55.想い描く未来へ(ボロボロのゴール編)
「わぁ……クレーンゲームのコーナーだね」
「お、おう」
とりあえず。
エアホッケーで翼の折れたエンジェルと化した愛美を救うため、テキトーに場所を変えてはみたものの。
クレーンゲームか……。
アタシ、こいつの面白さがイマイチよくわかんねえんだよな。
……かといって。
自分で楽しそうとか言った手前、今さらそんなこと言えないけど(汗っ)
「あ……ねえっ」
「ん?」
「この女の子、なんか百合ちゃんに似てない?」
この女の子って……?
ああ、このフィギュアのことか。
「に、似てるか?」
「うん。ほら……顔もスタイルも、なんか百合ちゃんに似てる」
「い、いや、アタシこんな美少女じゃねえだろ!」
「そんなことないよ……カワイイ……(愛おしそうにフィギュアを見つめっ)」
うぐっ!(ドッキリーンッ⭐︎)
な、なんか。
まるで、自分のことを見つめられてるみたいで恥ずかしい(照れっ)
……でも。
これは、愛美のテンションを上げる大チャンスーー!
このフィギュアをゲットしてプレゼントすれば、きっと愛美も喜んでくれるに違いない!
そして。
愛美はこのフィギュアをアタシに見立て、上から下まで舐めるように見て、触って、毎日あんなことやこんなことを想像して……。
ゲ、ゲヘヘ……(※注 お見苦しいまでに変態な百合子をご了承ください)
よし、そうと決まれば話は早い。
アタシをゲット大作戦、スタートだ!
「コレ、獲ってやろうか?」
「……え?(愛美、本能的に危険な香りを察知っ)」
「そんなにカワイイんなら、アタシが獲ってやるよ」
「い、いや! そんな、ワルいよっ!(愛美、お菓子を落とすゲームで散々だった百合子の姿を思い出して焦っ ※第53話参照)」
ふふ……照れちゃって。
そんなこと言ったって、獲ってくださいっていうのがバレバレですぞ?(※注 百合子の勘違いはもう止まりません)
「遠慮すんな、こんなのサクサクっと獲ってやる」
「で、でも絶対に難しいよっ? こういうの!(愛美、必死に止めっ)
「大丈夫だ、アタシに任せろ(百合子、100円をチャリ〜ンっ)」
「あぁっ!(愛美、思わず両手を口に当てっ)」
よ〜し、いくぞ!
フィギュアの箱が乗っかってるバーとバーの間を通して落とせばイイんだよな。
こんなの、箱を横向きに回転させれば楽勝じゃん!
それ、ここだ!(ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、ガコッ。
……え。
なにコレ。
ほとんど動かず、ほぼ初期位置のままなんですけど。
…………。
な、なにコレぇぇぇぇぇぇ⁉︎
「ほら……やっぱり難しいよ(愛美、ソワソワっ)」
「し、心配すんな。ちょっと狙いがズレただけだ」
落ち着け。
今のはなにかの間違いだ。
よし、今度こそ!(100円チャリ〜ン&ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、ガコッ。
……おい。
どういうことだ?
動いたけど、ほんのチョビっとだけじゃねえか。
…………。
チョット!!!
握力弱くねっっっ?
このアームゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
「もうイイよ、百合ちゃん。ここらでやめとこ?」
「な、なに言ってんだよ。こっからが本番だ」
「はうぅぅ……(オロオロッ)」
とりあえず、もう1回で横に回るだろ。
それ、ここだ!(100円チャリ〜ン&ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、ガコッ。
あ、あれっ⁉︎
なんか、イメージと違う感じに動いたぞ!
箱が、よくわかんねえカタチで立体的にハマった!
「わわ……! なんか、難しいカタチになったよ?」
「えっ? ん、んなことねえよ、楽勝だ!」
「そ、そうかなぁ……(汗タラ〜リっ)」
こ、こっからどう動かしたらイイんだ?
よくわかんねえから、とにかく横に回りそうなトコロを狙おう!(100円チャリ〜ン&ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、ガコッ。
あっ!
箱はやっと真横に動いたけどバーに引っかかった!
惜しいっ……。
でも、あとはチョット位置をずらせば落ちるはず!(100円チャリ〜ン&ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、パタンッ。
え。
なにコレ。
パタンッて……。
全く同じカタチで変わんなかったんだけど。
…………。
な、なんでぇぇぇぇぇぇ⁉︎
「百合ちゃん、もう本当にやめとこ⁉︎(懇願っ)」
「バ、バカ言ってんじゃねえよ。もうあと一息だ!」
「あうぅぅ……(涙目っ)」
箱は真横のカタチになったんだ。
絶対にもうすぐ獲れるっ!(100円チャリ〜ン&ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、パタン(2回目)
……はい?
さっき見たのと。
全く同じ光景が。
そこに。
…………。
デ、デジャヴゥゥゥッッッ⁉︎(※注 百合子は完全にクレーンゲームの沼にハマりました)
「も、もうこれはさすがに難しいよ! さあ、ほかのゲームをしよっ?」
「……大丈夫だ、問題ない(100円チャリ〜ン)」
「はっ、はうぅぅん……!(泣っ)」
……獲れる。
絶対に、獲れる!
今度こそっっっ!(ボタンをポチッ、ポチッ)
ウィィィン、パタンッ(3回目)
「あぁぁっ!(愛美、思わず両手を口に当てっ)」
「…………」
「あ、あれ? 百合ちゃん……?」
「っっっ…………!(百合子、鬼の形相っ)
「あ(※注 愛美さん、もう何を言っても無駄なことを悟りました)」
こ。
…………。
こんのヤロォォォォォッッッッッーー!!!
フザけんじゃねえっっっ!
なんなんだ、3回もパタンッて!
アタシをナメんじゃねえぞっ!!!(100円チャリ〜ン&ボタンをポチッ、ポチッ)
「ゆ、百合ちゃぁぁぁんっ!(号泣っ)」
百合ちゃぁぁぁん……。
りちゃぁぁん……。
ちゃぁん……。
ぁん……。
…………。
◇◆◇◆◇
ピンポンパンポーン♪(その後っ)
「お……お金がなくなっちまった……(チ〜ンっ)」
「は、はは……(愛美、遠い目っ)」
し、信じられない。
まさか、ここで早くも手持ち資金を使い果たしちまうなんて……(呆然っ)
30回以上やっても獲れないトコロで、やっぱりシマエナガのマグカップが欲しいと愛美が言ったからそっちに移動したけど。
そこでも、やっぱり全く獲れる気配なし。
同じく30回以上やったトコロで、今度は恐竜の巨大ぬいぐるみが欲しいと言う愛美。
今度こそはと乗り込んだはイイものの。
なんと、それは1回200円の台だったワケで。
やっぱり欲しくないと慌てて訂正する愛美の声に耳を傾けず、強行スタートした結果……。
現在に、至るワケですぅぅぅっっっ〜(号泣っ)
よく考えたら、愛美が恐竜の巨大ぬいぐるみなんて欲しがるワケなんてない。
きっと、それだけ愛美も必死にアタシを抑えようとしてくれてたんだよな。
なのに、アタシったら我を忘れて突っ走って……。
あうぅぅぅ〜!
アタシのバカバカバカァァァッッッ!
「ど、どうしよっか? 私はまだお金あるから、なにか一緒にする?」
そ、そんなのできるワケがない。
愛美のお金だけでゲームを続けるなんて……。
…………。
なにやってんだろ、アタシーー。
カッコイイ姿を見せつけて、愛美との仲をもっと深めるはずだったのに。
……それなのに。
見せつけたのは。
こんな、情けない姿。
これ以上……。
もう、ボロボロなアタシを見てほしくないーー。
「……いや、それはイイよ。自分がやりたいゲームのために使ってくれ」
「いや、でも……」
「アタシなら見てるだけで十分だから。遠慮せず好きなコトをやってくれ」
「っ…………」
ごめんな、愛美。
気をつかわせてばっかりで。
……そもそも。
こんなグダグダな自分が、愛美と深い仲になろうと思うこと自体がおこがましかったんだ。
アタシみたいなヤツ、愛美には相応しくないーー。
「じゃあさ……海に、行かない?」
「えっ? う、海……?」
「うん。だって、好きなコトをしてイイんでしょ?」
「あ、ああ……」
どういうことだ?
突然、海だなんて……。
「でも、海ってここから結構遠いぜ?」
「そうだね、だからバスで行こうよ。ちなみに、これはリクエストだからバス代は私のおごりね!」
「いや、でも……」
「ダ〜メッ。言っとくけど、百合ちゃんに拒否権はないんだからね?(クスッ)」
……ああ、そっか。
アタシが愛美のお金でゲームすることを拒んだから、ゲーセン以外の場所に移動しようとしてるんだな。
でも、なんで海なんか……。
お金を使わずに時間をつぶす場所なんて、ほかにもあるはずなのに。
「ホントに海でイイのか? 今日は寒いし、こんな日に海に行ってるヤツなんかいねえんじゃ……」
「……だから、イイんだよ(ボソッ)」
「えっ? な、なんて?」
「ううん、なんでもない。私なら大丈夫。でも、百合ちゃんは寒くてイヤかな?」
「あ……いや、別にアタシも大丈夫だけど」
「そっか、じゃあ決まりだね。行こっ!」
ーーボロボロなカタチで終えたゲーセンデート。思いがけず海へと場所を移すこととなった2人の行く末や、いかに……(次回へ続くっ)




