覚。


怖い。

気持ち悪い。


その感覚から逃れる術を知らないわたくしは、机に肘を付いたまま頭を抱えて目を瞑り、時が過ぎるのを待つしかありませんでした。


「・・・様。・・・シュテフェニ様」

「えっ?」


わたくしの名を呼ぶ声に顔を上げ、目を開けると、アリスが心配そうな表情でわたくしを覗き込んでおります。


「シュテフェニ様。お身体の具合いが悪いのですか」


アリスのその言葉に、わたくしの一年間溜め込んでいた何かが弾けてしまった、そんな気がしました。


「・・・てくださる」

「え?」

「放っておいてくださるかしらっ!?」


わたくしは教室で声を荒げてしまいました。

貴族出身のわたくしに対して、アリスは平民出身。

アリスが絶対に歯向かえないとわかっていたから。強い立場を利用して、弱い立場の彼女に悪態をついたのです。


「え、シュテフェニ様、一体どうなされたのですか・・・」

「もう話し掛けないでっ!貴女あなたにはわたくしの気持ちなんてわからないわっ!」

「シュテフェニ様、そのようなことは・・・」

「1番しか取ったことのない貴女に、わたくしのような平凡な者の気持ちなんてわかるわけがないのよ!」

「っ・・・!」


それは、きっとわたくしが、心の奥底に沈めておいた本音。

決して他人には聞かせたくなかった醜い思い。


言った。

言ってしまった。


そして気付きます。

知らぬ間にわたくしは席から立ち上がっておりました。そのわたくしに向けて、教室中の視線が集中していたのです。


己の振る舞いが貴族の令嬢としてどれほど横暴であったことか。どれほど卑怯であったことか。

我に返ったわたくしはそれらを自覚してしまい、羞恥心しゅうちしんで居たたまれなくなりました。


この場から逃げ出したい。


その思いにわたくしは支配されてしまいます。

口元に当てた手が震えるアリスの横を早足で通り抜け、教室の出口から一目散に駆け出してしまうのでした。







わたくしが去った後の教室では・・・。


「アリス!何があったのですか!?」


狼狽うろたえているアリスに真っ先に声を掛けたのは、わたくしとちょうど入れ違いで教室に入ってきたチュートリアル様。

入学当初からアリスの友人である彼女は、騒動の内容は分からないまでも、アリスに何かあったのだと察して心配そうに気遣います。


教室には気まずい空気が流れ、誰もが口を開かず、どこか落ち着かない様子。


そんな中、ガタッと音を立てて、勢いよく椅子から立ち上がった一人の女生徒。

誰あろう、エステリーナ様でした。


教室中の視線が一斉にエステリーナ様へと集まります。

彼女はぐるっと教室を見渡してから、自信たっぷりの表情で、アリスとクラスメートたちに向けて高らかに宣言するのです。


「わたくしに、まーかせなさいっ!」


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