表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界リストランテ『ピッコラ』  作者: 黒砂 無糖
集まる。そして始まる。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/61

地下拠点のキッチン

「ジェリコ、なんで二足歩行できるんだよ」


 彼女の足は、ヒレじゃなかったか?


 普通に歩くジェリコに案内されて、俺は地下の拠点の部屋の中のソファに座った。


「もうユーちゃんたらぁ♡ 魔法に決まってるでしょ? 何を当たり前のことを言ってるの」


 しまった、無知すぎたか……


「ユージンは、残念ながら無知ですよ。私の教えた中に、半魚……あなたの情報はありませんからね」


 アルプは半魚人と言いかけて、副官に遠慮したのか言い直した。


「あら、それはちゃんと教えておきなさいよ。全く使えない羊ね。まぁいいわ。ユーちゃんの耳と似たような魔法よん♡」


 ジェリコはそう言って手を伸ばし、俺の耳をするっと撫でた。


「ヒィッ! や、やめろ! って、なんだ? なんで、尖らせた耳に感覚があるんだ?」


 魔法で形成された俺の耳の先にも、なぜか触った感触がある。


「私が掛けた形状変化ですからね。元の耳の形を変えただけですから、感覚はありますよ」


 アルプは当然だと自慢げに胸を張った。


「あら、ユーちゃんの耳は羊がやったのぉ? 身体変化をするのなら、自分でかけたほうがいいのにぃ?」


 ジェリコに指摘され、アルプはきゅっと眉間に皺を寄せた。


「確かに……最近はユージンの魔力もかなり増えたようですし、自分でやりますか?」


 人がやるのと、何か違うのだろうか?


「アルプにかけてもらうのはダメなのか?」


 かけっぱなしだと疲れないかな?


「ダメではないですが、万が一私に何かあったら、身体変化の魔法が消えてしまいます。このご時世、保険は必要かと」


 嫌な話だな……ん? 身体変化だけか?


「店や、家は大丈夫なのか?」


 店はマハトやみんながやってくれたよな……


 ——消えたら困るな。


「魔法が消えるのは生命体だけです。物体の変化、変質は大丈夫ですよ。魔法の術式がそもそも違いますから」


 そう説明したアルプは、スティックを取り出すと、くるくる回して光の帯を出した。


「ユージン、ちょっとくらっとしますよ」


 アルプのスティックが出した光の帯を、俺はぼんやりと見ていたが、


「え?」


 急に話を振られ、間抜けな返事をした。


 その瞬間、光の帯は俺の額にシュルリと吸収されていった。


「うわっ、ちょっと……」


 ぐるぐると俺の頭の中で魔法陣が周り、アルプから魔法の使い方を強制的に叩き込まれた。


「ユージン、これで自分で使えるはずです」


 耳が人型に戻っていたので、アルプに教えてもらった魔法を使い自分で耳を尖らせた。


「あらぁん♡ 上手じゃない。丸い耳も可愛くていいけどぉ、魔族の耳も素敵よぉ♡」


 ハートを物理的に飛ばしてくるジェリコのことは無視して、自分の耳を触ってみた。


「ちゃんと感覚もあるな。アルプ、これは、解かなければこのままなのか?」


 アルプの魔法教育のおかげで、思ったより簡単にできた。


「そうですね。そのままにしておきましょう。料理の際は魔力切れに気をつけてくださいね」


 確かに、いつもより気をつけないとな。


「アルプ、俺最近、マハトが言ったように魔力量が上がって来たよ。魔素が含まれたものを毎日食べているせいなんだよな?」


 料理するくらいなら、魔力切れは起こらなくなった。


「はい、魔族も魔素を含む物を食べて常に強化します。魔力量が少ない者は、器より魔素が高い物を取り入れて器を育てるのです」


 器のサイズが魔力量に直結するのか……


「ただ、器以上の魔素を一気に取り入れると、魔力酔いを起こすので注意が必要ですよ」


 ガバルが昔から魔力酔いを好んでしていたのは、器を育てるためかもしれないな。


 アルプから魔力の話を聞いていたら、いつの間にかジェリコが子供たちを連れてきていた。


「ユージン! 大丈夫だった?」


 ピコラとリコラが駆け寄って来て、俺の腰にしがみついた。


「ああ、心配ないよ。大丈夫だ」


 魔王を相手にしたのが伝わっていたのか、さすがに不安だったのだろう。


「ユージン、これ……作ってみんなにも配りました。もらってくれますか?」


 エリソンから、小さな巾着袋をもらった。


「これはなんだ?どう使う物だ?」


 俺が扱いに困っていたら、


「これは、一時的な認識阻害の魔法です。魔力を流せば一定時間発動します」


 そう言って、エリソンや子供たちは同時に発動して見せた。


「へえ、いるのは分かっているのに、なんとなく印象が薄いな」


 分かってなければ、気にならないだろう。


「始めから認識していなければ、僕の術式なら石ころ同然になります。コッソリ逃げる時に使ってください」


 子供たちもエリソンから、認識阻害のお守りをもらったらしい。


 ——エリソン、優秀だな。


「……イタズラには使うなよ?」


 俺が子供なら、絶対にイタズラに使う。


 そう思ってピコラたちを見たら


「つ、使わないよ?ね?ガバル」

「あ、ああ、使わないよ。な?リコラ」

「ちょっと! ピコラもガバルもずるいわ! 私に振らないでよ!」


 クスクスと笑っているエリソン以外は、やらかしそうだ。


「まあ、ほどほどにな? なあ、ジェリコ、怪我人たちの普段の食事はどうしてる?」


 子供たちに呆れつつも微笑ましく感じながら、さっきから真剣に話し合っているジェリコとアルプに話しかけた。


「あの子たちの食事?そうねぇ、食べられるようになったら、基本的にそれぞれに持参した物を食べてるわよぉ?」


 食べられるようになったらか……


「食欲がわかないやつらは?」


 怪我の具合によっては、しっかりと食べられないだろう。


「どうかしらねぇ?みんな、各々食べたくなったら食べる感じかしら?」


 ここでは保護はするが、看護しているわけではないのかもしれない。


「早い段階で消化の良い物を食べれば、体力の回復が早まるんじゃないか?」


 食べれば魔力も回復するよな?


 日々増えるなら、早く回復させた方がいい。


「それはそうかもしれないわねぇ。でも、動ける人はいるけど、ここじゃ作れないわよぉ?」


 だから、以前ジェリコはキッチンを欲しがっていたのか……


「ジェリコ、今ならガバルがいるから、煙突を作ればキッチンが作れると思うぞ」


 この際、みんなに手伝ってもらって地下にもキッチンを作ろう。


「本当?! 煙突をつければ、キッチンが作れるのねぇ?」


 ジェリコはワクワクした顔で、クネクネし始めた。


「ユージン、オイラの仕事か?」


 ガバルがこちらの話が聞こえたのか、近寄って来た。


「ガバル、地下にキッチンを作るから、煙突代わりにトンネルを掘ってくれないか?」


 風を送る魔法陣を換気扇代わりにつけるのはどうだろう? アルプと相談しよう。


「よし、作るか! アルプ手伝ってくれ!」


 ピコラとガバルが、ログハウスを作る時に使った木材や石材を持っていて、アルプの協力もあり、キッチンはあっという間に完成した。


「まぁぁ!!素敵♡ ユーちゃんもみんなもありがとう! 羊は……あんたの割にはよく働いたわね」


 アルプに対しては辛辣ではあるが、ジェリコなりに珍しく褒めていた。


「とりあえず、怪我人たちに消化に良い物でも作るか」


 乾燥ボニートがあるし、卵粥がいいかな。


「ジェリコ、食事してない奴らは何人くらいいる? あと、食べられるけど回復中の人数も教えてくれ」


 どうせなら、全員お腹いっぱい食べさせてやりたい。


 俺は作りたてのキッチンに鍋を準備して、大量の米を洗う。


「卵粥と、炊き込みご飯にするか」


 ジェリコから教えてもらった人数分の、3倍の量でとりあえず作ろう。


 まず、お粥用の鍋に米を入れ、たっぷりの水を注いで火にかけた。


「魔鶏肉とラシモルート、ガバルがラングルートを見つけてくれて助かったな。念のため使い方の確認っと」



 ▪️ラングルート (牛蒡に類似)


 長い根の名前の通り、長い。

 土の香りが独特。

 調理法により歯ごたえが変わる。


 ◻︎使い方


 洗浄魔法でしっかり洗う。

 必ず水中で使いたいサイズにする。

 細切りはシャキシャキ、厚切りだと食べ応えがある。


 *備考


 普通の水で洗うと必ず土が残る。

 洗浄後に空気に触れると、一気に枯れ枝のようになる。水で戻しても歯ごたえが悪く苦い。



「危なかった。普通に洗わなくてよかった」


 俺は魔法を使って、一気にラングルートの処理をした。


 ラングルートは、以前ガバルが群生地を発見したので、今は裏庭でも育てている。


「出汁の代わりに、乾燥ボニートを粉砕すればいいよな」


 細かく切った鶏肉と人参とごぼうを米の上にドサッと乗せて、その上で乾燥ボニートを魚粉にする。


「酒と、醤油と……味醂はないな。甘味は少しの砂糖で誤魔化そう」


 酒は、いくつかある中から、香りに癖がないやつを選んだ。


「ドライシェリーに似てるけど、なんの酒だか鑑定するか? いや、飲めばわかるか」


 俺は酒を一口、口に含んだ。


「うん、普通にドライシェリーだったな」


 俺は味で納得して、調味料と一緒に酒も鍋に入れた。


「水入れたら、あとは炊飯すればよし」


 火加減を気にしながら、俺はスープ代わりに豚汁も作ることにした。


「シュクレルートは、あの見た目で大根じゃないのは詐欺だよな」


 俺は鞄から、青い楕円形のホルダンルートを取り出した。



 ▪️ホルダンルート (大根に類似)


 楕円形で爽やかな青色の根。

 みずみずしく癖が少ない。

 味の吸収がよい。

 上部は甘く先端ほど辛味がある。


 ◻︎使い方


 生でも、煮ても、焼いても美味しい。


 *備考


 洗浄後、3回以上叩いて目覚めさせる。

 目覚めさせなければ、切った瞬間消える。

 切り口を空気に晒すと変色し白色になる。



「大根も不思議食材なんだよなぁ」


 俺は片手間に魔豚のバラ肉を炒め、魔法でカットしたホルダンルートとラシモルートとラングルートを炒めた。


「後は、グルエソグラスを刻んで入れたら、乾燥ボニートの粉を足して煮込んで、酒と味噌を入れて……」


 合間に、他の食材の処理もしていたら、炊き込みご飯が炊けた。


 辺りには、鶏ごぼうと醤油の香ばしい香りが漂っている。


「お粥は、ちょっと時間経過するかな」


 魔法で時間を進め、お粥がいい感じになったら、削りボニートをたっぷり乗せ、醤油で風味付け、その上から溶き卵をたっぷり乗せた。


「あ、ネギ入れ忘れた。まあ、いいか」


 風味に欠けるが、優しい味になるだけだ。


 鍋にたっぷりの炊き込みご飯に豚汁、卵粥が出来上がった。


 あとは配膳するだけだ。


「ジェリコ、これ、みんなに配ってくれ」


 俺はひと鍋分の炊き込みご飯と豚汁を取り分けた後、ジェリコに鍋を引き継ぎ、子供たちと一緒に、地上に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ