56.想い描く未来へ(2人だけの海編)
プシュウゥゥ、ブロロロロッ……(海辺で百合子&愛美を降ろしたバス、出発っ)
「風がけっこう強いな……寒くないか?」
「私なら大丈夫。百合ちゃんは?」
「ああ、アタシも大丈夫だ」
ホントに来ちゃったぜ……海。
愛美と一緒なら、どこだって嬉しい。
……でも。
なんか。
この展開にまだどこかついていけてない自分がいる。
意外というか、想定外というか……。
「誰も、いないね」
「……だな」
そりゃそうだ。
いくら休日だからといって、3月の寒い日に海に来るヤツのほうが珍しい。
「……よかった(ボソッ)」
「えっ?」
「ううん、なんでもない。砂浜に行ってみよ!」
「あ、ああ」
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(百合子&愛美、砂浜へっ)
「波の音が優しいね……なんか、癒される」
「……そうだな」
まあ。
確かに波の音もそうなんだけど。
でも。
それ以上に。
アタシは、愛美のその穏やかな表情と声にもっと癒されるーー。
「ねえ、百合ちゃん」
「ん?」
「……鬼ごっこ、しない?」
「えっ?」
「ほら、肌寒い時は走ればカラダも暖まるでしょ?」
「べ、別にイイけど……」
「やったあ! じゃあ、私が逃げるほうでもイイ?」
「お、おう」
「じゃあ、5秒たったら来てね!」
タタタッ……(愛美、走り出しっ)
い、勢いでOKしちゃったけど……。
なんだ、この急展開は⁉︎(困惑っ)
と、とりあえず。
1、2、3、4……5。
じゃ、じゃあいくぞ?
タタタッ……(百合子、愛美を追いかけっ)
う〜む。
これは。
けっこうすぐ追いつくぞ(汗っ)
アタシ、昔から足だけは速いらな。
でも、すぐにタッチしたらカラダも暖まらねえ。
ここは、スピード落として少し時間をかせごう。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(1分後っ)
はぁ、はぁ、はぁ……。
ど、どうだ。
まあまあ走ったぞ。
軽く息も切れてきたし、愛美のスピードもだいぶ落ちてきた。
タッチするならそろそろ頃合いだろ。
よし、いくぞ!
「タッチ!(百合子、愛美の肩をポンッ)」
「あっ……(愛美、ゆっくりと足を止めっ)
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ふぃぃ……愛美、カラダ暖まったかな?
「……違うよ」
「えっ?」
な、なにが……?
「……つかまえる時は、手首をつかんで『つ〜かま〜えた』って、言わなきゃ……」
「あっ⁉︎ そ、そうなの?(焦っ)」
「……ふふ。なぁんてね、ウソだよ」
えっ?
ど、どっち⁉︎
「はぁ〜、カラダが暖まったね! ねえ、次は星の砂を探さない?」
「ほ、星の砂?」
「うん、見つけたら宝物にするんだ!」
「お、おう……」
こ、今度は星の砂か。
なんか愛美、ここにきてヤケに積極的だな。
まあ……愛美のやりたいことなら、なんでも付き合うんだけど。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(10分後っ)
「い、以外とないな……星の砂」
「だね……」
海風の吹く砂浜。
せっかく暖まったカラダも、再び肌寒くなってきたワケで(汗っ)
「もう、探すのやめよっか? なんか、ゴールの見えない内職みたいになっちゃってるし……」
「……いや、ダメだ」
「えっ?」
「見つけて宝物にしたいんだろ? 絶対に見つけてやるから、もう少し探してみようぜ」
「…………うん(愛美、嬉しそうに頬を染めっ)」
待ってろよ、愛美。
ゲーセンで散々だった分、必ず宝物をゲットしてやるからな!
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(20分後っ)
「あ……あった、星の砂っ!(キラリーンッ⭐︎)」
「わぁ、本当だ!」
「ほらよ」
「ありがとう……百合ちゃん!」
ふぅぅ……よかった。
愛美、ホントに喜んでくれてる。
諦めずに探してよかったぜ(心地よい疲労感っ)
「ねえ、今度は砂のトンネルを作らない?」
「えっ? トンネル?」
「うん! あ……子どもっぽくてイヤかな?」
「い、いや、アタシは別に構わないけど」
「ホントに? やったあ、じゃあ作ろっ!」
す、砂のトンネルか……。
そんなの、いまだかつて作ったことがない。
まあ、愛美が作りたいんなら喜んで協力するけど。
……でも。
なんだろう?
この違和感。
上手く表現できないんだけど……。
なんか。
なにかが、いつもと違う気がする。
どこか、心の中を雲が覆ってるというか……。
理由は自分でもわかんない。
なんで、なんだろうーー。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(20分後っ)
「あっ……つながった!」
「ホントだ! やったあ、できたね!」
「ふぅぅ、トンネルも以外と難しいもんだな(百合子、砂のついた指で鼻をコシコシっ)」
「あ……ふふっ」
「ん? ど、どうした?」
「百合ちゃん、鼻の下に砂のヒゲができてるよ」
「えっ! マ、マジかっ?(百合子、急いで鼻についた砂を払いっ)」
「ふふ……もう、そのままでも可愛かったのに」
「バ、バカ、んなワケねえだろっ!(照れっ)」
「…………(愛美、微笑ましく百合子を見つめっ)」
うぅ……。
砂のついた手で鼻をこするなんて、アタシとしたことが凡ミスだったぜ(カアァァァ)
それに。
可愛いとか言われたら、恥ずかしくて顔を上げられねえじゃん……。
「あっ……ねえ、百合ちゃん」
「な、なに?」
「ほら……見て、真っ赤だよ」
「ゔっっっ⁉︎(百合子、両手で頬を覆い隠しっ)」
「キレイ……」
そ、そんなにアタシの顔色をからかうなっつーの!
恥ずかしすぎて、余計に赤くなっちまうじゃねえか!
「海に浮かぶこんな夕陽……ずっと見たかったんだ」
え。
ゆ、夕陽……?(百合子、海のほうをチラッ)
「あ……ホントだ」
「ね、キレイでしょ? ステキ……」
な、なんだよ。
真っ赤でキレイって、夕陽のことだったのか。
アタシったら、なんて恥ずい勘違いを……(汗っ)
でも。
ホントにキレイな夕陽だな。
こんなの、今までに見たことないかもーー。
「……私ね」
「ん?」
「私……好きな人と両想いになれたら、1番に来たい場所が海なんだ」
…………えっ?
「恋人と砂浜で一緒に夕陽を見られたら、どんなに幸せだろうって、ずっと……思ってた」
……ま、待って。
それって。
それってーー。
「それって、好きなヤツがいるって……こと?」
「…………うん」
っーーーーーーーーーー。
「人って、こんなにも誰かを好きになれるんだ……っていうぐらい、大切な人がいるーー」
「……………………」
「……ねえ、百合ちゃんは好きな人……いる?」
「っ…………」
……ごめん。
チョット。
頭……。
真っ白ーー。
…………そっか。
感じてた違和感って、これだったんだ。
愛美と一緒に、海。
愛美と一緒に、鬼ごっこ。
愛美と一緒に、星の砂探し。
そして。
愛美と一緒に、砂のトンネル作りーー。
いつもなら、バカみたいにテンションが上がるシチュエーションばかりだ。
……なのに。
なぜか、どこか心に引っかかるものがあった。
妙に、落ち着いた自分がいた。
……それは、きっと。
この事実を知る瞬間が訪れることを、本能的に感じていたんだーー。
「その沈黙は……いるってこと、なのかな?」
「…………ふふ(百合子、無表情で笑いっ)」
「っ……?」
「いるワケねえじゃん。好きな、ヤツなんかーー」
愛美以外に。
……そう。
愛美、以外にーー。
「…………そっか」
「……………………」
「………………………………そっかーー」
失恋……。
したんだな。
今。
アタシ。
1年間、あっため続けた想いが。
全部。
この波にさらわれたんだ。
……………………。
どうしよう。
どうしたら、イイ?
これから先。
なにを支えに生きていけばイイんだろうーー。
「……楽しかったな」
「っ…………?」
「この1年間、すごく……楽しかった」
フッーー(愛美、百合子を見つめ微笑みっ)」
「全部……百合ちゃんの、おかげだよっ」
「えっ…………?」
ーー深い想いがあふれ出した砂浜。愛美の口から紡がれる言葉とは……(次回へ続くっ)




