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ティナル王国物語  作者: ふわむ
フェニカの追憶
2/5

第02話


わたくしが八つ当たりしてしまったクラスメート。名をアリスといいます。

わたくしのクラスは魔法の才能が認められた生徒が集められた特別クラスでしたから、一年生から卒業するまで同じクラスメートと勉学を共にするのですが、二年生になって席替えがあり、このときわたくしと彼女は席が隣同士でした。


そのアリスのことを語る前に、まずはこの学園についてお話しましょう。

王立学園は、我が国唯一の四年制学園。

所在地は王都。全寮制で、王都住みの者でも通学は許されておりません。

地方から入学してくる者たちに至っては、卒業するまで家族と会えないという覚悟を持って学園にやって来るのです。


そして、この学園で学ぶ内容ですが・・・。

一年生で算学、土木建築学、農学、戦争歴史学。

二年生からは法学、政治学、行政学、公共政策学、経営学といった国家運営に関する分野まで範囲が広がります。

生徒たちは定期試験で一定の成績を修めることを要求され、特に学年末の進級試験でその成績に満たなければ、1度目は留年。2度目で退学となります。

生徒たちは四年生の卒業試験まで、この厳しい環境のもと、勉学に励むのです。


卒業試験に合格すれば、晴れて卒業です。

この世界は15才で成人となりますので、この学園を卒業するというのは、ちょうど成人するタイミングでもあるわけです。

卒業生には国の要職に就くルートが用意されています。いわゆるエリートコースですね。

この学園は我が国のエリート養成施設と言っても過言ではないでしょう。


蛇足になりますが、先程申し上げた通り、わたくしのクラスは魔法の才能を持つ者が集められた特別クラス。他に、騎士を目指す者が集められた特別クラスというのもございまして、それら特別クラスからは宮廷魔法士や王国騎士へのルートが開かれていたりします。


・・・と、まあ、ざっとお話しましたが、この学園を卒業するのが大変なのは何となくおわかり頂けたでしょうか。

そんな前途有望な若者達にとって、もし卒業することより難しいことがあるとすれば・・・。


それはもしかしたら、入学することかもしれません。


入学の条件は、簡単に言うと3つ。

11才であること。そして貴族の推薦を受けていること。

入学試験はありませんが、一応付け加えますと、基礎学力がない者に推薦を出す貴族はおりません。


そして最後にお金です。

王立学園に入学するには、それなりのお金が必要なのです。

『それなりの』とは言いましたが、ごく普通の平民にとっては生涯掛けて得られるかどうかくらいには高額なので、必然的に入学できる生徒はとても裕福な家の子供に限られます。


そういった理由から、生徒の半数以上は貴族の子息令嬢で占められます。

全寮制であるため、貴族に連なる者が世話係として一緒に入学してくる場合もございます。


残りが平民の子供。

ただし、ほとんどが各地の権力者であったり、裕福な商家であったり。

平民といえど、少なくとも貴族と関わりを持つ家でなければ貴族からの推薦を受けられませんからね。


このように生徒たちは、生まれ育った家で教養や学を身に付けさせられ、十分な準備をして送り出された子供たちばかりなのです。


さて。アリスの話に戻しましょう。

アリスは平民出身。

とある農村の農家の娘で、学費を払えるような裕福な家ではありません。

本来であれば、学園に入学することなどできようはずがなかったのですが・・・。

アリスを推薦したのはその土地を治める領主貴族だったそうです。

その領主貴族は推薦のみならず、全ての学費まで援助したらしいのですが、詳細はわかりません。


入学当初は農村なまりが残る田舎娘だった彼女。貴族の子息令嬢に対する礼儀もままならず、見ていて冷や冷やさせられたものです。

聞けば、誰かから学問や礼儀作法を教わった経験が全くないとのこと。

話をすれば理解が速く、確かに賢い娘だとは思いましたが、あまりに物を知らなかったため、わたくしも何度か指摘して貴族に対する礼儀や常識を教えることがありました。


ところが、です。

彼女は一年生の最初の定期試験で学年1番を取り、周囲を唖然とさせたのです。


この結果に対して懐疑的かいぎてきな目で見る者は少なくありませんでした。

何かの間違いでは、と言う者や、不正を疑う者も。

正直に申し上げればわたくしも、まぐれだろうと思ったものです。


しかし入学して半年後。二度目の定期試験。そうした者たちは黙らされることになります。

彼女はまたも1番を取るのです。しかも全教科満点で。

わたくしが挫折を味わったのは、ちょうどこの試験の結果を受けてのことでしたが、彼女の存在も挫折の一因であっただろうと思います。


この頃のアリスは、所作や言葉遣いが見違えるほど美しくなっていました。

もはや生まれながらの貴族の令嬢と遜色ないレベルにまで。

それだけではありません。肌や髪が整うにつれ、可愛らしさが際立ってきたのです。

学園内では制服姿だけしか見られませんが、彼女の容姿なら色んな衣装を合わせてみたくなります。

彼女は美しい銀色の髪を持っていましたから、個人的にはその銀髪が映えるような青いドレスを着せてみたいところです。

この時点で同性のわたくしでも目を惹かれてしまうのですから、いずれ多くの殿方の心を虜にしてしまうような美しい女性に成長するだろうと予見させられました。


才も容姿も、日々磨かれていくアリス。

ですが、そんな彼女が同性からうとまれないわけがありません。

しかも彼女は平民出身。貴族の子供たちからすれば、疎ましいと思う相手が反撃できない立場なのです。それは嫌がらせする者も出てくるというものでしょう。

実際、最初の定期試験で学年1番を取った頃は、何度か嫌がらせをされたこともあったようでした。

しかしあくまでわたくしが見た限りにおいてですが、そうした嫌がらせは存外少なかったと思います。もっとあったとしても不思議ではなかったのに、そうならなかったのです。


嫌がらせがエスカレートしなかった最たる理由は、彼女を庇護する者の存在にありました。

入学直後の時点で、彼女はクラスメートお二人と友人関係を持っていたのですが、そのお二人とは、どちらも上級貴族の御令嬢だったのです。


1人はチュートリアル様。

ルフェーブル侯爵家の御令嬢。

ルフェーブル侯爵家というのは、先に述べたアリスの住んでいた農村を治めていた領主貴族になります。

つまり、アリスを学園に推薦し、学費を援助したのが、このルフェーブル侯爵というわけです。


そしてもう1人が、エステリーナ様。

キャッスルテイン公爵家の御令嬢。

王族の傍系ぼうけいで、順位は高くないですが王位継承権もお持ちの方です。

このエステリーナ様という存在が特に大きかったのだと思います。


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