第01話
当物語『フェニカの追憶』は、短編で、全5話の構成となっております。
さくっとお読みいただけると思いますので、お気軽にどうぞ。
わたくしはシュテフェニ・カトリシアナ。
近しい者たちからはフェニカと呼ばれております。
王立学園で日々勉学に励む、平凡な学生。それがわたくしです。
カトリシアナ男爵家の長女に生まれ、大事に育てられたわたくしは、幼い頃から物覚えがいい娘だと褒められることが多かったと思います。
魔法の才能が認められたのが8歳の時。そこからわたくしを取り巻く環境が少しずつ変化していきました。
まず、家族から将来を有望視されることになり、わたくしも自分が優秀な人間だと信じて疑わないようになりました。
続いて、父が早々にわたくしを家の跡継ぎに据える意向を示すようになります。
わたくしには3人の弟がおりました。貴族社会では普通は男が家を継ぐものなので、兄弟を差し置いて女が継ぐというのは、つまりその女が優秀なのだと意味することになるのです。
こうして、わたくしに対する家族の、特に父の期待は日々大きくなっていき、わたくし自身もそれに応えようとさらに努力を重ねるようになっていったのです。
11歳になり、王国で唯一の王立学園に入学。
入学した日、わたくしは希望に満ち溢れていました。
わたくしの輝かしい学園生活がこれから始まるのだ、と。
しかしその思いは、学園に入ってから打ち砕かれることに。
わたくしが配属したクラスは男女合わせて30人。全員が魔法の才能を持つ特別クラスでした。
そして彼らクラスメートは、揃いも揃って、わたくしより優秀な者ばかりだったのです。
入学して半年を過ぎた頃だったでしょうか。
クラスの中での自分の立ち位置というものが大まかに定まってきまして・・・。
クラスでのわたくしの成績は下の中。具体的には下から数えて5、6番目といったところ。
正直、皆に付いて行くだけで精一杯。
ずっと優秀な人間だと思っていたわたくしにとって、それは生まれて初めて味わう挫折でした。
ただ、学年全体の成績に直すと約300人中100位前後ということで、学年全体で見れば平均より上位の位置。要するにわたくしのクラスはレベルが高かったのです。
それがせめてもの救いでしたが、ともかくわたくしは自分が平凡であったことをはっきりと自覚し、その立場を甘んじて受け容れようとするのでした。
けれども一方で、わたくしの父はそれを良しとしませんでした。
実家から定期的に届けられる手紙には、『もっと努力するように』と父の言葉が綴られることとなり、わたくしへの圧力となっていきます。
そうしてストレスが溜まり続けるも、当時のわたくしは上手に解消する術を知りませんでした。
進級して二年生となり、最初の定期試験。
そこでわたくしは騒動を起こしてしまいます。
試験結果が学内に掲示された直後のことでした。
成績が芳しくなかったことを確認し、教室に戻ったところで、隣の席のクラスメートに溜め込んだストレスを爆発させてしまったのです。
「貴女にわたくしの気持ちなんてわからないわっ!」
「シュテフェニ様、そのようなことは・・・」
「1番しか取ったことのない貴女には、わたくしのような平凡な者の気持ちなんてわかるわけがないのよ!」
「っ・・・!」
俗にいう『八つ当たり』。
よりにもよってクラスで、いえ、学年で最も優秀な生徒であるアリスに、わたくしは酷い言葉をぶつけてしまいました。




